第9話 とある夜会でのやり取り 俯瞰視点

「ねえ、聞きました? レリア・ヤテリネ様の、あの噂」

「ええ、わたくしの耳にも入っておりますわ。意地の悪い、そう仰ったそうですわね」

「よくもまあ、そんなことを思えたものですわ。以前から気になっていましたが、あの方の思考回路はどうなっているのかしら」


「しかも、自分はもうショックを受けてないから来て、って……。ものすごいメンタルですよね……」

「ロール様が仰られていましたが、まったく悪びれていなかったそうですよ。良い性格をされていると思ってはおりましたが……。想像以上でした」

「ですわね……。どうなれば、あんな性格になるのかしら……」


「実を言うと私……。今まで、夜会が嫌だったんです。どこにいってもヤテリネ様がいらっしゃられて……。私は男爵家の娘で、ずっと聞かざるを得なかったので……」

「会うたびに、わたくしの方が――。わたくしに比べて――。ですものね。私達はまだ、マシな方だったんですのね」

「そうですわね。ですがもう、安心して参加できますわ。よかったですわね、ニーア様」


「あ、そうですわ。ヤテリネ様といえば」

「??? どうかされましたの?」

「こちらに向かう途中で、ヤテリネ家の馬車を見掛けましたの。やけにスピードを出していて……。どこに向かわれていたのでしょうか……?」

「あの方の趣味は、お買い物でしたわ。そちらで理不尽なストレスを、発散させているんだと思いますわ」

「それが、あの辺りはそういったお店はないのですよ。あの周辺にあるのは…………レビックス子爵家のお屋敷。そういえばレビックス家のベルティーユ様は、あの方の幼馴染でしたよね。もしかして、ベルティーユ様に地位回復のお手伝いを頼んでいる、のでしょうか……?」

「確かベルティーユ様とヤテリネ様は、絶縁されていますわよ。以前ヤテリネ様が、失礼だから関係を絶った、と呆れることを仰られていましたし」

「そう、だったのですね。でしたら、違いますね」

「……いえ、あの方のことですから……。接触されている可能性は、ありますわ…」

「……そう、ですわね……。ですが地位回復は、さすがに不可能だと感じているはずですわ。もし接触されているとしたら、何を考えて――何を、企んでいるのかしら……?」

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