18,もう1人のピエロ

 ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

もう耳、いや脳天全体が狂いそうなほど、この擬音は鼓膜に響かせた。

グビッ

造宇ハオユーはまたグラスに入った血液を口の中に入れた。

考えてみて思うのは、なぜ骸骨が飲食ができるのかである。まあ、怪なのだから

そんなことあっても、別に気にすることは無いのだろう。

「シャーッ!!」

そんなハオユーを見て怪のことを考えていた俺の脳に、この鳴き声が刺さる。思考も

停止させられたか。そう、この鳴き声はヘビ。ここにいるヘビと言えば・・・。

スカイラー(真っ青)の飼っているヘビだ。

「シャーッ!!」

と、少し考えるすきに、炎のようなものをまとった黄蛇おうじゃは俺の足をするすると

上がってくる。

「うわ!」

黄蛇がまとっている火のようなものから出た火花(?)を受けてしばらく考え

込んだ。これ、火花なんだな・・・。でも、熱くない。なぜだ?まず、あいつはなぜ

ヘビを飼っているのだろう。わざわざこんなことを・・・。

「シャーッ!!!!」

この「シャーッ!!!!」は威嚇の声ではなく「かまってちゃん攻撃」である。

「はいはい」

なでなでなでなでなでなでなでなで・・・・・。

「シャーッ!!シャーッ!!」

嬉しいということです・・・。「シャーッ!!!!」ということは、リリーだな。

「シュシュシュシュシュシュシュシュシュ」

あぁ・・・・・。やっぱり来たのかよ。

イライジャ・・・。

「シャーッ!!シャシャシャシャ!!!!シャーッ!!」

「シュシュシュシュシュシュシュシュ!!!!!!!!シュァァァ!!!!」

お互いを威嚇し合う2匹。恋愛ドラマである「どっちが彼氏をとるか」みたいな

争いみたいだ。俺って意外と動物に人気なのか?

「シャーッ!!シャーッ!!」

「シュシュシュァァァ!!シュシュシュシュシュ!!」

2匹の距離はだいぶ縮まりいつ噛みつき合ってもおかしくない状態へと進展してた。

「シャャャャャーッッッッッ!!!!!!」

「シュュュュァァァァァ!!!!!!」

ヤバい――噛み合う――と思ったその時。

シュパッ

「もう、ミーの目を離してケンカしたらダメじゃないのぉ~。こいつなんかに

なついたらダメだからな!!ミーがキングじゃなくなってしまうからね」

そう、真っ青がケンカを制止したのだ。一つ気になるのが「キングじゃなくなる」

とはどういうことだろう?まあ、いっか。


 ソワソワソワソワ

腕にイライジャを巻き付けて、向かいのハオユーさん、ジョナサンとコーヒーを

すすっていた。すると、突然トマトのように顔を赤くして釣り人につられた魚の

ようにソワソワバタバタし始めたやつがいる。

ニコラス?アレキサンダー?ファイヤー・ポチ?いやいや、そうではない。ここの

棟梁のような演技しないピエロ・・・・・オリバーである。

「もうすぐあの子が来るらしいぞい」

「マジか!!身だしなみ整ってるな?ヤバいヤバいヤバいヤバい!!!!」

警察官にあと少しで追いつかれそうな犯人のように慌てたオリバーは初めて見た。

ピーンポーン

「あ、鳴った!!来た!!」

うん、誰かが来たんだな。怪の誰かが来たんだな・・・・・ってここインターホン

あんのかよ?!

「こんにちは~」

そこに来たのは、もじゃもじゃ頭に赤い鼻、派手な服を着た・・・・・ピエロ!!

「は、ハロー、オリビア。元気ー?」

「私は全然元気よ」

「そうかい。なんか食べてく?カフェ、営業中だよ~」

?!?!?!?!?!?!か、カフェ?コーヒーとか出してくカフェ?!

「なあ、オリバー。カフェってあんのか?!」

思わず、聞いてしまった。よく考えればこの空気理解できるのに。

「あなたが新しい住居者ね。かわいいじゃないの。そうそう、あるのよ。無料

だけどね。“伯爵様”が建てたのよ。あそこ超美味しいのよ」

親切に教えてくれるオリビアというらしい女性ピエロの脇でオリバーは苦虫を嚙み潰したようなしかめっ顔を浮かべた。「邪魔すんなよ」と言いたいのが顔に書いてあった。

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