17,血を求める骸骨

 ワンワンワン・・・・・

このように、一般人が思い浮かべる犬の鳴き声といえばこれだろう。だが、うちの

ガブリエリ型キャンプの住人は、普通のチワワやミニチュアダックスフンド、柴犬

とはちと違う。

「バウバウバウバウバウバウバウバウバウバウ!!!!!!!」

怖いでしょ。でも、これくらいなら、ブルちゃんやパグちゃんも出せる。

「ギャンギャンギャンギャンギャンギャン!!!!!!」

だいぶ怒ってんのか?

「落ち着けよ。餌あげまちょうか?」

「ガウガウガウガウガウガウガウガウ!!!!!!グルルルルルルルルル・・・・・

バウバウバウバウ!!!!ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥグルルルルルルル!!!!」

やばい、ガチギレしたっぽいです。何でこんなにたくさんの声を出せるのだろう。

「ハァー!!!!」

「うわっ?!」

アンサーはこいつは犬じゃないからだ。犬ではなく、怪物という分類である。

「ハァァァァァァー!!!!!!」

「もう引っかからねぇぞ」

この火炎噴射攻撃は1268回も受けている。

パチッ バボボ・・・

「あ」

火がついていた。

「あっつ!!こいつめ!!」

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ

火を消すために、そこらを転げまわる。

シュゥゥゥーッ

「き、消えた・・・・・」

「ガウガウガウガウガウガウガウガウガウ!!!!グルルルルルル・・・・・

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!!!!バウバウバウバウばう!!!!!!」

パッ

黒く、赤いものを放つ物体は、白く鋭いものを見せてこっちに跳んでくる。

「ウワァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!」

ダメだ、ここまで怪物に溶け込めそうな感じだったのに、“怪犬”に殺されるなんて。

「こらっ、ファイヤー・ポチ。ダメじゃないか。ミーのところにおいで」

そう言われた瞬間に、黒犬は俺の方に爪をかすめて、俺の真後ろに跳んでいった。

「よしよし、ファイヤー・ポチ。ミーの膝でおやすみ」

黒犬は、真っ青の膝の上にいた。あの黒犬、ファイヤー・ポチというのか。

火を噴く犬だからか?

(ダサッ・・・)

21世紀前半の若者だったらダブリューを語尾に並べるということなのだろう。

「何だと、お前。このカワイイカワイイ、ファイヤー・ポチはミーが名付け親

なんだぞ」

「はいはい・・・」


 ガチャガチャガチャガチャ

(また来たか。この音は多分あれだ)

ガチャガチャガチャガチャ

ポロッ

俺の足元の爪1㎝手前に落ちてきたのは、骨。

(やっぱりだぜ・・・・・)

そう、ガチャガチャ、骨といえばあれしかないだろう。

「お前が新入り――だいぶそれっぽくなってきたようだな。お前はいつ死んだのか。

分析しないとな――」

でたぁっ!!骸骨!!

わたくしの名前——造宇ハオユーだ」

「あんたは、中国人なのか?」

中国人か、韓国人のような名前だからだ。これまでは、みんな欧米風の名前だった

から。

「ソビエト連邦の中国人移民だ。第四次世界大戦で米軍に射撃されて死んだ」

やっぱり、こいつは一度死んでいるんだ。

「そういう意味では、お前と似ている」

「はっ?」

造宇ハオユーの意味不明な発言に、頭を抱える俺。

「あ、造宇ハオユーじゃないか。いつものあれ、準備してあるぞ」

「そうか、わたくしはそれを一番楽しみにしていたのだ」

アレキサンダーが赤ワインのような飲み物をグラスに入れてやってきた。造宇ハオユーは、

それを受け取って、グイっと食堂に注いだ。

「ウィリ。お前、造宇ハオユーの気分を乱しちゃダメだぞ。あいつがキレたら

俺もお前も終わるぞ」

「何でだ?」

「いや、それは言わない。ひとまず、気をつけろ」

「あ、あぁ・・・・・」

あの強気なアレキサンダーは、造宇ハオユーに勝てそうなのに。何をそんなに

ビビっているのだろう。

「ゴクゴクゴク」

「どうだい、味は。牛の血だ」

「え」

「うむ、いつもよりは美味くないな」

「これ、血なのか?!」

「そうだ」

新しく会った相手は、ただの骸骨ではなく、骸骨だったようだ。

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