第20話 ドリンクバー哀歌
ファミレスのドリンクバー、ネットカフェのドリンクバー、漫画喫茶のドリンクバー。我々にとって、もはや「インフラ」のひとつになったと言っても過言ではない「ドリンクバー」だが、皆さんはどうだろうか。
今回おれが書きたいのは「ドリンクバーを積極的に飲むことについて」である。
ドリンクバーの飲料(特に、フレッシュ系でないもの)というのは、基本的には濃縮された各種シロップを炭酸水などで割るというプロセスでもって出来上がるもので、基本的にはどのドリンクも本来の商品と比べて、薄めの味になりがちである。
飲料の冷却のため、氷も過剰に投入されるので、あらゆる飲み物がますます薄くなる。特に氷を自分ですくって入れるタイプのドリンクバーの場合、調節は可能だが、調節を誤ると異常に水っぽいドリンクが出来上がるため、体験として悪くなりがちである。
だが、それでもドリンクバーを飲む人は多い。
これはなぜかというと、割と簡単な理由である。おかわりできるからだ。
薄いっちゃ薄いが、何回でも飲めるし、やろうと思えばある程度濃さは調整できるので、喉を潤す目的として最良である。無くなったら自分で注ぎに行けばいいから、都度店員さんを呼ぶ煩わしさもない。身も蓋もない言い方をすれば、おしゃべりのツナギとして良いコスパというわけだ。ちなみに、原価が高めのもの(コーヒーや果汁100%ジュースなど)を20〜30杯ほど飲めば、たいていのドリンクバーで支払った値段に対する元は取れるらしい。
提供する側としても、ひとりで何百杯も飲むわけではないので、コスパに優れる。だいたいの客は2〜5杯程度飲めば満足するだろうから、コストの高いものを仕入れるよりも安上がりである。その上、飲料を作るにあたって1杯ぶんのスタッフ稼働コストはほとんどかからない。
そんな感じで、わりと「いいところ」に収まっているのがドリンクバーというものになるかと思う。
ただ、そうであるがゆえに、自分としてはあまり気がすすまないことがある。どうせ飲むのであればちゃんとメニューに独立して存在する飲み物を飲みたいし、いくら安くても中途半端な味だと嬉しくないからだ。
なのだが、少なくともファミレスにおいては、どこもかしこもセルフのドリンクバーが席巻しており、かつてのように「単品のコーラ」などがグラスに入ってやってくるようなケースのほうが珍しい状況になってしまっている。ドリンクバーありきの世代からすれば、予めグラスに入って持ち運ばれる方が「自分でいいように出来ないから面倒」だったりするのかもしれないが、それでもおれは店員さんがうやうやしく持ってきてくれる「単品のコーラ」に郷愁を感じずにはいられない。
そんなドリンクバーだが、デニーズに置いてある「セブンカフェ」のドリンクバー、あれは好きだ。自分で氷を調整すれば、セブンイレブンで飲めるあのコーヒーと同じものが飲めるし、それでいてドリンクバーの料金に含まれている。デニーズはソファの席もゆったりしているし、長居するには良い選択肢のひとつと言えるだろう。
とはいえ、気の置けない友達と、薄いドリンクをツナギに延々と喋り続けるのも、それはそれでまた楽しい。ドリンクバーで何を入れてきたかが話のネタになることもあったりする。必ずしも悪い点ばかりではない。おれは各所でドリンクバーを見かけるたびに、味は薄いんだけど、いいところもあるよな〜、でも薄いよな〜、そんなことを思う。
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