第38話 テレビショッピングルメ

 BS放送をよく観るという人であれば、大衆演劇出身の有名な某俳優が出ているグルメ・ショッピング番組を一度は見たことがあろうかと思う。主に豚丼や松前漬、昆布だし調味料など、北海道のグルメを紹介しているやつといえば、ピンとくる人も多いのではないだろうか。


 基本的に通信販売のグルメ・ショッピングは博打要素が多い。某プロ野球チームを有するショッピングサイトぐらいの規模であれば、ランキング1位などであればある程度は信頼できるかもしれないが、それでも味見やお試しなどができないぶん「不味かったらどうしよう」という心配が頭を離れないまま、ある程度のまとまった量を購入することになりがちだ。


 通信販売のみならず、テレビにおけるグルメ・ショッピングについても同じことが言える。ネットショッピングなどではデメリットをあえて掲載することで信頼感を持ってもらうといった手法を採用する場合があったりするが、テレビは原則、商品に関するデメリットは伝えない。「これがこんなに入ってこんなお値段で!」という具合のポジティブなウリ文句しか出てこないのが普通である。


 そうであるがゆえに、さすがにそこまで良いことばかりあるわけない・・・と思ってはいつつも、そこまで言うなら良いものなんだろう、と思って電話注文してみるが、いざ届いたものを見るとなんかボリュームが・・・とか、なんかディテールが・・・といったギャップが生まれ、最終的にはガッカリしてしまうことが決して少なくない。


 テレビなどの推しが強い売り方も、あれはあれで購買意欲を煽るという点では、業者側にとって都合が良いし、購買者側にとってもエンジョイできるというのはあるかもしれない。が、それでもやっぱり最終的に届いたものがおいしくありませんでした、では興ざめだろう。


 とまあ、そういう経験もなくはないおれなので、最初はその某俳優のグルメ・ショッピングもそれとなく観る程度ではあった。豚丼。松前漬。昆布だし調味料。


 松前漬か~。松前漬っていうとさ、岩手県の名物グルメで松前漬をグレードアップさせた「三陸海宝漬」っていうのがあるんだけど、あれはアワビといくらが入ってて高級感もあってうまいんだよなあ。ご飯にも当然合うし、酒の肴にしてもよくてね~。


 こういう感じで自分のグルメの思い出とリンクしてしまうと、だいたいその先行きは怪しくなってくる。「豚丼だったら豚肉だから家族全員食べられるんじゃないか」「松前漬もたぶん全員食える」「昆布だしは最悪鍋だしのベースにすれば使い切れる」などなど、買ってもいいんじゃないかという雰囲気になっていってしまう。


 そうしてその番組を観ること3~4回目ぐらいで「これ買おうか」となるのである。いちおう買う時にも、若干「でも不味かったらどうしよう」という話はするのだが、


 ・まがりなりにもテレビでやってるわけだし、悪評が立っているならネットで調べればだいたいわかる

 ・北海道産が多いし、北海道のグルメは家族だいたい好きなので大丈夫では

 ・最後は某俳優の「うまい!」という言葉を信じよう(番組であるということはもちろん分かっています)


 などと、その段階ではもはや「買う理由」を積極的に探すフェーズを経ており、あとは時間の問題で無事ウェブサイトにてお買い上げとなる。


 到着まで最大2週間かかると書いてあったそれが3日くらいで届いたので「ほらきた、売れてないから発送も早いんだ」などと疑心暗鬼になる場面もあったが、豚丼、松前漬、昆布だし調味料、果たしてどれも家族の舌にピッタリな味であった。松前漬は400gパックが3つなので1パックだけ開けたのだが、開けたその日になくなってしまったので、これはまぁ当たりといって良いのではないか、ということになり、おれのグルメ・ショッピングはひとまず千秋楽となった。


 味付けもよく、ボリュームもあるし、素材も良い感じだったので、まぁ普通に北海道物産展などへ出向き、上ずった調子のまま味の評価が分からないものを買うという行為よりかは、よっぽどまともではないだろうか。テレビということもあり価格はちょっと高めなのだが、おそらくこの価格を下回ったものは味もボリュームもディテールもそれなりなのであろう。リピートは金銭的な事情で若干しづらい(全体的にちょっとお高いのです)が、人には勧められると思う。

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