第80話 託された者
ジンとオウカがガクゼンの下で修行を初めて既に一ヶ月が経っていた。
ジンは囲炉裏の前で自分の太ももで寝息を立てるオウカの頭を撫でながらガクゼンと話をしていた。
「どう?俺の妹は」
「......悪くない」
「師匠がそう言うなら安心だね」
「あの暴れん坊が手ほどきをしてたんだろう?良く自分の娘をこっちにやったな」
「これから親父殿も忙しいですからね。師匠なら大丈夫だと思ったんでしょう」
「そうか......坊主」
「ん?」
「どうだった戦場という物は」
「......そうだな、一言で言えば甘く見てた、かな」
「で、あろうな、羅刹まで開くとは相当切羽詰まったか」
「恥ずかしながら」
「だが、まぁ戻って来たならいい、羅刹まで開いたお前は一門までの解放が成ったと言う事だ」
「うん、正直賭けだったけどね」
ジンは笑いなら答えるがガクゼンは笑ってはいなかった。
「羅刹以上を望むか」
「......できれば」
「羅刹までの解門ができているなら早々遅れを取ることなどないぞ?」
「だとは思う。でも俺はこの先死んでも守らなきゃ行けないもんが一杯できちゃったから」
「そうか、だが羅刹以上なんてもんは修行をすることすら命がけといってもいい。それはわかっているな?」
「承知の上でだよ。お願いします師匠」
「ふん、顔つきが変わったな」
「え?」
「甘えが抜けた。やはり戦場でこそ男は成長するか」
「そう見えるならそれ託されたから......かもね」
ガクゼンはその言葉だけで全てを理解する。
「がはは、いい戦友を持ったじゃねーか」
「うん、俺の自慢さ」
「そうか.......これからはてめぇの地の底上げから始める。まずは一門までの技を完璧にするところからだ、その後でまだ望むなら考えんでも無い」
「はい、よろしくお願いします」
間髪入れずに答えるジンにガクゼンは笑う。
「全く貴様は誰に似たんだか」
ガクゼンは弟子の成長に喜ぶと同時にこの先、この弟子に幸があらん事を願うのだった。
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