第95話 八つ当たり
リナリーが復活してリナリーの友達である先程介護を任せた二人、ノア・ダーズリー伯爵令嬢と、カナリア・ティンダー子爵令嬢を紹介された所でエドワードが教室に帰って来る。
「エスコートする者を決めてない者と誘いを受けていない者は手を挙げろ」
チラホラと手があがり、それをエドワードがランダムにペアにしていく。
「これでいいか、今日はここまでだ。夜君達を待っている。ああ、それと平民である二人は後で職員室へ来い。君達に正装を貸すからな。では解散!」
そう言うとエドワードは教室を出て行ってしまう。
ジンはテオに顔を向けて喋りかける。
「テオ、お前って実家は王都にあるのか?」
「いや、片田舎だよ。今日から寮生活ってやつだな」
「え?寮なんかあったんだ」
ジンは実家が王都にあるため直接の通学になっていた。
「俺たちは貴族とは違う寮だからな」
「なるほど、そんじゃ帰るか正装は時間かかるし」
「だな」
テオは荷物をまとめると挨拶をして教室から出て行く。
ジンはテオを見送った後リナリーの席へと向かう。
「それじゃ俺も帰るけど、リナリーは迎えがあるだろう?」
ジンは全くもって今日の予定を把握していなかったので帰りは歩いて帰るとジャス達に伝えていた。
「いいえ、ありません」
「リナリー」
「嘘ではありません!」
リナリーがそこまで言った時にノアが近づいてくる。
「リナリー様、先程廊下の窓からフォルム家の家紋を付けた馬車が止まっていましたよ」
「ノアァ!」
どうやらノアはトイレにでも行っていたのだろう状況がわからず親切心でリナリーに馬車の件を伝えた。
「ええ!」
リナリーに睨まれてしまったノアは混乱する。
「リナリー、その態度はノア嬢に失礼だよ」
「ううぅ!うう!」
言葉にならない何かを訴えるリナリーだが、ジンは取り合わない。
「リナリー?」
「うう!ごめんなさい、ノア」
「いえ、いいんですよ」
ノアはやっと状況が理解できて来たのか少しだけ申し訳なさそうに言う。
「今日は馬車で帰ること、いいね?明日からも一緒の教室に通うんだ、幾らでも機会はあるよ」
「はい......」
しょんぼりと項垂れてしまうリナリーにジンは頭に手を置くと優しく撫でる。
その光景をまだ、教室に残るクラスメイト達は様々な目で見ていたが、ジンは気にしなかった。
「それじゃ、夜会の一時間前に迎えに行くよ」
「はい、お待ちしております」
ジンはそう言ってリナリーの後ろにいる二人にも挨拶をすると帰路に着く。
ジンが校舎を出ると何故か校門のところに人集りができている。
ジンも気になり近づくとそこにいるのは綺麗な女性だった。その女性はジンを見つけると笑顔になりジンに近づいてくる。
「隊長!お待ちしてました!」
「え?ミシェルか?」
「そうですよ!もしかして忘れちゃったんですか!?」
「いや、いやいや!そんなことはない!ただ綺麗になったなと」
「え!何言ってるんですか!私には好きな人が、でも隊長だったら」
「待て待て待て!殺気がすげー殺気が来てるから!ガオンいるなら出てこい」
「ここに」
ジンは後ろを振り返ってガオンを確認すると項垂れる。
「お前な、俺一応お前の主君だぞ?殺気を出すな、後ろを取るな」
「申し訳ありません。隊長がミシェルを口説いているのが見えて」
「なわけあるか」
それはミシェルとガオンだった。
二人はジンが帰宅した日に送別会をしていたが、そこで等々ガオンが告白して付き合う事が決まったらしいのだが、そこから一ヶ月卒業試験という名の八つ当たりに二人とも合っていたらしく本当に久しぶりの再会だった。
「どうやら無事に帰ってきたらしいな」
「ええ、なんとか」
「聞いてくださいよ!隊長!イザベラさんたら、ガオンが好きだったからって八つ当たりしてきたんですよ!」
「ああ、聞いたよ」
そうなのだ。どうやら、王族専属医師であるイザベラ医師はミシェルの師なのだが、ガオンに惚れていたらしく、送別会の後やったはずの卒業試験と言ってミシェルを軟禁、八つ当たりに近い試験をしたと報告で上がっておりロイから謝罪の手紙が届いていた。
「でも、卒業できたならよかったな」
「はい!任せてください!!」
「ガオンも、お疲れさん」
「......はい」
ガオンの方はもっと苛烈だったらしく、ロイからの手紙でミシェルのファンクラブがありそのほとんどがガオンの命を奪わんばかりの試験を敢行したらしいと手紙に書いてあった。
ジンはそれを冗談半分で読んでいたがミシェルは二年前から普通に綺麗な女性だったが、今は知性的な美女になっており手紙の内容もなまじ嘘では無さそうだと思ってしまった。
「それで二人が帰ってきたのはいいが、なんでここに?」
「奥様が、学園の初日はこの時間に必ず終わるからって話を聞いていて、迎えにきました!」
ジンはたしかに、と納得する。
ルイも元はここの生徒である終わる時間を把握していることに納得したのだ。
「そうか、ありがとう。それじゃ帰るか」
「「はい!」」
そう言って三人は馬車に乗り込むがそれを
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