第24話 異世界ファンタジーとグルメ
「本当なのか、オッサン?」
「ああ、本当だとも!」
オッサンはそう言うと、マツピをグイッと飲み干し、食べかけのコチョスイをババっと口に放り込んだ。
いきなりよくわからない物語が始まってしまって申し訳ないが、今回は「異世界ファンタジーとグルメ」について書こうと思う。
おれはもともとフィクションが苦手で、基本的に「実体験を元にした話」しか納得のいくクオリティで書けないというのがある。なのでこの「カクヨム」という異世界ファンタジーがメインとなっているプラットフォームでは多少気後れしてしまうのだが、なんとかこの「異世界ファンタジー」とおれの一応の十八番であるグルメを、混ぜていければ・・・と思い、これを書いている。
冒頭の話だが、とりあえず主人公らしき人とオッサンが、酒席で何か会話をしている、という場面である・・・っぽいことは伝わるかと思う。
だが「マツピ」や「コチョスイ」などというよくわからない飲食物がいきなり出てくるので、そこで「?」となってしまうことは想像に難くない。事実、書いているおれもそう思う。
2人が酒席で喋ってる事以外は全部オマケでいい、という考えであれば、マツピとコチョスイが何なのかは無視していいかもしれないが、このように発音が奇抜だと、なかなかそういうわけにもいかなくなってくる。
異世界ファンタジーのレギュレーションとなれば、あらゆる要素が異世界かつファンタジーとなるのが最良であろうとおれは考える。つまり通常の酒席にあるような「ビール」や「焼酎」「焼き鳥」などは、否が応でも異世界から現実世界の居酒屋へ意識を引っ張ってしまうため、使い所が難しい。
「本当なのか、オッサン?」
「ああ、本当だとも!」
オッサンはそう言うと、ホッピーをグイッと飲み干し、食べかけのタコワサをババっと口に放り込んだ。
これだと場面の様子はメチャクチャにわかりやすくなるが、少なくとも「異世界」や「ファンタジー」の要素はそこまで濃くならない。頑張ってはみるものの「和民」や「村さ来」などが頭を過ぎってしまいがちだ。
異世界ファンタジーにおいて、異世界かつファンタジーな要素を強めるためには、食べ物ひとつのディテールにも相当気を使わなければいけなくなる。だが、あまりそちらの方ばかりに気をとられていると「マツピ」や「コチョスイ」の説明だけで10話ぶんくらい使ってしまうかもしれない。しかもその成り立ちが「マツピは米を発酵した・・・」などとなってしまうと「あ、農耕文化のある異世界ファンタジーなんだ」といったところに発展していき「米食はあるのか」「田はどのように管理されているのか」「モンスターが居る前提で行われる米の栽培・収穫方法について」などといった横道に逸れ放題になってしまう。
そういったなかで「いいところ」を抑えながら異世界ファンタジーを書くというのは、なかなか大変なことだろうと思う。おれがフィクションを書けないのも、書いている端からこういったところが気になってしょうがない、という理由からである。
まあ、食べ物から世界観を構築しなくともなんとかやれないこともないとは思うが、いくら異世界ファンタジーとは言え、最低限の喫食シーンはあろう。もっと言えば喫食に限らず、あらゆる要素が「それは異世界かつファンタジーなのか」という自問を経ないと、少なくともおれは、なかなか納得のいく話を書けそうにない。そういう意味では、九井諒子さんの「ダンジョン飯」などは、本当に良いところを狙って書いている異世界ファンタジーだなあと思う。
ちなみに「マツピ」は春先に収穫したオモンの実からタネを取り除いたのち発酵させてつくる酒の一種で、オモンの皮から漂う強い柑橘系の風味が特徴である。「コチョスイ」は近海で穫れるベショベショから内臓を取り除いたのち、海水でよく洗って天日干ししたものを燻していただく、いわゆるおつまみの一種である。つまるところ、以下のようなかたちになる。
「本当なのか、オッサン?」
「ああ、本当だとも!」
オッサンはそう言うと、酒をグイッと飲み干し、食べかけのつまみをババっと口に放り込んだ。
・・・これで良いかなあ。でもなんかこざっぱりしてるというか、異世界感はあんまりないよなあ。「おつまみ」とかが現代っぽいというのはあるかも。
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