第8話 理由 レリア視点(1)
「パーティーに参加しなかった理由? それは、貴方が主催しているからよ」
応接室に通され、ロール様と向かい合ったわたくし。そんなわたくしを待っていたのは、あまりにも予想外な言葉だった。
「わ、わたくし、だから……? どういうこと、ですの――なのでしょうか……っ?」
「……本当に、思い当たる節がないようね。いいわ。だったら教えてあげる」
長い長い溜息を吐かれた、ロール様。不快感を全面に表した彼女は、呆れたっぷりで2本指を立てた。
「理由その1。元々、嫌な性格だったから」
平然と人の悪口を言う、などなど。実はずっと我慢していて、わたくしの言動にかねてから不満があった……。
「理由その2。婚約してからこの国を去るまでの振る舞いが、輪をかけて酷かったから」
レイモン様からのエンゲージリングを自慢したり、他令嬢のエンゲージリングと比較したり。自分の婚約者を何度も何度も自慢したり、他令嬢の婚約者や意中の人と比較して小馬鹿にしたり。
ベルティーユのあとも、大勢の人にそうしていて……。それが、非常に不愉快だった……。
我慢の限界を超え、決め手となってしまったみたい……。
「理由その1で溜まり続けていた不満が、理由その2によって爆発した。……レリア様。誰だってね、自分の愛する人が馬鹿にされるのは腹が立つの。貴方は一線を軽々と超えてしまったから、私を含め大勢の人々に嫌われているのよ」
「………………」
「不参加という返事を送りたくもない、即手紙を捨ててしまう程に。罪悪感なく、マナーを無視したり面と向かって言えたりしてしまう程にね」
ロール様は冷めた目でわたくしを見つめ、そう言い終わるとソファーから立ち上がられた。
「だから貴方とは長く話したくはなくて、出来るだけ早く去って欲しいと思っているの。……そういうことですので、至急退室をお願い致します。そして金輪際、私に関わらないでくださいまし」
「おっ、お待ちくださいっ!! そっ、そんな風に思われているとは気付いておらずっ! 気付いていないのなら直しようがなくっ、逆に気付いたらなら直せますわっ! チャンスをっ、一度だけチャンスをくださいましっ!!」
このままだと、異性だけではなくって同性からも見向きもされなくなってしまう――堂々と自慢するどころか、さり気なく見せびらかすことさえもできなくなってしまう!
今のわたくしにとっては、それが数少ない楽しみなんだもの!! その機会がなくなるのはっ、絶対に嫌!!
「お願い致します!! そのようなっ、意地の悪いことを仰らずに――」
「ふ~ん。『意地の悪い』、ね」
ぁ、しまっ。しまった……!
つい、本音が出てしまった…………。
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