第一章 それまでの世界と新しい出会い
1-1 この日まで、世界はこんな状態だった
1,日本人と魚
途方に暮れた。特に何も考えずに歩いていた。何もかもが豹変してるのに、歩調は
休日の日課の散歩と同じスピードだ。
河川敷に行ってみた。水はところどころにたまっているだけで、川の後はどこにも
なかった。
商店街に行くと、商店街ということは分からなかった。ただただ自分の勘でそう
感じているだけの状態。多分商店街だった場所は、完全に崩壊している。がれきが
山のように積み重なっている。
「誰かいねぇか~?!」
一心不乱にがれきを掘っていた。辺りには誰もいない。怖くて、悲しくて、
悔しくて、なんも理解できなくって、それでも人間の脳はちゃんと働いている。
人がいない。大切な人を探すために、「ここにいるんじゃないか」という自然な
人間の本能が働いている。泣きながら、ただただ掘る。でも、誰もいなかった。
「くそ・・・グズッ・・・グズグズ。だ・・・だれ・・・だれかぁ・・・」
か弱い声しか出なくなった。その涙は、さっきの水滴のように灰が吸っている。
がれきを思いっきり殴った。でも、それで人が現れるわけではない。
・・・いてぇ。
ああ、痛いということはどうやらここは現実世界らしい。ううむ、どうする、俺。
「・・・掘ろ」
それから、がれきの奥に手をやると、
「何だ?!まさか・・・・・」
まさかそんなはずないのに。でも、かすかな希望は残っていた。掘った。ぬめぬめを
つかんで引っ張り出した。
「ん?ギャァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」
それは、人間ではない。鮭の生首だった。
「ウワァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」
ビックリしたぁ。大変だ。もし他の生き残った誰かに見られたら・・・。
恥ずかしっ。でも、鮭があるってことはここは商店街なんだな。いやぁ、でも
これは事件だよな。鮭の生首、鮭の生首、鮭の生首。所々にブリがいる。
マグロはどこかって?そんなものはとうの昔に絶滅した。
人類がマグロを取りすぎたんだ。そしたら養殖に頼るしかなくなるが
そしたら、「マグロが食べたいぃぃぃぃぃぃぃぃ」っていう日本人たちが養殖魚を
手当たり次第に取り始めた。時々、海に落ちて、溺れ死んだ者もいた。
どうやってマグロを釣ったと思う?それは、専門の人間を奴隷にして、釣らせた。
俺も日本人だが、日本人の魚好きと言ったら困ったものだった。
こうして、クロマグロは絶滅した。それでも足りない日本人は、他のマグロの仲間
にも手を出して、全滅させた。
それならウナギはいないのかいって?甘いよ。マグロがいなければウナギも絶滅して
いる。これも、日本人の魚に対する狂気からだ。
マグロをなくした日本人は「ならウナギっしょ」ってウナギを獲りだした。ウナギの
注文が殺到して、一時は漁師や魚屋は大儲けした。でも、それも時間の問題だった。
「グーッ」
腹減ったなぁ。鮭の生首でも食べるか?いや、それはどう考えても無理だ・・・。
話を戻そう。ついに養殖ウナギは全滅した。野生のウナギも徐々に減り、ついには絶滅した。その理由はなぜなのか、話さなくともわかるだろ?
本当に、日本人は魚が好きだった。それは5000年くらい前と一緒だな。
源頼朝だとか足利尊氏だとか、徳川家康だとか・・・。そんなの習わされたよ。
もう5000年も前のことなのに。めんどかったわぁ。まあ、永眠の理由はそれも
あったけど。
パーン!!
「うわっ?!何?何々?」
爆発音だった。急いで避難したのか、石油ストーブが爆発したっぽい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます