第6話

 彼女を埋めた次の日、俺は長屋で目を覚ました。はっと身を起こして手を見ると、爪が剥がれて泥まみれになっていたはずの手も、着物も綺麗になっていた。あれは夢だったかと訝ったが、外で森の入り口から亡骸が消えていると騒ぎになっていた。俺は何食わぬ顔をして支度をして、廻りの遊郭に出掛けた。

 彼女が眠っている橘の木は、道に迷った旅人を導く霊木として、今でも皆に愛されている。

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