第43話 全国ベーコンエピ普及連絡協議会

 いきなり「ベーコンエピ」と書いて、それがなんなのか説明なしに解る人なんて、そんなに居ないだろうと思っている。


 ベーコンエピというのは、パン生地でベーコンを包んで、麦穂みたいにカットして焼いた、フランスパンの一種である・・・と書いてもまだぼやっとしている可能性が高いので、イメージについては画像検索などをして頂ければと思うが、もっとも見たところで、やっぱり「いや、知らん」と言われる可能性も否定できない・・・。


 おれはパンなら基本的に惣菜パンが好きなのだが、ベーコンエピは「好きな惣菜パンランキング」を脳内開催すれば、必ずベスト3に入るほど愛好してやまないメニューである。ベーカリーで売っていたら即買いするほど好きだ。特に本場よろしく、ガッチガチに焼かれた硬いやつをスルメを味わうかのごとくググッと歯でやっつけながら食べるというのが至高である(本場には行ったことないが)。


 フランスパンにおける「エピ」というのは「こねたフランスパンの生地に深い切れ目を入れて麦穂のような形にして焼いたもの」であり、もちろんベーコンが入っていないエピもある。店によってはソーセージを入れてソーセージエピなどとしているところもあったりする。が、国内でわりとどこでも売っている「具入りのエピ」といえばなんといってもベーコンエピだろう。


 ウィンナーロール(こっちの方が気持ち1位に近い)などは、若干ハード目のパンとウィンナーのジューシーさがコラボしていておいしい限りだが、ベーコンエピはそれと真逆で、カッサカサになってしまったがかろうじて肉の旨味が感じられるベーコンの味わいと、それがめり込んでほどよく味のしみた固いパンに魅力の大部分がある。だからといってベーコンだけほじくり出して食べるような行為はせず、もちろん一房(麦という単位で考えれば一粒だが)ずつ味わって食べている。


 おれの知る限りでは、メーカとしてはヤマザキパンが、コンビニとしてはファミリーマート、ローソンが「ベーコンエピ」とパッケージに書いて販売していたものを食べた記憶がある。食パンなどといっしょに流通するという都合もあってか、本場のそれよりはかなりやわらかめで、さしずめ「ベーコン混ぜスティックパン」といった趣ではあったが、麦穂の形状などある程度のこだわりが感じられ、美味であったことは記憶に新しい。


 ふつうのパンと比べると「焼く前に麦穂状にカットする」という工程がなかなか面倒な感じなので、おそらく大量生産には向かないのかもしれないが、それでもあの「麦穂を一房ずつ毟って食べる愉悦」は他のパンでは代替しがたいものがあり、書いているだけでたまらない。本場はバゲット1本ぶんをエピに加工するそうなので、めちゃくちゃ長いベーコンエピがバンバン売っているのを想像すると更によだれが溢れてくる。


 具材としてミートソースやチーズなどを混ぜ込んでもよく、そこまで破綻しない構成なので、惣菜パンの難易度としては割と簡単な部類になるのではないかと思う。他の惣菜パンと比べると若干安いし歯ごたえがあるので、空腹時にもベストチョイスといえるだろう。柔らかく作っても、それはそれで子供やご年配向けになるのでみんながうれしい。


 おれの中での惣菜パンとしては少なくともベスト3に入るぐらいのメニューであるので、タイトルに掲げたような架空団体を作ってまででもベーコンエピを普及していくことができればと思ってやまない。うまいよなあ、ベーコンエピ。

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