第5話 入口
俺は自分の能力について自己分析していた。
俺の持つスキルは大半がHPを犠牲として放つ大技で構成されていた。
そして通常攻撃には冥王の剣の効果で即死が付与されるらしい。
なので瞬時の戦闘の場合味方の位置取りを覚えうっかり当たらないようにしないといけないわけだ。
魔法は火属性と闇属性、そして即死魔法が主流だった。
これらの魔法はHPではなくMPを消費する。
さらにこれらの魔法は対軍魔法に分類していて大勢の敵を薙ぎ払うことができる。
しかしMPの消費はばかにならないほど多い。
使い道に気をつけないといけないな。
俺は一通り能力を確認した後にステータス欄を閉じる。
「では私達は妖精族を守るために地下王国に向かいます」
「話が早くてありがたいです。我が妖精王国ティティニアはガドの進行により崩壊。地下に王国を築き上げそこで反撃の機会を伺っております」
「そのガドとはどのようなものなんですか?」
「ガドはこの地に現れた邪神の使いがもたらしたものでその性格は極めて残忍。王国の騎士も大半がガドにやられました」
ユウキとセセリーが話しているがこれは先程の化け物について話しているのだろう。
あの化け物はガドというのか。
「でさ、セセリー様はなんで外に出てたんだ? その理由を知りたいんだがいいか?」
「はい大盾の異界人様」
「蒼でいいよ」
「これは失礼しました蒼様。私はとある封印を解くために封印の祠に向かっていました。そしてたどり着いたのですがそこにある封印はすでに解かれた後でした」
封印とは何のことだろう?
俺はみんなを見渡すがうんうんとうなずいている。
みんな知っているようだ。
そんな俺を見ていたマーヤが話してくれる。
「封印の祠には伝説の英雄が封印されていました」
「伝説の英雄?」
俺の疑問にマーヤが答える。
「は、はい。彼はディノケイルと呼ばれる英雄でかつて人族と魔族の戦争から妖精族を守ったと言われている英雄です。第一弾イベント『英雄の亡霊』でアンデッドとして出てきました。そう言ってもわかりませんよねすみません」
マーヤがペコリと頭を下げ謝る。
まあ話はわかった。
セセリーは英雄の封印を解くために封印の祠を訪れたがそこに英雄はいなかった。
ならばこの世界をめちゃくちゃにした奴らが封印を解いた可能性もあるわけだ。
「でも女王以外が封印を解く事はできないはずだが?」
「はい。王族たる女王以外は封印を解く事はできない仕組みになっています。ですから私も少し不可解で……」
そう言うと蒼がボソボソとつぶやき出す。
「トート、トート、ヴィーダーベレーブング!! かの英雄よ今復活の時。輪廻を超え死を超越し今再び立ち上がらん!!」
蒼はそう呟いた。
俺には意味がわからなかったが女王セセリーは目を丸くして驚いていた。
「どこで封印の言葉を?」
蒼は平然と答える。
「これはゲームだった頃のディノケイルの復活の仕方だ。これを知っているのは英雄の亡霊ではじめにディノケイルを復活させたものなら覚えているはずだ。まあ掲示板で情報共有しているかもしれんがな」
「ということは蒼様が初めて封印を解いたということですか?」
「いや厳密には二人いた。そこにいるアガドがそうだ」
蒼は俺のこと指差す。
「お、俺がか?!」
「ああ」
俺が封印を解いたのか。
「ではあなた方が黒幕?」
セセリーが少し後ずさりながら俺を見る。
それに反応してセバスが短剣を取り出す。
やばい戦闘になってしまう?!
だが間に割って入ってユウキが場を静ませる。
「セセリー様。我々は異界人。私達は過去にここによく似た世界で封印の言葉を知っただけです」
「つまりは偶然の一致ということですか?」
「はい」
ユウキがセセリーを説得する。
しかしっせりーの横にいるセバスは短剣を下ろそうとはしない。
「セセリー様、この方達は殺すべきです。異界人とはいえ良いものばかりではありません。あの鉄の兵士たちと同じ類かもしれません」
鉄の兵士?
俺達より先にここにたどり着いた何者かがいるということか?
「セバス。執事たるあなたが冷静さを欠いてしまってどうするのです」
「しかし……」
「彼らの発言には驚きましたが彼らはガドから命を救ってくれた恩人です。それに彼らから負のオーラは感じません。あなたもそう思ったでしょ」
セセリーの言葉を聞いたセバスは渋々短剣を鞘に戻す。
ふー。
なんとか戦闘は回避できたか。
セセリーは一度礼をしてから歩き始める。
「ではこれから地下王国に案内します。と、その前に名前を伺ってもよろしいですか?」
セセリーのお願いにユウキが答える。
「私は『
「俺は『
「わ、私は『
三人は丁寧にお辞儀をして答える。
俺もそれに習いセセリーに名前と
「俺はアガド。『
俺は自信なさげに答えた。
今の俺にはこの職に見合うだけの力量が無いと思い自然と声が小さくなったのだ。
しかしセセリーは笑顔でうなずいてくれた。
「では皆さん行きましょう」
セセリーは俺たちの自己紹介を丁寧に聞きうなずき森の中を歩き始める。
草は背丈ほどまで伸びていて目に草が入りそうになる。
それほど人間の出入りが少なかったのだろう。
俺はただ歩くのも時間の無駄だと思い自分の情報を探る。
ステータス欄には自分の功績や魔眼なんかの情報も載っていた。
『
命を探り当てその命を可視化することができる。
どんなに離れていても見ることが可能で敵対勢力を赤で表示し逆に味方は青く表示される。
なるほど。
索敵をする分には使えそうだ。
しかし今は制御が難しそうだ。
さっきからちょっとでも意識を向けると魔眼が発動してしまう。
抑えるのに他のことを考えるのが良さそうだった。
なので俺は自分の功績を見ることにした。
ステータス欄には俺が獲得した称号が表示される。
『竜殺し』、『PVP世界一位』、『生と死の間』など色々な称号を手にしていた。
これを理解するにはまだまだ記憶不足だがすごいということはわかった。
俺たちはマップの外側。
つまり何なのかよくわからないが蒼に聞いたところ『ゲームでは行けなかったところ』に来ていた。
マップはステータス欄と同じように意識すれば出てくるものだった。
俺はセセリーのいる方角に魔眼を意識してみる。
すると小さな点がアリの巣のようなものが出来上がっていた。
光る巣。
その小さな光一つ一つが命の灯だった。
森を歩き続けて三十分ほどするとセセリーは足を止めた。
それに合わせて皆足を止めるがそこには何もなくただ森が広がっているだけだった。
しかしユウキはうなずく。
なんでうなずいているんだ?
俺は目を凝らしてよく見ると薄い輪郭が何かを隠すように広がっていた。
「ここからが地下王国です」
「なにもないように見えるな」
俺はそのままの感想を述べる。
「よく見てくださいアガドさん。この辺に魔力が集まっているのがわかりませんか?」
うーん。
魔力を見ろと言われてもその方法がわからない。
これも意識すれば見えるのか?
俺は試しに魔眼を意識する。
すると本当に小さな光が集合していた。
それら一つ一つは自分の小指の爪よりも小さく全体像は岩のシルエットをしていた。
「見えたがこの光はなんだ?」
「微精霊が見えるのですか?」
「うん? 微精霊?」
「ああ、アガド君は特別で命の光を可視化することができるの」
「そうなんですね。まあ先に行きましょうか」
セセリーは岩のシルエットの前で立ち囁く。
「■■■、■■■」
言語はわからないが何かを微精霊に伝えたようだ。
すると段々とシルエットが浮き上がり岩のトンネルが見えてきた。
「ここが地下王国の入り口です」
入り口は洞窟のようになっていて先が暗くて見えない。
しかしセセリーは迷わず進んでいくので俺たちもそれに続く。
洞窟は下へ下へと続いていて出口がほんのり明るくなっている。
ほぼ真っ直ぐな直線だが大きな岩の凹凸がありここに身を隠せそうだ。
おそらく外からの襲撃に備えたものだろう。
出口に近づくと光が強くなってきた。
出口には四人の妖精族の兵士が武装して立っていた。
顔つきで分かるがこの兵士は強い。
兵士を見ているとウィンドウにレベルが表示される。
レベルは八十。
俺たちのレベルが百だからかなりの高レベルに値する。
兵士はセセリーを見て敬礼をする。
そして次に俺達を見て嫌そうな顔をする。
「セセリー様、その人間はどちら様なのですか?」
「恩人です。この方たちは悪い人ではありません。ですから丁重にもてなしてください」
「はっ!!」
俺たちは兵士の横を通りすぎてセセリーのあとに続く。
洞窟は入り組んでいてまるで迷路のようだった。
通路を通ってきたがまるでアリの巣のようにいくつもの部屋があった。
洞窟の岩を削りそこを部屋にしたのだろう。
こんなに複雑にするのは敵が来たときに少しでも時間を稼ぐためだろうか。
そんなことを考えているとセセリーは大きな扉のついた部屋で足を止める。
扉は赤くて剣を持った妖精の絵が描かれている。
多分これがディノケイルなんだろう。
「ここが会議室になります。今から会議を始めるのでぜひあなた方も参加してください」
「もちろんです」
「では行きましょうか」
セセリーは大きな扉を魔法で開いて部屋に入る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます