第3話 去った親子の様子~車内では~ レリア視点

「――こんなことが、応接室でありましたの。幼馴染にあるまじき行動だと思いませんか?」

「うむ、まったく以てその通りだ。まさかベルティーユ君が、そんなにも心の狭い人間だったとはな。ガッカリだ」


 あんな醜い人が居る場所は、一刻も早く立ち去りたかった。そのためお屋敷では最低限の内容しか伝えておらず、敷地を出たあと一部始終を伝えましたの。

 そうすればヤニクお父様は即座に同意し、大きく頷いてくださりましたわ。


「不自然な噂がある? ベルティーユ君は、商会の仕組みを知らないようだ。取引などあらゆるものを記録し、定期的に公的機関に提出しなければならない――。そんな義務を、知らないようだな」

「本当に不自然な点があるのであれば、すぐ見つかっていますわよね。そんなことも知らないで、あんなことを言い出すだなんて。愚かの極み、ですわ」

「幼馴染を案じるフリをした、それが余計に問題だ。こういった時に祝えないどころか、こんな真似をする人間。そんな輩はクズで間違いなく、そんな教育を施した親も同類だ。……私も今日を以て、ベルティーユの父トマとの縁を切るよ」


 トマおじ様はさっき、お父様に『一度調べてみるべきだ』と繰り返していた。娘を咎めようとしていなかった。

 そんな人なんですから、そうするべきですわね。


「久しぶりに顔を見せたら、随分と変わってしまっていた――いや。元々そういった性質があり、気が付かなかっただけなのだろうな。こうして気付けてよかったよ」

「ええ、そうですわね。あんな人達と関わっていたら、何をされるか分かりませんもの。永遠にさようならですわ」

「ああ、永遠にだな――と言いたいところだが、レリア。あと1度だけ会いに行こうじゃないか」


 迷わず再び顎を引いていたお父様が、ニヤリとされた。

 ??? どうしてなのでしょう?


「『婚約中の発覚ならまだいい。結婚後に発覚すれば大変なことになる』。ベルティーユ君は、そう言ったのだろう?」

「はい。そう口にしていましたわ、あの嫉妬女は」

「だから結婚後に、ご挨拶をしに伺おうじゃないか。ますます幸せになったお前の姿を、愚か者達にしっかりと見せてやろうじゃないか」

「……お父様。名案ですわっ! ええ、ええっ。そう致しましょうっ」


 そうすれば、ふふふ。ふふふふふ。

 その時の反応を想像するだけで、笑いが零れてしまいますわ。


「ベルティーユ、前言撤回ですわ。あと1回だけ――わたくしがレリア・エーズテルドとなったあと、会いましょうね。その時はまたそちらに、どうぞお楽しみに」

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