第14話 知り尽くしていた理由~出会いと想い~ シリル視点(2)
「……レリア・ヤテリネは、想像以上に問題児のようだ。まさか想定していた『お礼』よりも、酷い未来へと自ら進んでいるとはね」
平手打ちを知った日の、翌日。僕は商談のため祖国に戻っていて、臣下からの報告書を読み嘆息していた。
平手打ちのお返しを――。そう思って彼女を色々と調べていたら、現在も引き続き暴走中だった。知人や友人に婚約者やエンゲージリングを自慢し、その方々の婚約者や指輪などもこき下ろしていたのだ。
「こんなことをしていたら、帰国後は大変なことになってしまうね」
僕の読みでは3~4か月以内にルナレーズ商会の不正が明るみになり、規模が規模だけに離婚を選択するだろう。そうなればもう貴族の異性との縁がなくなり、そんな真似をしているんだ。同性との縁もなくなる。
実質貴族界からの孤立が確定的で、僕が手を出すより『面白い』ことになる。なので進めていた計画を止め、手を出さずに静観すると決めた――のだけれど。
「いくらレリアが酷い目に遭うとはいえ、何もできないのは悔しいな」
僕は大切な人が傷ついたことが、大切な人を傷付けたことが、やはりどうしても許せなかった。そこで――
「ロック。あの女が帰国したら、即『目』を周辺に配置してくれ」
――商会は、情報が命。そのためウチは各国に仲間を置いていて、その者達に監視を行わせていた。
そうして追い打ちをかけるタイミングを見計らっていると、『怪しい動きを始めた』との報告が上がったのだった。
「シリル様。レリア・ヤテリネは、逆恨みを始めたようですね」
「ああ、そのようだね。……やはり、あの女は良い性格をしている。今度こそ、お礼をしようじゃないか」
そうして僕は馬車に乗り込み、ロックや臣下と共に越境。まずは報告書にあった実行犯21人、仲介者2人を捕え、その後ベルティーユ様のもとへと移動、報告を行った。
そして。
「せっかくですから、レリア渾身のお芝居を眺めましょう」
僕は隣室で待機を行い、ベルティーユ様から合図があったため――
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