第12話 謝罪の理由、そして レリア視点(1)

((ふふふ、ふふふふふっ、上手くいきましたわぁ))


『…………分かった。いただいて、お父様と一緒に観に行かせてもらうわ』。そんな返事を聞いたわたくしは、心の中でたっぷりとほくそ笑んでいた。


((ありがとうねぇ、ベルティーユ。餌に食いついてくれて))


 ペアチケットは謝罪の証? こうして謝罪をしに来たのは、反省したから?


 いいえ。

 どれもがウソ。


 すべては、作戦ですの。


((ベルティーユ。貴方は全く意識をしていなかったけれど、覚えているかしら?))


 わたくしがさっき、告げた言葉を。『やや遠い場所での公演のものしか、確保できませんでした』、と言っていたのを。


((実はねぇ、そこも嘘なの。わたくしとお父様はなりふり構わず確保しようとしたから、その気になれば近場の公演を抑えることもできましたの))


 じゃあどうして、わざわざそこにしたのか? 遠くへと向かわせ、移動で疲れさせようとしたから?

 いいえ。そんなしょうもない『お返し』はしませんわ。わたくしは、もっと大きなものを企んでいて――


((貴方を帰路で、野盗に襲わせたいんですの))


 その会場からの帰り道には人気(ひとけ)が皆無なエリアがあって、そこで匿名で依頼をした21名もの賊に襲わせる。そうして殺害――はせずに、顔に大きな傷をつけてもらいますの。


((お顔の上から下に、特大の切り傷がついてしまう。そうなれば、人前に出にくくなるでしょう?))


 おめでとう。貴方も、わたくしと同じ状態になるの。

 こちらはベルティーユの言葉足らずでこうなってしまったのだから、そちらもそうなってもらわないと――それ以上のことになってもらわないと、納得できませんの。


((だ・か・ら。感情を抑え込んで頭を下げて、プレゼントしましたの))


 ベルティーユぅ。今日は我慢をして謝罪をして、昨日は慰謝料の大半を使って賊を雇って、一昨日は必死になってチケットを確保しましたの。

 こんなにも、苦労したんですもの。5日後――公演日は、楽しませて頂戴ね?


((うふふふ、完璧))「っ。ベルティーユ、ありがとうございます……!! では、わたくしは失礼させていただきますわ。こんな女が目の前にいたら、不快なだけでしょうし」


 これも、ウソ。こんな女が目の前にいるのはわたくしが不愉快だから、小汚い場所からさっさと去るコトにしますわ。

 バイバイ、ベルティーユ――


「待って、レリア。貴方に伝えたいことがあるの」


 あちらに見えないようにほくそ笑んでいたら、後ろからそんな声が聞こえてきた。

 もう、さっさと帰りたいのに……! 何なの……!?

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