第2話 幼馴染として ベルティーユ視点(1)

「……レリア。貴方にとっては不快な話になってしまうけれど、聞いて欲しい。私は隣国を訪れた際にね、ルナレーズ商会の悪い噂を聞いているの」


 あのやり取りを思い出した私は、テーブルの下で膝の上に置いていた手を握り締め、対面を見つめた。


『ベルティーユの話って、面白くありませんわね』

『せめてわたくしの半分くらい綺麗なら、もっとマシな人生になっていたでしょうに』

『この部屋、まるでセンスがありませんわね。……人は何かしら、長所を持っているはずですが……。ベルティーユのそれは、どこにありますの?』


 この人は昔から頻繁に問題発言をしていて、今回もあんな調子で好き放題している。でもそれでも、私達は5歳の頃からの――13年の付き合いのある幼馴染だから。口を出すことにした。


「ルナレーズ商会はこれから大変なことになるかもしれなくて、もしそうなれば経営陣は――当主様や貴方の婚約者レイモン様も、大変なことになってしまう。……発覚が婚約中ならまだいいけれど、それが結婚後だったら大問題になりかねないわ」


 この国および周辺国の貴族は事情に関係なく、一度結婚した者を家に入れたがらない。それがレリアにどのような影響を及ぼすのかは、言うまでもない。


「へぇ~。ふ~ん。そうですの。へぇ」

「私の主張を、すぐ信じてもらえるとは思っていないわ。だから、自分達の手で調べてみて。様々な角度からルナレーズ商会を調べてみれば、きっと違和感を覚えるようになるから」


 レリアのヤテリネ家も、うちと同じ子爵家。地位的には下の方だけれど、貴族ではあるから様々な手が使える。

 私は思い付いた具体的な方法を複数提示して、続ける。


「今伝えたやり方のどれかを実行すれば、やがて引っかかるはずよ。ね、レリア。一度でいいから、騙されたと思って動いてみて」


 更に真剣な顔と声音で伝え、改めて正面を見つめる。

 このままだと、大変なことになる可能性が高いの。だから、レリア。私の言うことを聞いて――


「幼馴染の婚約に嫉妬して、あげくこんな手を使って滅茶苦茶にしようとするだなんて。そんなお口には、お仕置きが必要ですわねぇ」


 そうすればレリアの口元が苛立ちで歪み、その直後――。左の頬に、激しい痛みがやって来た。

 ……私は……。レリアに、平手打ちをされた……。

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