19,オリバー・オリビアと男

 ガウガウガウガウガウガウガウ!!!!!!

本来なら、これはファイヤー・ポチの鳴き声だ。だが、今回は違う。

「お前!!!!!せっかく来てくれたのになんてことを!!告る

チャンス・・・・・だぁっ」

さっきまで吠えていたのに、すぐ黙ってしまった。オリバーの気持ちは完全に透けて

見えた。ただでさえ、ポーカーフェイスが出来ないオリバーが興奮しすぎて自分の

頭に大切に収納していたキ・モ・チを大胆に公開しちまったのだ。それを吐いた

瞬間、ここにいた、俺、ミッシェルじっちゃん、ニコラス、アレキサンダー、

ガブリエリ、真っ青、ハオユーが一斉にオリバーの頬へ視線を集めた。

「あ、お前ら。今何でこんなに見てるんだ?」

「そんなこと聞く必要はない。わたくしには、全てオミトオシだ。お前は

この子、オリビアのことが――」

「だーっっっっ!!!!!!!!そんなことねぇよ!!!!おい、ハオユー、

こっち来い」

ガシャガシャガチャ

骨がこすれ合い、おかしな音を出す。

「あ、おいオリバー。お前目障りな行いをすると、指一本触れてやる」

「あ、そ、そうか・・・・・すまん」

「すみませんだろうが」

「すみません!!誠に申し訳ございませんでした!!!!」

大げさに謝るオリバーがどこか、虚しくて、かわいそうで、でも面白くて。

「ヒヒハハハハ・・・・・ウ・・・・・」

よく分かんねぇ声を出しちまった。そこに、オリバーが足を擦りながら戻ってくると

「おい、ウィリ。お前勝手なことすんなよ。ハオユーがキレたら俺ら終わりだ」

「それ、前アレキサンダーから聞いた。あとな、勝手なことしたのお前だろ」

そうぼやいた時に、アレキサンダーがさりげなく発した一言にオリバーは動いた。

「なあ、オリバー。オリビアでていくぞ」

「え?!ヤバ・・・・・待ってオリビア!!!!」

「おい、まて・・・・・」

止めるのも聞かずに、オリバーは風のようにドアを開け、一目散に目標物へ

向かって飛んでいった。


 俺はジョナサン、アレキサンダーと“カメラを持って”やつを追いかけた。

だが、追いかけたと言って、見つけたわけではない。まず、ダメ元で追いかけて

いるのだから、元々位置なんか把握していないのだ。

ペロリ

「なあ、おいらたちは、オーキュンのパパラッチをするのぉ?」

「そうだ」

「それって、ストーカーってことじゃないのぉ?」

「黙ってついてこい」

アレキサンダーを連れてきたのは、俺に一番同調してるやつだからだ。で、

ジョナサンを連れてきたのは・・・・・何となく。うるさくねぇし、邪魔し無さ

そうだからだ。もし、何かやりそうなら、脅して黙らせればいい。

クンクンクンクン

アレキサンダーがしきりに鼻をとがらせる。オリバーの臭いをかいでいるのだ。

さっきの、ペロリという音は、より多くの臭いを嗅ぐために、鼻をつばで濡らした

音なのだ。

「もうすぐ付きそうだぜ」

そう言ってから、また舌の上に手をのせて、抜くと鼻にチョンチョンする。

「あ」

「いたねぇ」

「反応薄くね・・・」

そこには、キッチンカーのようなものがあり、椅子にはオリバーとオリビアが

仲良く座っている。

口角を異様に上げ、目を異様に細め、頬を異様に赤くし、異様にファッションを

変えた“あいつ”がオリビアとイチャイチャしていた。

「なあ、あいつこの先無理やり服でも脱がさねぇか心配だぜ」

「その前に、キスから行くんじゃねぇか?」

オリバーが当然のごとく暴挙に出ると過信した一行が話していると、一人の男が

ジュース1つを“ストローを2本入れて”2人の前に運んできた。

「お待たせしました。オリバーご要望の『彼・彼女と2本ストロー』付きジュース

でございます」

あの男、かしこまってるのか生意気なのか分かんねぇ。謙譲語で言ってるのに、

「オリバー」って呼び捨て。何より「彼・彼女と2本ストロー」って言ってオリバー

を冷やかしている。

カシャカシャ

ジョナサンがシャッターを矢のような速さで切る。その瞬間、男は音くらいの速さ

で小さなコウモリに変身していた。

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