第16話 レリアの、2度目の逆恨み。そして 俯瞰視点(2)

「ああ、あれは嘘だ。我々の主――シリル様は、大層お怒りでな。あんな真似をしたお前達を、処分するよう命じられていたんだよ」

「「…………。…………」」


『どっ、どうなっているんだ!? おっ、おい!! ここは森の中じゃないか!!』、『治安局に連行するのではなかったんですの!? なんなんですのこれはっ!?』。

 その叫びに対する返事を聞いた、その瞬間。レリアとヤニクの身体から、一気に血の気が引いてしまいました。


「どうせ『顔に傷をつけられた上で、強制労働を三十数年』、って思ってたんだろう? まあそれは事実なんだが、シリル様にとってそれは生ぬるい。満足できるはずのない、納得できるはずのないモノ。そこで私刑を執行し、お前らの命をもらうことにしたんだよ」

「そっ、そんな……。そんな……っ。さっきは、そんな風に言っては――」

「あの時はお傍に、ベルティーユ様がいらっしゃった。あの御方はそういったやり方を好まれない方だから、シリル様は密かに指示を出されていたのさ」

「な……。な……っ。そっ、そんなことをすればっ! 大変なコトになってしまいますわよっ!」

「そっ、そうだっ! 私刑は認められておらんっ!! 治安局に悟られたらお前達まで罪に――」

「だから、悟られないようにしてるだろ? 実行するのは人気(ひとけ)のない森で、関係者を捕えても治安局に通報しなかった。アレは、このためのものなのさ」


 自分達が知らない間に、準備が整ってしまっていた――。そう知った2人の身体は更に冷たさを増し、たまらず後ずさります。

 ですが彼女たちの中には、


((絶対いや……! このまま死ぬのは嫌……‼))

((ここで死ねるものか……‼ ヤツらに一泡吹かせるまでは死ねん……‼))


 このような、強く見苦しい意志がありました。そこでどうにか隙を見つけて、この場から逃げ出そうとします。


(………………)

(………………)


 緊張と恐怖で弾けてしまいそうになる心臓を、必死で鎮めて。レリアとヤニクは、タイミングを見計らいます。


「急に黙ってどうしたんだ? もうあきらめたの――」 

(っっ! 今ですわっ‼)(っっ! 今だっっ‼)


 そうして2人は同時に地面を強く蹴り、完璧なタイミングで誰もいない方向へと走り出しました。

 ですが――

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