第7話 情報収集と怪しい女
情報を集めてくれと頼まれたがどうやって集めればいいのだろう。
俺はそういうのには向いていない気がするが。
俺は自分の角と鎧を見る。
禍々しい角と鎧。
これは記憶喪失の俺から見ても少し怖い。
俺が少し悩んでいると蒼が俺の肩を優しくたたく。
「まあ気にすんな」
「わかったのか?」
「お前が考えることぐらいすぐにわかる。なんたって俺の相棒だからな。まあ見てろ。時には俺のケツに隠れて見守ることも前衛の役目だ」
蒼はすがすがしくそう言った。
実に頼もしい。
実際蒼は白い鎧だし清潔感がある。
体はがっちりしていて頼りがいがありそうだ。
蒼と俺は居住区に向かった。
居住区は地下の一番下ほどに存在しいていてかなりの妖精族が暮らしていた。
家は洞穴だった。
消して裕福ではなかったが俺たちを見た子供は手を振っていた。
しかしそれを見た大人は子供を制す。
歓迎はされてはいない。
しかし蒼は近くに来た優しそうな女性妖精族に話しかける。
顔はかなり優しそうだ。
笑顔が似合う妖精族だった。
「突然で済まない、困ってるんだ」
蒼は困った顔で尋ねる。
実際俺たちは困っている。
「どうしたのですか異界人さん?」
「いやな、実はほかの異界人を探している。何か知らないか?」
ほかの異界人?
俺たちはそんなことを聞くために情報収集をしているのか?
いや、目的はあまりよくわかっていない。
これが正解かわからないが蒼が聞くまで待ってみよう。
「ほかの異界人? まさか鉄の人たち?」
女性は嫌な顔をする。
ひどくアイアンレギオンを嫌悪しているようだ。
「はっ、まさか。あんな奴ら仲間だとは思っていない。いや失礼。彼らは俺たちの同胞だが今はそうではない。いやいなければいいんだ」
「悪いけど知らないわ」
「そうか悪い、邪魔したな」
蒼はそういうと女性とわかれてしまった。
案外会話は難しいのか?
「うーんだめだ。やっぱゲームとは違う」
「どういう意味だ?」
「さっきの言葉、『ほかの異界人を探している』。これにはほかのプレイヤーがエリア内にいたらユーザーネーム。つまりは名前を聞くことができる言葉だったんだ」
「なるほど。では蒼の常識は通用しないということか?」
「ああ、だがゲームでの能力は使える」
うん?
俺は少し疑問に思う。
能力?
蒼は何の能力を使ったんだ?
見た感じ魔法やスキルは使っていなかった。
「その顔はさては知らないな~」
「からかうな。俺はその手のことについては何もユウキから聞いていない」
「まあそうカッカするな」
蒼は少し俺をからかってから真面目な顔に戻る。
「俺のサブジョブは覗き魔」
何やらそのジョブネームからはいやらしい香りがする。
いい意味ではないような、そんな気がする。
「俺は人の思考を覗くことができる。簡単に言えば俺は思考を読み取ることができる。どうだ? まあまあすごいだろ?」
「思考を覗く? 悪趣味なジョブだ。それを使って人の心を覗くなんてことは少なくとも俺はしたくない」
「悪趣味言うな。思考を覗くということは相手の戦術を読み取るということ。タンクは戦場の最前線で戦う。つまり敵との距離が近い。そこで戦術が知れるのはかなりのアドバンテージだ」
なるほど。
確かに敵の情報を知れるということは便利で使いようがある。
蒼の言うことも一理あるが見られたほうはいい気しないだろうな。
だが戦術面ではかなり有効か。
確かに言い過ぎたな。
「すまん。あまり考えないで物を言っていた」
俺は謝罪の意味で頭を下げる。
しかし蒼はおいおいと肩をたたく。
「冥界王さんがそんな謝るな。ほら、ほかの妖精族が見ている」
「し、しかし悪いのは俺の方」
「悪くはねえよ。お前はまだ子供だ。気にすんな。徐々に知っていけばいいさ」
俺は頭を上げる。
確かに妖精族がこちらを何事かと見ていた。
俺は少し怖い見た目だからこういった言動は注目を集めやすいのか。
しかし蒼の適応力はかなり優れたものだ。
俺は記憶喪失になったばかりだったしさすがは『全適性守護騎士』。
その名の通り蒼は何でもできるのか。
「それで? その思考はどんなものだったんだ?」
「ああ、気になるのは中央広場の段ボール。紫の女。怪しい。まあそんなところだ」
「段ボール? 紫? 女? 意味が分からない」
蒼は少しくすくすと笑う。
何やら心当たりがある様子。
「マップで見ると中央広場はこの下。近くだな。まあ行くだけ行こう」
「ああ、それよりなんで二ヤついているんだ?」
「行けばわかるさ」
蒼は少し楽しそうな顔で向かう。
俺はそのあとをついていく。
しかし怪しい女か。
紫。
なんとなく頭になすびが浮かんでくる。
なすび女。
むむ、あまりいいイメージは沸かないな。
なんだか苦手なイメージ。
俺たちは地下居住区を下に進んでいく。
地面はかなり整備されていて歩きやすかった。
下に行くにつれ街のようなものが見えてきた。
石を切って作った建物がいくつも連なっている。
かなり技術がいるだろうな。
それだけ石で家を作ることができる職人がいるということか?
俺たちはマップ上で中央広場と呼ばれるところについた。
街の中央の広場。
だが違和感がある。
それは開けた場所に段ボールがありそこに女性が入っていた。
段ボールをなぜ覚えているかわからないが思い入れがあるのか?
俺は段ボールの中に入っている女性に注目する。
紫のロングの髪の毛を背中まで伸ばしなにやら退屈そうにたたずんでいた。
俺は女性を少し距離のある所から観察していた。
すると女性から目が合った。
やばい。
俺は反射的に目をそらす。
妙な視線を感じる。
女性のほうからだ。
「あ、アガド?」
うん?
俺の知り合い。
俺の名前を呼んだような。
「こ、殺す」
え?
殺すだって?
俺はビクンとして目線を女性のほうに向ける。
しかし段ボールの上に女性はいなかった。
消えた!!
どこだ?
俺は蒼のほうを見る。
しかし盾も構えず何もしない。
いやしかし殺すと言っていた。
俺は反射的に冥界の剣に手をかける。
彼女はどこだ。
俺は視界をくまなく探す。
だが遮蔽物が多い。
石の建物が邪魔して全体をうまく把握できない。
しかし通路だけに気を配れば大丈夫なはず。
俺は通路を警戒する。
すると光る球体が上から降ってくるのが分かった。
「上?!」
俺は大剣で光る球体を切り裂く。
球体は思った以上に斬った感覚なかった。
手加減している?
いや敵が弱いのかもしれない。
すると蒼が俺の背後に周る。
盾は構えていない。
やはり弱い相手か。
そして建物の上からまるで獣のような身のこなしで何かが襲ってきた。
「アガド!! 殺す!!」
そう暴言を吐きながら女性は爪を立てる。
しかし俺は安心感があった。
蒼が守っているだけではない。
女性からは敵意という敵意を感じない、のか?
そして蒼は大きな手で女性の顔をつかみおとなしく地面に叩きつけた。
もちろん手加減をして。
「そこまでだシオン。いや段ボールなすび」
「なすび言うな!!」
シオンと言われた女性はこちらをにらんでいた。
しかし俺が見つめると何やら頬が赤くなっている。
照れているのか?
シオンは体のラインがくっきりわかる装備をしていて何やらなまめかしい。
「こっち見んな!! アガド!! おい殺すぞ!!」
「はいはい、殺す殺すも好きのうち」
「好きじゃない!! 勘違いすんな!!」
なんだか俺は目をそらしたくなるようなそんな気がした。
二つの大きな胸が上へ下へと揺れ動く。
とてもではないが見ていられん。
「とりあえずこいつも連れていくか」
「使えるのか?」
「どういう意味だ!!」
シオンが俺のことを鋭い目でにらんでくる。
何を勘違いしているのだろうか。
だが、今は何を話しても無駄な気がした。
「お前雰囲気が変わったな」
「え?」
「なんだか何かを忘れてしまったような顔だ」
蒼はため息をつく。
シオンは的確に俺の今に状況を言い当てた。
彼女は俺のことをよく知っているような気がした。
もしかしたら古い友達か何かなのだろうか?
蒼は仕方がないといった感じでいままでのことをシオンに話した。
「なるほど」
「てな感じだ。アガドは今は混乱状態だ。少し静かにしておけ」
「ならば仕方ない。静かにしよう」
シオンは意外と素直でどうやら賢いようだ。
俺たちはそんなこんなで上で待っているユウキ達に会うことに。
シオンは大人しくついてきた。
まるで犬だ。
だが静かだとなんだかかわいい。
肌がきれいで髪は美しい。
しかし時々目が合うとにらんでくる。
俺たちはもと来た道を戻りユウキと合流した。
ユウキはシオンを見て少し微笑む。
仲がいいのか?
「私あいつ嫌いだ」
シオンがつぶやき俺の陰に隠れる。
「なかなか珍しい人に出会ったね。見た感じ私たちについてきたって感じかな」
「な、何を言うユウキ。わ、私はただ世界を救いたく……」
「ありがとう。いい戦力になりそうだ」
シオンはやはり俺の陰に隠れ出てこない。
シオンは相当ユウキが苦手のようだ。
幻想物語〜冥界王の歩む道〜『記憶を失いし男は残酷だが自由な世界を生き抜く』 大天使アルギュロス @reberu7
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