第17話 なぜ君はブリしゃぶを過小評価するのか

 のっけからいきなり煽っているため、してねーよ!と思った人が居たら申し訳ないが、どうかおれの話を聞いて欲しい。5分だけでもいい。


 冬の味覚と言えばなんといっても鍋なのだが、そこでブリしゃぶと言うと「あっハイ」とばかりに受け流されることはないだろうか。おれもまあ、そこまでのアレはないっちゃないが、ただ、近い雰囲気になることはある。


 冬という季節もあってか「冬の鍋なら牡蠣とかカニでしょ、何いってんだこの人」ぐらいのアレでもって受け流されることがある。そもそも「鍋」と「しゃぶしゃぶ」では料理の性格も全く異なるため、鍋の話題の時にしゃぶしゃぶの話題を出すのもKYっぽい感じはしなくもないが、それにしてもおれは言いたい。


 みんなブリしゃぶを過小評価しすぎである。


 おれ的には、冬のメニューと言われればなんと言ってもブリしゃぶであり、その他の鍋は全部「ブリしゃぶ以外」というくくりになっている。平時であれば肉のしゃぶしゃぶでも普通にうまいが、冬は断然ブリだ。ブリでなくちゃあいけません。


 冬場のブリは脂がのっておいしいので、寿司や刺し身で食べたり、煮付けにしたり、ブリカマを焼いたりなど、様々な食べ方があるが、ブリしゃぶのおいしさはそれらを遥かに凌いでいると思う。


 恐らく食べたことがない人が多いのではないかと思うので、ぜひ簡単にブリしゃぶをやってもらえればと思う。だいたい以下のような材料・道具があればできる。しゃぶしゃぶというと大変な感じがしなくもないが、なんてことはない、出汁の入ったお湯に具材をしゃぶしゃぶすればいいだけである。


 <材料・道具>

 ・ブリしゃぶ用ブリスライス(刺し身でも流用可能)

 ・水菜、豆腐、えのき(予め入れて煮ておく)

 ・百均で売っている固形燃料と一人用の鍋とゴトク

 ・昆布だし(顆粒、昆布そのもの、なんでもOK)

 ・ポン酢と小ねぎ


 一般的にしゃぶしゃぶというとごまポン酢などがタレの候補として台頭してくるが、おれはブリしゃぶに限ってはポン酢をおすすめする。ブリしゃぶとポン酢は絶対に合う。煮た野菜をポン酢につけるだけでもまあまあおいしいし、サッパリしているので量が食べられる。ブリの脂と煮た野菜にポン酢という相性もいい。


 しゃぶしゃぶの旨さというのは、個人的には「温かいものをライブ感覚で食べられる」ところにあるのではないかと思っている。しゃぶしゃぶしたものを皿に盛られてもなんにも嬉しくないし、そもそもおいしくない。しゃぶしゃぶは焼肉と同じで、あの「ライブ感覚」が味の構成要素のひとつなのだ。


 しゃぶしゃぶは一般的には薄切りにした牛肉や豚肉などだが、魚の切り身でもおいしい。大阪にはタコをしゃぶしゃぶにする文化があるというが、まさに天下の台所だなと関心しきるばかりだ。刺し身とは違う、温かい食材の美味しさがあり、特に淡白な味の材料に合う。


 冬になると金目鯛などもしゃぶしゃぶ用として出回ることがある。金目鯛はやはり鯛の滋味が濃く、これはこれでおいしいのだが、脂が少ないぶん、ちょっと物足りなさも感じる。ブリしゃぶもずーっとそればっかりだと飽きるかもしれないので、別な魚も含めて、色々とバリエーションをつけられれば、なおよい。


 もし家族がブリの刺し身のためにサクなどを買ってきた場合は、是非ブリしゃぶを提案してみてほしい。追加で必要となる具材は野菜とポン酢ぐらいなので、家にないものはほとんど無く、思い立ったらすぐ食べられる。鍋も別にこだわることはなく、ただの土鍋に昆布とお湯を入れただけでもとりあえずは良い。冬はとにかくブリをしゃぶしゃぶして食べてほしいのである。おれの一生のお願いだ。

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