第11話 幼馴染の再来訪と、不自然 ベルティーユ視点

「あんなことがあったのに、わたくしと会ってくれてありがとうございます。……ベルティーユ。あの時は、申し訳ございませんでした……。嘘つきと言ったり嫉妬と言ってしまったこと……。深く反省しております……」


 あの日からおよそ、4か月が経った日。当時と同じように私はレリアと応接室で向かい合っていて、でも――。あの日とは態度が違っていて、彼女は沈痛な面持ちで深く頭を下げた。


「貴方が口にしていたものは、どれも事実でしたわ。それなのにわたくしはあんな真似をしてしまい、しかも……。平手打ちをして、あまつさえ大切な婚約者様を愚弄してしまいましたわ……」

「…………」

「わたくしはあのような目に遭って、この身で経験して、ようやく事実が分かりましたの……。貴方はわたくしのために、久しぶりに会ったにもかかわらず…………そんなわたくしのために必死になってくれていた。なのに、あの振る舞い……。あんな自分が情けなく、腹立たしくて……。どうしてもご本人の前で、ちゃんと謝罪を行いたかったんですの……」


 許していただけなくてもいい、それだけのコトをしてしまったのですから――。けれどそれでも、謝罪を伝えたかった――。お詫びをしたかった――。ベルティーユ、お庭にいらっしゃるおじ様も。突然やって来たわたくしとお父様に機会を与えてくださり、痛み入りますわ――。


 レリアは窓の外を眺め、改めて背骨が折れそうなほどに腰を折り曲げる。そしてそれが終わると――隣に置いていた小さな箱をテーブルに載せ、静かにその蓋を開けた。


「? それは…………チケット?」

「ええ、そうですの。わたくしは幼馴染ですから、貴方が贔屓にしていた劇団を覚えていますわ。こちらはその劇団『ベルア』の、ペアチケットですの」


 レリアは懐かしげに目を細めてチケット2枚をテーブルに置き、そうしながら再び頭が下がった。


「ベルアの公演は大人気で、入手困難なプラチナチケットとなっています。その入手と譲渡が、わたくしが行える一番の罪滅ぼしかなと思いまして。競争率が激しく、やや遠い場所での公演のものしか確保できませんでしたが……。よろしけば、お受け取りください」

「…………」

「先ほども申し上げましたが、こちらで許して欲しい、そんな甘えはありません。罪悪感を薄めたいとも、考えてはおりませんわ。懸命に助けようとしてくれた貴方、そしておじ様にも何かをしたくて……。受け取っていただけたら幸いです」

「…………分かった。いただいて、お父様と一緒に観に行かせてもらうわ」

「っ。ベルティーユ、ありがとうございます……!! では、わたくしは失礼させていただきますわ。こんな女が目の前にいたら、不快なだけでしょうし」


 私が受け取るや彼女は立ち上がり、早歩きで出入口を目指し始めた。なので私は、


「待って、レリア。貴方に伝えたいことがあるの」


 遠ざかっていく背中に声をかけて――

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