第6話 きのうマリトッツォ食べた?

 マリトッツォをリンネ式階層に当てはめると以下のような分類になる。


 界: 料理界

 門: イタリア門

 網: 菓子網

 亜綱: 伝統菓子亜綱

 目: 菓子パン目

 科: ブリオッシュ科

 属: マリトッツォ属


 偉そうな導入だが、上記の分類はメチャクチャなので、細かいことは気にしないで欲しい。例えば干し柿は「加工界、日本門、果物鋼・・・」といった具合になればいいと思う。細かいことを考えると脳が疲れるので、マリトッツォを食べて糖分を補給しよう。


 で、そのマリトッツォなのだが、おれは比較的「マリトッツォというものが日本全体に出てきたタイミングぐらいの早さ」で食べた。具体的にはコンビニの新商品として並んだ当日に食べたということなのだが。


 ファーストバイトの感想としては「これホイップのクリームパンでしょ?」というのが正直なところであったが、流石に「クリームパン」と「マリトッツォ」は別物だろうという思いがその時はまだあったし、クリームパンみたいに「パンコーナー」には置いていなかったので、マリトッツォはスイーツだな、ということで、その場はお開きとなった。


 その後、ネットでマリトッツォを調べてみると「パンにクリームを挟んだもの」とあり、なんだやっぱりクリームパンじゃん、とは思ったが、ブリオッシュなるパンのようでパンでないやつにクリームを挟んだのが日本ではマリトッツォなんスよ、ということだったので、そこでまたとんと分からなくなった。


 それから何度か、種々トッツォを食べる機会に恵まれたが、どれも文脈的には「パンにクリームを挟んだもの」から逸脱しておらず、ブリオッシュもブリオッシュで「フランスパンと比較し、バターと卵を多く使った発酵パン」とあって、結局世間一般におけるパンじゃねえかそれ、という感じになったので、おれの中ではマリトッツォは「クリームパンの亜種」ということで、むしろ以下のような分類にした方がいいのではないかと考えた。


 界: 料理界

 門: イタリア門

 網: パン網

 亜綱: 伝統パン亜綱

 目: 菓子パン目

 科: マリトッツォ科


 菓子とパンは明確に分けなければならないし、フランスではブリオッシュをケーキの一種とする向きもあるらしいが、必ずしもブリオッシュにクリームをアレする必要もないらしいので、こういう分類が妥当なのではないかと思う。皆さんはどうか。まあ分けても特に何も無いんだけど。


 ところで、マリトッツォを模したどらやきの「どらトッツォ」などをはじめとし、マリトッツォは登場まもなくコモディティ化が激しかったため、もはや元トッツォは既に古典と化してしまったのではないかというきらいがある(もとから伝統菓子なので古典といえば古典なのだろうけど)。個人的には、クリームを舐め取って、後からどんどんクリームだけおかわりできる「替え玉」ならぬ「替えトッツォ」的なものがあると良いなと思うが、3回目ぐらいで飽きそうだ。


 ちなみにマリー・アントワネッツォが言った「パンがないならお菓子を食べればいいじゃない」の「お菓子」というのは、実はブリオッシュの事なのだそうだ。今日はそれだけ覚えて帰ってくれれば幸いである。

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