第31話 チャーシューあれこれ

 チャーシューといえば、本来であればいわゆる「焼豚(やきぶた)」の場合が多いかと思うが、ラーメンに乗っている肉、という文脈から「茹で豚」なども(焼いてはいないけど)チャーシューと呼称したりする場合がある。


 このチャーシューだが、おれは断然豚バラで作ったやつが好みだ。豚バラだと焼いてあっても茹でてあってもボリューミーでおいしい。「チャーシュー」で検索して出てくるやつもほとんど豚バラである。画像検索するだけで腹が減ってくるので、一旦ブラウザは閉じておこう。


 一方、チャーシューと言えば叉焼、つまり焼豚(やきぶた)なので、これはもう文脈的には断然ロースでしょう、という宗派もあったりする。ロース肉で作ったチャーシューもあれはあれでうまいし、単品を喫食するのではなく、料理の材料として使うのであれば、ロースの方が相性が良いような感じもあるが、バラ派のおれはどうしてもロースチャーシューの少ない脂身部分に悶々としながら、喫食時間を過ごすことになる。


 油の多さにより、使う料理に対するそれぞれの向き不向きはあるにせよ、この「チャーシューの部位」もまた、争いの火種になりそうなテーマの一つと言えるかもしれない。

 

 ロースは主にラーメンに乗せるチャーシューとして、おれの中で台頭しつつある。油が少ないぶん、識者によれば、ラーメン本体の味にあまり影響を与えないのがよいという。おれは外食で食べたときのラーメンに乗っていたチャーシューが豚バラじゃなかったりすると、食べ終わってもなおそのことを半年ぐらい覚えているタイプなので、豚ロースか豚バラか選ぶ機会があったとしたら、たとえ料理との相性が多少悪くなろうとも、豚バラで注文するだろうと思っている。


 豚バラのチャーシューは、豚バラを海苔巻のような要領でもって筒状に成形したのち、タコ糸で縛って調理するというところにアイデンティティがある。もちろん巻かなくてもよいが、極力旨味を閉じ込めるという観点で考えるのであれば縛るほうがいいらしい。そうやって作ったものを横から見るとアットマーク記号(@)みたいな形状になるのだが、これがジューシーかつボリューミーでおいしくなる秘訣なのだとか。成るほど確かに、もはやアットマーク記号を見ただけで脳がチャーシューを求めるぐらいの訴求力がある。


 中華料理の文脈的には、叉焼は保存食の意味合いも含んでいるため、やはり「焼く」方が正しいとのことだ。そう言われて見れば確かにそんな感じはあるかもしれない。叉焼を中華まんや炒飯などに流用するというのも、そういうところから派生している考え方なのだろうか。おれはそのままスライスしたやつを食べるのも、それはそれで好きだが。


 そういえば「チャーシューメンではない普通のラーメンにチャーシューは何枚乗っているべきか」という議論をくだんの知人と議論してみたところ「1枚」とのことだった。これは実はおれも「1枚」で、その後の議論の結果「1枚より多い枚数で乗っているのがチャーシューメン、というコンセンサスが恐らく皆の深層意識に存在しているから」という結論に達したのだが、皆さんはどうだろうか。普通のラーメンにチャーシューが3枚入ってたら「あれ、チャーシューメン頼んでないけどな?」などと思ったりするかどうか。3枚で微妙なら2枚などでも良いかもしれない。なかなか結果が分かれそうな感じではないかと思う。


 なんだかとりとめのない文章になってしまったが、それにつけてもチャーシューが好きである。争いの絶えない世の中だが、チャーシューくらいは平和に喫食しても罰は当たらないだろう。

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