第37話 さるかに合戦、一休さん、金太郎
さるかに合戦、一休さん、金太郎。それぞれ昔話のタイトルだが、おれにとっては「ふりかけの名前」でもある。
なんのことかというと、これらは広島県のふりかけメーカー「やま磯」で販売している、瓶入りふりかけの商品名ということになる。それぞれの味は「さるかに合戦」が「海苔ごま」、「一休さん」が「海苔たまご(いわゆるのりたま)」、「金太郎」が「かつお」という具合だ。ちなみにメーカ曰く、味とパッケージに関連性はないらしい。
なぜ昔話のタイトルがつけられているのかだが、メーカの公式ウェブサイト曰く、販売当初放送されていた「まんが日本昔ばなし」にインスパイアを受け、誰でも知っていて親しみやすいという理由から、子供向けにパッケージを昔話にした、というところからきているそうだ。これらのシリーズは1975年から販売しているということで、メーカの主力商品でもあるらしい。
これを書いている現在だが「さるかに合戦」のみ「袋入り・20g」というラインナップが存在する。ざっと調べてみると「さるかに合戦」だけがそこそこ広い販売地域を持っているようで、なるほど確かに、おれの地元にあるスーパーを廻ってみると「さるかに合戦」だけはよく見かける。
そんなこともあり、長い間「さるかに合戦」以外の商品があることを知らなかったが、ついでに調べてみると、過去に「一寸法師」や「かぐや姫」という商品も存在していたらしい。味は「一寸法師」が「小魚」、「かぐや姫」が「しそうめ(梅しそ)」とのことだ。他の味と比較すると、子供向けながらソリッドすぎるきらいがあったのか、現在は販売していないようだが、瓶のコレクターなどは存在するらしい。「かぐや姫」は同じく広島県で著名なふりかけメーカー「田中食品」の「ゆかり」みたいな感じなのだろうか。パッケージとは裏腹に、わりと大人向けの味かもしれない。
おれが実際に食したことがあるのは「さるかに合戦」と「金太郎」の2つだけである。「さるかに合戦」は海苔ごまの通り、刻み海苔とごまの風味がほのかにただよう素朴な味。「金太郎」はいわゆる「のりたま」なのだが、一般的に言う「のりたま」のそれよりも、かなり薄味となっている。いずれにしても塩気がそれほど強くないことから、なるほど子供向け、という印象だ。
やま磯の昔話シリーズにもれず、ふりかけというと「子供が食べるもの」というイメージが今なお強いかもしれないが、おれの家族は基本的に全員ふりかけが好きで、しょっちゅう白米にふりかけをかけて食べている。米農家ということもあるが、米にバリエーションを持たせて食べるのに、ふりかけはもっともコスパが良いというのは、大きな理由のひとつだろう。
なぜ広島県においしいふりかけを多く有するメーカがひしめているのかは定かでないが、一説によると、戦中に軍隊のおえらいさんから「持ち運びに便利で栄養のある保存食を作って欲しい」という打診があって、佃煮屋などの商店がこぞってそれに取り組んだというのがあるらしい。「軍人になるとおいしいものが腹いっぱい食べられる」という志望動機で軍隊へ行った人も多かっただろうし、さもありなん、という感じだ。
また当時の広島県は海苔の養殖が盛んだったということも関係あるらしい。素材が色々と手軽に手に入っただろうし、ふりかえをつくるうえで色々と好条件だったにちがいない。
現代のふりかけも、根本的な味や構成要素はそれほど昔と変わっていないように思う。栄養価は依然として高いし、なにより老若男女だれでもおいしい。非常にコスパのいい飯友ではないだろうか。ふりかけについて色々書きたいことはあるので、また別の機会になにか書ければと思う。
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