少年期
第13話 懐かしき
「さあ、にいちゃんここだよ」
「ありがとうございます、ここまで送っていただいて」
「いいのさ、あんちゃんには色々助けられた」
「そう言っていただけると幸いです」
「そいじゃ、またどこかで」
「はい、またどこかで」
ここまで乗せてもらった行商人に礼を言って馬車から降りた少年はベータル王国にある屋敷の前に立った。
(やっとついたか)
服装は平民の服あったが体つきはがっしりとしていて少年から青年へと移り行く顔つきだが表情は凛々しかった。
「そこのもの誰だ?」
「ん?」
屋敷の前には厳つい騎士が立っていて少年に話しかけてくる。
「あー俺はこの家の者ですが」
少年は屋敷に指を刺して言う。
「バカを言うな、俺はここで門番を三年やってるがお前など知らんぞ」
「えーっと俺がこの家を出たのが七年も前なので多分そのせいかな」
「証明できるものは?」
「ないけど」
「全く、ふざけたことを抜かすなオオトリ家は平民に寛大ではあるが正面から忍び込むなどお前キモが座りすぎだろう」
少年と門番が話していると門の内側から女性の声がする。
「何を言い争っているのですか?」
透き通るような声に品のある声色で話しかけられた門番は後ろに振り返り、声をかけた人物を見てサッと頭を下げる。
「これはオウカ様、ただいま不審者が門前にいましたので何をしているか問いただそうとしていたところです」
「不審者?」
「オウカか?」
少年は懐かしそうにオウカと少女を呼ぶ。
少女は少年を見て目を見開いてつぶやく。
「兄様?」
少年は嬉しそうに手を広げて肯定する。
「ああ!にいちゃんだぞ!綺麗になったなオウカ!」
オウカは門を開けて手を広げるジンに駆け寄って・・・・・・右頬にビンタをかました。
パンッと乾いた音が鳴りジンは硬直する、門番は急な展開について行けず固まっている。
ジンは顔をオウカへと戻すとオウカは俯いていて表情が見えない。
「・・・・・・寂しかったです」
そんな絞り出したような声にジンはオウカの頭に手を持っていき優しく撫でる。
するとオウカがバッと顔を上げる、そこには涙を目一杯に溜めたオウカが必死に堪えていた。
「寂しかったんですぅううう」
ジンが頭を撫でて数秒してオウカは泣いてジンの胸に顔を埋めた。
ジンはそれを優しく抱きしめて自分が我が家に帰ってきたと実感する。
ヒックヒックとしゃくりあげてなくオウカに申し訳なさと嬉しさ一緒になってジンに訪れる。
ジンとオウカが門前で再会の喜びを分かち合うっていたが、とうとう耐えきれなかった門番が二人に声をかける。
「あの、お嬢様門前でこれ以上は人目もありますし」
「あら!その通りなの!兄様早く母様と父様に挨拶しないとなの!」
「オウカ、昔みたいな話方になってるぞ」
「行きますよ!兄様!」
「はいはい」
屋敷の敷地内へとオウカに腕を引っ張られて入っていくジンは久しぶりに会う家族に心が踊っていた。
屋敷の玄関まで来る間に何人もの使用人を見たジンはオウカに確認をしてみた。
「なんか使用人の数増えてないか?」
「父様が騎士団長になってから増えたの」
「ああ、そっか親父殿も伯爵か」
玄関が見えて来た。
「オウカはなんで門前に一人で来たんだ?」
「うっ!」
「まさか勉強でもサボってたのか?」
「違うの!剣の修行を少々」
「はぁ、ジャスが怒ってるな」
「うぬ」
玄関に着くとオウカはジンの後ろに隠れるた。
玄関は内側から開き中から懐かしい声がものすごいスピードで近づいてくるのがわかった。
「ジンちゃああああああん」
「へゔぅう」
ジンの懐かしい我が家での初対面の相手は弾丸のように突っ込んでくる母だった。
鳩尾で受け止めたジンは情けない声をあげて転げ回るのだった。
「全く!母様!少しはご自重ください!淑女たるものあのような出迎えはあり得ません!」
「だって!ジンちゃんが帰って来たのよ!一番最初に抱き締めるのは母である私の役目だわ!」
「一番最初に抱きしめてもらったのは私だよ」
「なんですって!我が娘ながら小癪な!」
ジンの鳩尾に突っ込んだルイとオウカが言い争っているがジンは未だに転げ回っている。
そんな親子の言い争いを横から入ってくる者がいる。
「ほう?ではお嬢様の言う淑女とは授業を抜け出して剣を振るう者を言うのですかな?」
「うげ!ジャス!早すぎるわ!」
「何が早いですか、ジン坊ちゃまが帰られたのをいいことに誤魔化そうなど淑女とは程遠いですな」
「そうだわ!オウカは授業を抜け出したから後でジンちゃんとの接触を三日禁じます」
「横暴だわ!!」
ルイとオウカの醜い言い争いをジャスはため息をひとつ吐いて一喝する。
「どちらもお部屋へお戻りください。ジン坊ちゃまにはまず旦那様にあいさつするのが筋であります」
「「はい」」
ジャスの一喝で鎮まる母娘、三人がジンに目を向けるとジンは気絶していた。
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