第142話 親友の形
その日は結局生徒指導室から出ることは無く終わり。終業のチャイムから暫くしてノアとジンは生徒指導室から出る。
ジンたちが生徒指導室から出ると、リナリー達が心配そうな面持ちで待っていた。
「ジン様!ノア!」
「ジン!」
全員が駆け寄ってくるのでジンは安心させようと笑顔で返事を返した。
「ごめん、心配かけた」
ジンの顔を見てあまり心配しすぎることもないと分かった面々はほっと息を吐く。
そのあとはノアの頬を心配するリナリーとカナリアの一幕があり、解散した。
ジンは帰りの馬車に乗ると馬車の中にはロイが座っていた。
「よう」
「おう」
なんでロイがいるのかという疑問は特に無く挨拶を返すジンにロイは笑いながら背もたれから体を離す。
「相変わらず、俺と話した後に問題を起こすな」
「すまん」
「別に責めてはいない。あちら側もノア嬢に手を上げたことは認めているし問題にはならないだろうからな」
「そうか」
「留学の件も大丈夫だろう。だがお前のその直情的なところは長所でもあるが同時に短所でもあるな」
「耳が痛いな」
ジンの態度を見てロイは立ち上がる。
「わかっているならいい、別に無理に治せと言っているわけでは無いしな。特に俺はお前のそういうところを尊敬もしている。だが、テングラムと水面下ではあるが対立している今、なにがあちらの有利になるか分からん。そこだけは注意してくれ」
「ああ」
「それだけだ。すまんな小言みたいになって」
「いや、今回は俺が全面的にやらかした。悪いな」
「俺が言うのもなんだが、そこまで気にするな。俺はお前がなにかやらかしても最後まで全肯定してやる」
「いや、俺が間違えてたら普通それを正すのが親友ってやつじゃないのか?」
「それもまぁ、一つの形ではあると思うが......俺は別にそうならなくてもいいと思ってる」
「?」
「お前が間違っていようが正しかろうが、俺は最後までお前と共にある方を選ぶ。まぁ俺と意見が食い違ったら譲る気は無いがな」
「なんだそりゃ」
ジンは笑いながらそう言うが、自分を絶対的な信頼をしてくれるというロイの言葉に自然と笑みが溢れてしまったのだ。
「それじゃ俺は行く。また明日な」
「ああ、ありがとな」
ロイが馬車から出て行くと代わりにダリルが馬車に入ってくる。
「何の用だったんですか?」
「ん?ああ、馬鹿に勇気づけられただけだ」
「?」
結局この日の出来事はそこまで大きな問題になることは無く、ただの痴話喧嘩というふうに捉えられた。
次の日学園に行くと相変わらずジンへの視線は冷たいものだった。
昨日学園に復帰してきていきなり問題を起こしたならそれはそうかと思いながら机に鞄を置く。
それと同時に教室にアーサーの一行が入ってきてジンと目が合うが、アーサーがすぐに目を逸らす。
ジンは特に何の感情も起こらなかったことに少し安心してすぐに鞄から教科書や筆記用具を出す。
ジンが朝の準備を整えると同時にリナリーとノア、カナリアが教室に入ってきてジンの元に集まる。
「「「おはようございます」」」
「おはよう」
三人が綺麗にお辞儀をするのでジンもそれに倣って頭を下げる。
「よく眠れたかい?」
ジンはノアにそう言うとノアは首を縦にブンブン振る。
「ニダリー様もレネク様も優しくしてくださいまして、すごく良く眠れました」
「良かった、爺さんは特殊な人だからどうなるかとちょっと心配してたけど、ノアがそう言うなら良かったよ。もし何か有れば言ってくれ」
「本当に大丈夫です!すごく優しいです!」
「ははは、良かったよ」
「そんなにセレーネ伯爵様は変わった方なんですか?」
二人の会話にリナリーが入ってくる。
「んー、まぁちょっとね」
「寡黙ですけれど、すごく優しい方ですよ」
「あれを寡黙で片付けるノアは大したものだな」
「そうでしょうか?」
「まぁ、まだ日が浅いからな、もう少し慣れてくるとわかるよ。爺さんの特殊性がね」
ジンは少しおかしそうに言うのでリナリーとカナリアは若干気になり出していた。
そこにテオとイーサンが教室に入ってきてジンたちが話し込んでるので、その輪に加わる。
こうして、ジンの日常は少し変わったが、なんとか新しい日常が始まるのだった。
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