第12話 謝罪の理由、そして レリア視点(2)

「わたくしに、伝えたいこと? なんでしょうか?」


 仕方ないから扉の手前で足を止め、振り返ってベルティーユへと顔を向ける。

 まさか、仲直りしようと言い出すつもりじゃないでしょうね? そんなの、こっちが嫌。仲直りの印にこれからお茶を飲もう、とか言い出したら許しませんわよ……!


「………………」

「? ベルティーユ? どうしましたの?」


 ワザワザ止まって振り返ってあげたのに、黙ったままで返事がない。

 自分から声をかけてきたくせに。なんなんですの……?


「ベルティーユ? わたくしの声、聞こえていますの? 伝えたいこととは、いったい――」

「一度痛い目を見た時に、ちゃんと自分を見つめられていたら……。そうはならなかったのにね。あの日貴方は大嫌いな人になったけど、それでも……。5歳の頃から知っている人がそうなってしまうのは、複雑な気持ちだわ……」

「え? えっ? な、何を仰っていますの?」


 やっと喋ったと思ったら、意味不明なコトを言い出した。

 そうはならなかった? そうなる? なん、ですの……?


「ね、ねえっ。分かるように言ってくださいましっ。ちゃんと、説明をしてくださいましっ。貴方はっ、何を言いたいんですの……?」

「その説明は、私ではなくあの方がしてくださるわ。……お願い致します」


 首を傾げいてたら、また意味不明なコトが起きた。

 どうして、出入り口に向かって頭を下げていますの? 『あの方』って、誰なんですの?


((もしかして…………わたくしを、困惑させようとしている? 平手打ちなどにまだ腹を立てていて、あの手この手で振り回そうとしている?))


 ええ、きっとそうですわ。だって他の人間がいる気配は、まるでなかったんですもの。

 これはベルティーユの悪巧みで、はぁ。仕方がありませんわね。


((無視して去りたいところだけれど、チケットの件がありますのものね))


 変に機嫌を損ねて、『行かない!』などと言い出したら面倒ですもの。適当に相手をして――


「え?」


 適当に相手をしてあげましょう。そう思っていたら、目の前の扉が独りでに開き始めた。そ、して……。そして…………っ。


「失礼致します。それではご要望にお応えし、僕が説明をさせていただきましょう」


 絹のような銀髪を肩まで伸ばした、絵画になりそうな美しい男性が現れた。

 この人は――この方は……。ベルティーユの、婚約者……。シリル・アドレルザ様ですわ…………。

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