20,鏡の向こうの少女

 キッキッキッキッキッキッキッ!!!!!!!!!!

なんだ?こいつ。さっきの男はどうなったのだろう。一瞬のうちにどこかに消えて

しまった。その代わりに、キッキッキという鳴き声がする。野生動物の声の

ようだ。鳥のようだが・・・・・。

「ジジジジジジジジジジジジジジ」

「????・・・・・!!!!アァァァァァァッッッッッッッッ!!!!!!!」

?!?!?!?!?!?!

耳どころか、脳、そして体全体が割れるくらいの大音響で悲鳴が聞こえた。

その発信元は、ジョナサンであった。

「何こいつ何こいつ何こいつ何度けどけどけどけどけ離せ離せ離せ・・・・・

ウワァァァァァァァッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!動いた動いた早くどっか行け早くどっか行けもういい飛べ飛べ飛べ飛べ飛べ飛べ飛べぇぇぇ!!!!!

アァァァァァァァァッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!動くなアホ!!!!

いや、飛ぶなら動いてもいイヤァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」

いつもの、おっとりとした話し方からは想像もつかない様子だ。「アホ」なんて

言葉を使うなんて。よっぽどこいつが怖いんだ・・・・・・・ん?

「アァァゥゥゥゥゥ」

鏡の幽霊のような声だ。と、そう思った0.1秒前にはジョナサンは倒れていた。

「ガウガウガウガウガウガウガウガウガウガウ!!!!!!!!ギャウギャウ

ギャウギャウギャウ!!!!!!!ガルルルルルルルルルル」

ガブッ

「キイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!」

そして、ジョナサンの鼻に乗っていた、コウモリは駆け付けた黒犬によって痛め

つけられたのでありました。同じコウモリのような見た目なのに。情けねぇ。

「痛いですよ。離してください」

ファイヤー・ポチの牙から逃れたコウモリは、先程、ジュースを運んだ男の姿と

なった。さっきは見えなかったが、背中には黒羽が生えていた。

「私は伯爵ですからね。コウモリになっても痛めつけないでくださいよ。では、

これにて失礼。あ、あとまたカフェ開きにくるんでぜひご来店ください」

あやつの正体ははっきりと明らかになった。ドラキュラ伯爵様ね。


 ファイヤー・ポチとドラキュラ伯爵の戦いの時、“奴”はどうしていたかというと。

そんなことは全く知らずに、ストローの先をくわえていた。

「俺はこの瞬間が好きだ」

「私もだよ」

「ところで、追加のはいつ来るんだ?」

「あのパン私好きなんだけど・・・・・」

「まあ、いいじゃんか。気まぐれ者のルイクルさんは遊んでんじゃないのか?

俺らのデー・・・・・いやなんでもない」

「何て言おうとしたのよ。あと、いつからルイクルさんになったの?」

「伯爵の本名はルイ・クロード・ルーチス。略してルイクル」

そう言ってるのをよそに、オリビアは鏡を顔の斜めに向けた。その何気ない仕草

全てがキュートでかわいいのだ。何としてもこの子と結婚しないと・・・・・。

「キャッ?!」

「どうした。虫でもいたか?」

「そうじゃないそうじゃない。鏡になんか出たのよ!!」

「何が」

「女が」

「どんな」

「小さい女の子」

「ホントか?」

「ホント」

まあ、オリビアが言うなら本当だろう。一応と思って鏡をのぞくと・・・・・。

「アァァァァァァ」

いた。

「何だ、マリィか」

「マリィって誰?」

オリバーが知ってる人間(?)と知ると、オリビアは安心して、すぐに食いついて

きやがった。この子知ってると思ったのに。

「何だ、知らねぇの。2年前にあったことあるじゃないか。まだ

「あったことあるっけ」

「あるぜ。髪が長くて、髪をくくってる姿がかわいい子」

「・・・・・・・??」

「おい、マリィ、話してやれ」

そう言うと、鏡の中の少女はキュートな笑みを浮かべた。さっきまで赤かった目が

みるみる青くなり、青かった顔はみるみる白くなっていった。

「ねえねえ、あたいのことちってる?くるまにひかれてしんじゃうまえにいっかい

あったことあったきがちゅるよ!ぴえろさんね」

そのように、幼さ全開のマリィにオリビアは鏡に近寄った。オリビアを奪われた

みたいで、俺は少し悔しかった。

―――――――――――——――1-4終わり――――――――――――————

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