12,血に飢えた鬼

 はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・。

「ヒュ~」

疲れたぁ~。なぜかと言ったら、アレキサンダーの様々な格闘技の練習に

付き合わされていたからだ。最後のボクシングでボッコボコにされて敗れ、今は

オリバーが看病してくれる人を呼んできてくれるのを待っているだけだ。

「おおい、あんた大丈夫か?」

「大丈夫なわけないでしょ・・・。アレキサンダー強すぎ」

「俺か?そんなことねぇよ。お前がちと弱すぎただけじゃねぇのか?」

ひでぇ。強気なオリバーとアレキサンダーにおされて、俺は手も足も出ない。

「僕も前アレキサンダーに挑戦したことがあるけど、まるで歯が立たなかったよ」

ニコラスは、諦めの気持ちが顔から読み取れる笑みを浮かべた。

「わしはこやつと戦うことは無いのぅ」

「ずるいよ、ミッシェルじいさん」

「ホントだよ。俺はもうダメだもの。頭だけなんだから」

「クックック・・・」

「ハハハハハ」

俺の1言でキャンプが笑いの渦に包まれた。ちょっと、せっかくだし鍛えよう

かなと俺は思った。

「いつかはアレキサンダーに勝てるかな・・・」

なんとなく、このまま負けたままなら後味が良くないから、小さいけど強い

決意表明を行った。


 ドスドスドスドス

力強い足で、とんでもねぇやつがやってきた。これはマジでヤバいかも。頭には

絶滅したシロサイのような太い角を生やしている。血走った目に長い髪。長いつめは、スピノサウルスのように反っている。何かの骨を首に下げていて、全裸の姿の

そいつは、まさに、に当たる姿だ。

「お、ガブリエリが帰ってきやがった。こいつらみんな雑魚ざこだからな」

「雑魚ってなんだ」

アレキサンダーには、俺らみたいな貧弱よりも、あの鬼の方が強くて、ライバルの

怪物らしい。

「よぉ、アレキサンダー。今日はそれがしに勝てると思ってんのか?」

「思ってるぜ」

「それじゃ、さっそくやるか・・・あぁん?!」

ガブリエリというらしい、鬼は俺の方を睨みつけてきた。崖から突き落とされる

ような恐怖が汗となって襲ってくる。

「ちょっと待て、ガブリエリ」

「おう、オリバーじゃねぇか。あいつ何なんだ?!早く教えろぉ!」

だいぶ強気なやつだな。俺にはあんま合わないかも。それがしっていうのは

面白いけど。

「てめぇ、こっち向け」

「アギャッ?!」

思わず、奇声を発してしまった。鬼はいつからここに来たんだ?今から死刑執行

されるみたいじゃないか。

「某の名前はガブリエリという」

「お・・・鬼なんで・・・す・・・ぇ・・・・・」

「鬼じゃねぇ。カリカンツァロイだ」

「カリカンツァ・・・?」

初耳だ。カリカンツァ・・・カリカン・・・カリカンツァロ・・・言いにくっ。

「よく分かんねぇやつだが、まあいい。キャンプで某に殺されると思って生活しろ」

「え・・・・・嫌です・・・」

「てめぇは部外者なんだろうが?」

「いや・・・・・」

「ガブリエリ、落ち着いてよ。僕はこの子歓迎だよ?

なんだからいいじゃん」

「・・・・・フンッ!!」

ニコラスがいいところで水を差してくれた。ありがたき幸せ。

「んじゃ、もういいだろ。ガブリエリ、やるぜ!」

「いいだろう。どうなっても知らねぇからなぁ!!」

(こえぇ・・・あの2人殺し合いするつもりじゃないのか・・・・・?)

「あの若いの、元気なもんだのぉ。わしはそんなもんじゃなかったわい」

そりゃ、ミッシェルじっちゃんは頭しかないんだから仕方ないよ・・・。

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