第5話 帰国~幸せの、始まり?~ レリア視点

「…………れ、レリア……。おか、えり……」

「…………お父様……。ただいま、もどりましたわ……」


 突然日常が崩壊した日から、5日後。レリア・エーズテルドからレリア・ヤテリネに戻ったわたくしは、我が家(いえ)のエントランスで呆然と立っていました。


 あの日、提示された選択肢――。

 それは、『残されたエーズテルド家の人達と合流し、この国で共に暮らす』『エーズテルド家と縁を切り、祖国に戻る』の2つ。


 ……エーズテルド家はわたくしの人生を滅茶苦茶にした家で、その血を引く人とはもう関わりたくはない……。なので迷わず2つ目を選び、必要な処理を済ませて戻ってきましたの……。


「こ、これからまた、一緒に暮らせるなんてな。お、お父さんは嬉しいよ、あははははははは」

「わ、わたくしも、嬉しいですわ。あはははは」


 わたくし達は無理やり笑って、でも、すぐに沈黙が訪れてしまう。

 だって、こんなことに、なってしまったんですもの……。そうなるのは、当たり前ですわ……。


「…………」

「…………」

「………………」

「………………」

「……………………」

「……………………だっ、だがレリア! 悪いことばかりじゃないじゃないかっ! 最高、ではないかもしれないがっ。良いこともちゃんとっ、あったじゃないかっ!」


 3分くらい、沈黙が続いた頃かしら……。お父様が、パンと手を叩いた。

 よい、こと……?


「贈られていた貴金属は所持を許され、おまけに多額の慰謝料を得られたじゃないかっ! それがあれば目立てるしっ、当分は好きなことをして暮らせるぞっ!」


 わたくしは隣国の貴族である点。不正や工作は経営陣の間で行われていて、わたくしは一切関与していなかった点。それらによって温情が発生し、2億の慰謝料などが手に入った。

 ……そう、ですわね。確かに、そうですわ。最高ではないけれど、良いこともちゃんとありましたわ。


「レリア、今は細かいことは忘れて楽しもうっ! しばらくは何も考えず、思う存分楽しもうじゃないかっ! 趣味だった買い物を行い、大好きだった夜会やパーティーに参加してっ! 新たな人生を謳歌しようではないかっ!」

「そう、ですわね。今は、そうしておきますわっ」


 2億あれば好きなものをたくさん買えるし、400万の指輪などがあれば夜会やパーティーで自慢できる。

 わたくしの大好物、羨望の眼差し。ソレを浴びて、日常を潤しましょうっ。


「レリアが帰国したと知れば、知人友人からすぐ招待状が届くだろうさ。楽しみだな、レリアっ」

「ええっ! 楽しみですわっ!」


 そうして早速お父様と共に買い物を楽しみ、そうしながらレターの到着を待つ。

 さあさあ、お手紙ちゃん。早くいらっしゃい……っ。

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