第213話 新たな友好
ジンはユークリウスと対面した次の日には日輪祭であったこと、レイラとの間にあった事を手紙にしたためて実家に送っていた。
現状レイラは留学と言う形で高等部卒業までベータルにて留学する手筈を整えるとユークリウスから聞いた。
それからは正に日常と言えた。レイラとリナリー達はいつの間にか仲良くなっており、教室ではジンよりもリナリー達といる方が主流になっていた。
そしてジンの日常は平穏に過ぎていく。
朝起き、鍛錬をイーサンと行い。たまにレイラが合流する。
その後学園へ行き授業を受け、放課後にはリナリー達と街へ行ったり、話題の店へ行ったりと、正に学生と言えた。
一つあるとすれば、ジンの周りにも男が約一名寄ってきたくらいだろう。
それはある日の放課後だった。ジンが帰りの準備をしていると、ある人物が訪れる。
「おー、瞬刃流ー、堅物はどこ行ったか知ってっか?」
「ネム、俺はお前の名前を覚えたんだ。そろそろ名前で呼べ」
「うるせぇな、いいだろ別にわかるんだから」
「本当に清々しいくらいの豹変ぶりだな」
「マジでうるせぇ」
そう、日輪祭から数日して何故かネムがジンとイーサンのところによく来る様になった。
イーサンは今、ペレット所に行っていていないが、会って数日にも関わらず、イーサンとネムの仲はすこぶる悪かった。
「それより今日は?堅物はいねーんか?」
「イーサンならペレットのところだ」
「ああ、全く羨ましいね〜」
「お前こそ、いいのかよ?思い人の護衛は」
「今は城で軟禁状態だからな」
「そうなのか」
「しゃーねーだろ、あのバカが国中にバラしたんだ、命の危険すらあり得るしな」
「......確かにな」
現状この大陸で唯一魔法が使える人間だ。命を狙われる可能性だってゼロじゃない。
「それで?今日はどうした?」
「どうしたも、こうしたもねーよ、あの堅物にリベンジしに来たんだが、当てが外れちまった」
「お前のほうが勝ち越して無かったか?」
「前回は負けた。負けは負けだ。今日は必ず潰す!」
「物騒だな、最初の小動物感はなんだったんだ?」
「だから!うっせーって!仕方ねーだろ!実家にああするよう言われてたんだから!」
「もういいのか?」
「お前との戦闘で無事正体もバレ、王子に暴行、お役御免ってわけだ」
「表向きはか」
「......まぁな」
「......イーサンならそのうち戻ってくるけど、その前に一つ俺と合わせるか?」
「まじか!いいぜ!すぐやろう!」
「わかった、わかった。先に修練場に行っててくれ、俺が教師に許可を取ってくる」
「おう!」
ジンは帰りの準備を再開して、鼻歌混じりに教室を出て行ったネムを尻目にリナリー達に顔を向ける。
「てなわけだから、先に帰ってくれるか?」
「はい、承知しました。ふふふ」
「なんで笑うんだ?」
ジンはくすくすと笑うリナリーとノアに尋ねると、リナリーとノアは笑顔で顔を見合わせた後、ジンに顔を向ける。
「「だって」」
「あまりにもジン様が嬉しそうで」
「ジン様が嬉しそうですから」
二人にそう言われてジンは、少し呆けた後、困ったように後ろ頭を掻くのだった。
ジンが教師に許可を取って修練場に行くと、そこにはネムともう一人いた。
「言うじゃねーか、負け越してるくせして」
「すぐに追いつく」
「だから無理だよ、こっからバンバン引き離す!」
「だが、先日は俺が勝った」
「なにぃ!?」
「事実だ」
ここ最近お決まりになった二人のやり取りにジンは苦笑しながら近づく。
「イーサン、ペレットのところに行ってたんじゃ無かったか?」
「帰りにこいつを見かけてな、聞けばジンと修練場に行くと言うからついてきた」
「そうか。それじゃ喧嘩は勝敗はこいつで決めるか」
ジンはまだ睨み合っている二人にそう声を掛けると、木刀を二人に投げて渡すと両者の間を横切るのだった。
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