第4話 現状把握
俺はユウキ達とともに門の前に立つ。
大きくそして威圧感のある門だ。
門の中はぐるぐると渦を巻いていて中に何があるのかはわからなかった。
「この門は何なんだ?」
「これはポータル。異世界に行くための門だよ」
異世界と言われても何かわからなかった。
俺にとってはこのターミナルも異世界みたいなもんだ。
だが緑色だと安心感がある。
今まで見てきたのが黒い瓦礫と炎の赤だけだったから感覚が麻痺しているのだろう。
「ここに入ればおそらくクリアするまでターミナルには戻れない」
「どうしてだ?」
「あーおそらくここがチュートリアルだからですよ」
「チュー……何だって?」
「要するに練習ってことだ」
ふーんそうなのか。
練習ならそんなに緊張しないでもいいか。
俺は息を吐き固まった体を柔軟にする。
「いい、これから行くのはチュートリアルだけど気を抜かないで、ここれから行くとこは地獄だよ」
「「はい!!」」
「じゃ行くよ!!」
みんなが門の中に入って行く。
俺もみんなと共に門の中に入っていく。
少しの浮遊感とぐるぐるとしたモヤが気持ち悪かった。
グワングワンと視界が
ずっと見ていると目が回りそうだ。
なので俺は目を閉じる。
目を閉じると少しは気持ち悪くなくなった。
ぐいぐいと引っ張られる感覚はあるもののそこまで不快ではない。
しかし突然引っ張る力が強くなる。
「いた!!」
「大丈夫ですかアガドさん!!」
俺は目を開けると地面が見えていた。
どうやら目を閉じていたら地面に激突したようだ。
俺は鼻を押さえながらゆっくりと立ち上がる。
「ティッシュありますよ」
マーヤが紙切れを渡す。
幸いにも鼻血は出ていない。
なので俺はマーヤに断りを入れてから周りを見渡す。
そこは見渡すばかりの森が広がっていた。
木が生い茂り虫の鳴き声がかすかに聞こえる。
なんというか落ち着いた感じに見えるが俺の頭がここは危険な場所だと言っている。
妙な気配が蠢いているのが分かる。
俺はより遠くを見ようとするといきなり映り込む景色に修正のようなものが入る。
なんだ?!
みんなの姿が青く表示される。
「おい。みんなはそこにいるんだよな?」
「うん? なにか妙なことが起きたのか?」
「もしかしたら魔眼かもしれない。アガド君もっと遠くを見て。正面になにか見えない?」
ユウキがそう言うので俺は遠くを見る。
集中してなにかを探す。
すると一キロメートルぐらい先に青い人と赤いモノが複数走っていた。
青い人は次々と黒色に変わり赤いモノの数が増えている。
俺は察した。
「急ごう!! 何かはわからないが赤いものが青いものを襲っている!!」
「赤は敵だね。急ごう!!」
俺たちは走る。
もう誰かが死ぬ瞬間は見たくない。
俺はできる限り早く走った。
体は自由に動く。
まるで風のように木と木の間をするりと駆け抜ける。
俺は戦闘に備えステータス欄を見る。
すると左下に『《
どうやらスキルを使って早く走っているようだ。
走り続けると俺たちは開けた場所に出た。
戦闘の音はすぐに聞こえてきた。
カンカンと鉄と鉄がぶつかる音だ。
「クソ、始まってやがる」
「全員剣を抜いて戦闘に備えて!!」
ユウキがそう言ったので俺は背中の大剣を片手で握り構える。
そこには赤く肌が露出した化け物が背中に羽の生えた人間をぐちゃぐちゃに切り裂いていた。
化け物には目がなく鋭い牙と鋭利な腕を持っていた。
「こいつ新しいモンスターか?!」
「何にせよ敵であることには変わりないよ。マーヤちゃんは後ろで援護して、アガド君と
「了解だぜ!!」
「俺もやる!!」
俺たちは武器を片手に化け物に挑みかかる。
化け物は前の敵しか見えていないのか俺たちの方を見ようとしない。
いや、奴らには目がない。
だから音で感じ取っているのかもしれないな。
俺は素早く移動して飛び上がり化け物の脳を破壊しようとした。
なにか反撃があると思い次の一手を考えていたががあっさりと化け物の脳を粉々に破壊した。
コイツラはどうやら頭は馬鹿らしい。
俺は蒼の方を見る。
蒼は大盾を構えて叫ぶ。
「《ヘイトフィクスド》!!」
蒼がそう叫ぶと化け物が一斉に蒼の方に走っていく。
まるで餌に群がるハエのようだ。
「おい!! 蒼!!」
俺は叫ぶが蒼は少し笑みを浮かべる。
「見ておけアガド、これが連携だ!!」
蒼は大盾を構えて敵の攻撃をすべて受け止める。
化け物はまるで蒼しか見えていないようだ。
そして攻撃が蒼に集中している間にユウキが雷を纏った剣を抜き放つ。
「《アタックアップ》!!」
ユウキが剣を抜いたと同時にマーヤが魔法を唱える。
するとユウキの剣先が赤色に光る。
雷と猛々しい赤色の光が合わさた剣でユウキは上段から鋭い一撃を放つ。
「《
雷の軌跡を残しつつ化け物の群れが一刀両断される。
俺はその鮮やかな連携に思わず見とれてしまった。
化け物の残りは俺たちを危険な存在だと認識して森の中に隠れていった。
「戦闘終了。みんなお疲れ様」
ユウキは敵がいないことを確認して剣を鞘に納める。
他のみんなも武器を直していた。
俺はもう一度魔眼で確認するが化け物の反応は近くになかった。
「どうだアガド。これが連携ってやつだ」
蒼が俺の肩に手をおいて話しかけてくる。
「すごいな。なんというか
「まあ俺たちはずっとこのパーティーだったからな」
「パー……。何だそれは?」
俺の問いかけに蒼は少し困った顔をする。
「パーティーていうのはつまり仲間みたいなもんだ」
「仲間か。俺もその仲間の一人だったのか?」
「ああ、お前はいい
俺は少し
中衛と言われても何なのかわからないが記憶を失う前は俺も活躍できていたのか。
それなら今の俺もいつかはできるはずだ。
ユウキは襲われていた羽のついた人間に近づいていく。
かなりの数が死んでしまっていたが老兵とタキシードを着たガタイのいい男が何かを守っていた。
ユウキは自分に敵意は無いことを示すために右手を添えてお辞儀をする。
「私達は
「あの礼は何なんだ?」
俺は蒼にユウキのしたお辞儀の仕方が何なのか教えてもらう。
「あれは貴族や地位の高いものにするこのゲームの挨拶の仕方だ。もっともこの
俺はふむふむと感心しながら一連のやり取りを見ていた。
さっきユウキは彼女といったがその姿は確認できない。
見えるのは老兵とガタイのいい男だけだ。
すると老兵はユウキに安心したのかガタイのいい男にコソコソと話をする。
話が済んだのかガタイのいい男が手から何かを解き放つ。
それは小さな光だった。
最初はなんだかわからなかったがよく目を凝らすとそれは人だった。
小さな人、しかも背中に羽が生えている。
ということはこの老兵やガタイのいい男と同じ種類の人ということか。
小さな羽のついた人間が話し始める。
「私は妖精王国ティティニアの女王セセリーです。化け物から守っていただきありがとうございます」
セセリーという妖精女王はユウキに深々と一礼する。
妖精か。
初めて聞く人間の種類だ。
いや記憶を失う前は普通に受け入れていたのかもしれないがなんとも奇妙な存在だ。
「いえいえ。助けがいるのならば助ける。それが異界人のモットーです」
「ふむ。やはり異界人は心優しきお方ですね。ですがこの世界を変えたのも異界人。ですがあなた達からは負のオーラを感じませんね。そう思わないセバス?」
セバスと呼ばれたのはガタイのいい男のことだった。
「そうですね女王様。彼らからは敵意を感じません。ここは彼らに協力してもらうのはいかがかと」
セバスが一言喋った後に視界に大きくメッセージが出てくる。
『クエスト発生、教会を建設せよ!!』
俺は急に出てきたメッセージに驚きつつ周りを見渡す。
すると心優しいマーヤが教えてくれる。
「大丈夫ですよアガドさん」
「すまん。で、クエストとは何だ?」
「そ、そうですねクエストはいわば依頼のようなものです。今から行われる依頼を完了するとターミナルに教会が建てられるんです。でも失敗すると多分お、おしまいです」
なるほど。
なんとなくわかった。
分岐点のようなものか。
この依頼を無事に
ユウキはセセリーと長々と話していた。
その間に俺は自分の能力を分析することにした。
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