第40話 つくねと卵黄
情報バラエティ系のテレビ番組を観ていたところ、焼き鳥のつくねに卵黄をかけて食べるという食リポが展開されており、ふと気になった。つくねに卵黄をかけるのって、なんか焼き鳥居酒屋では普通っぽい感じがするけど、そういえばなんでだ?
焼鳥というのは基本的にタレか塩を味付けとして頂くものだが、つくねだけがなぜか卵黄を纏うことを許されている。つくね自体もタレか塩で味はついているはずなので、別にむりやり卵黄をどうこうしなくても、すでにおいしいのではないかと思うのだが、それにしても破格の厚遇っぷりだ。
普通に検索してみても「つくねに卵黄をかけたやつはおいしい」という「それがもう前提になってる結果」しか出てこず悶々とする有様だが、地道に検索結果を調べていくと、やはり「なんで焼き鳥居酒屋でつくねを頼むと卵黄がついてくるんでしょうか」と、そのものズバリな疑問を持っている人が居ることはわかる。
だがそこで回答している人も「そうなんですよ!おいしいですよね!」などと完全に「それがもう前提になってる回答」しかしておらず、果たしてつくねと卵黄の旅は想像以上に困難な航路となってしまった。
つくねに卵黄をかけて(あるいはつけて)食べるレシピを「月見つくね」というらしい。要はすきやきのような要領でもって、卵黄をつけて食べることで、味がまろやかかつ芳醇になっておいしい、ということなのだそうだ。うん、それ自体はよくわかるのだが、であれば別につくねに限らず、なんでも月見で食べたら良さそうな感じもする。肉+生卵だとユッケなども連想されよう。もしかすると、そういったところから着想を得ている料理なのかもしれないが。
といったあれこれに関し、やきとり丼を料理として認めないことでおなじみの知人に聞いてみたところ「つくねのつなぎで卵白を使うので、余った卵黄が出てくるのでは」という回答を貰った。他のなにかに使えるかというと特になさそうだし、であればタレとして提供すればいい、みたいな感じだろうか。なるほど確かに、その線はあるかもしれない。
テレビなどでは卵黄が割かれてとろっとした黄身が流れ出す度に演者の黄色い声が飛んだりするが、実際の喫食においてそういったシーンはほとんどない。ないが、黄身をつけて食べること自体はそれなりにおいしいので、まっとうな理由と言えばそうなのかもしれない。黄身無しで出してもおいしいが、黄身があればもっとおいしい、といった具合だろう。
牛丼も卵を割り入れて食べるとおいしいが、あれもやはり黄身あっての美味しさではないだろうか。そう考えればつくねに黄身がついてくるのもまぁ納得できないことはない。実際ついていたら、余すことなく食べると思う。
自宅ではなかなか月見つくねを味わう機会は無いかもしれないが、もし外食するなら改めて試してみたいメニューのひとつではある。
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