5,永眠カプセル

 海岸線が見えてきた。人間はこんなことになって町もぐちゃぐちゃになって

しまったのに、この海の波はいつものように、足元へやってくる。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」

疲れたな。ここまで2.5kmくらいある道を少しも休まず走ったからだ。普通の人間

ならここまで休まずなんか無理だろう。

ん?それくらいマラソンの距離よりも短いって?この時代はAIロボットが全部やって

くれるからみんなそんなに走ることがなかったんだよ。だからなんだ。それなら、

こんなことができる俺は大のスポーツマンってことだ。フフフ。そんなことより、

もう視野に入っている永眠カプセルが密集している広場、「永眠の広場」に

行かないと。でも、足が・・・それでも・・・あぁ・・・。しゃーねー。


 それじゃあ、永眠カプセルの話をしよう。永眠カプセルとは、その名の通り、永遠

に眠れるカプセルのことである。と、いっても、そのまま死ぬわけではない。永眠

カプセルは、史上最強の生き物として知られる、「クマムシ」のように、一度乾燥

状態になり脳の活動をストップさせ、永眠状態になる。しかし、これにどんな技術が

使われているのか、詳しいことはみんな知らない。でも、俺はそんなことを

知らずに、“面白半分で”永眠した。しかも、広場のような無防備なところは信用

できないと考えて、“自宅で”永眠カプセルを置き、寝た。

カプセルに入ると、誰かから「ON」のスイッチを押してもらい、そしたら・・・。

何て言うのかな?よく分かんないけど、心地よい感じの湿気が流れて来て、眠って

ゆく。という感じかな。それから何年たったか俺は知らない。なぜなら、元々、

その決めた時間をセットして、ONにするとその年月、永眠することができる。

でも、俺は「ON」のボタンを押してくれた「誰かさん」に「何年永眠したいか」を

話していなかったから、何年寝たのか知らないのだ。そして、その「誰かさん」が

今どこで何をしているのかを全く知らない。寝てる間は当然物心がないから記憶も

できない。だから、俺は起きるまで何があったのか“全く”知らない。教えてくれる

人がみんな消えちまってるのだから―—―

そういえば、この商品、いつからあったんだっけな?しかも、メーカーも

知らない。全くそのような情報は無いのだ。なぜだろう?誰かが情報を隠したの

だろうか?俺が知らないだけかな・・・?

「う~ん」

何だろう・・・。


 いいや、行こう。もう足腰も回復していっているからな。

「はぁ~ふぅ~」

よし、いっか。そのまま、俺は早足で広場へ向けてかけていった。


―—――――――――――――――1-1終わり——―—――――――――――—

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