第45話 迷い狼
「えっと、これがあそこで、あの建物がここだから………」
「……迷うなんてほんと信じられない!!」
「し、仕方ないだろッッッ!!、俺だって初めてきたんだから!!!」
「ハッッ、エスコートに失敗したからってレディーに逆ギレ?」
「そんなに文句があるなら何でついてきたんだよ!!、俺の有休消化にお前がついてくる必要ないだろ!!!」
「べ、別に大した意味はないわよ\\\、ち、小さいことをいつまでもグチグチ、あーあーこれだからモテない男は……」
「………お前だってヤンチャすぎて嫁の貰い手ついてないじゃねぇか」
「なんか言った?」
「何か聞こえましたかお嬢様?」
「オーケー、ゴングを鳴らしたのアンタだからね………」
「そこのカップル、落ち着きなさいって、道に迷ったって言うなら私が案内してあげる」
「かかかかかカップル??!!、ナナナナナンデ私がこんなウスラトンカチと\\\\\」
「勘違いだ、俺とこいつはそういうのじゃーーーっってイヴ??!!!\\\」
「……ってあれ?、ルーガスにルフ様じゃん、何してんのこんな所で?」
休日中、気晴らしに散歩してると道の真ん中で喧嘩している男女がいた、話を聞いた限り、どうやら道に迷ってしまったらしい、イライラしてる二人は口喧嘩の後、女性の方は今にも男に飛びかかりそうになった瞬間、声をかけた…近くでよく見ると前に人狼国で会った人狼族の王女様ルフとその護衛のルーガスだった。
「そ、そのゆ、有給がたまってるから使えって、上司に言われてな、どうせならまとめて使って旅行にきたんだ……\\\\」
「ああ、なるほどね………あれ?、有給中なのにルフ様が一緒なのはなんで?」
「それが、勝手に俺についてきたんーーーー」
「ーーーーなんか文句あるの二人共」
「「………無問題です、ルフ様……」」
疑問に返答してくれるルーガス、だがさらに沸いた疑問をぶつける私、ルーガスが再度堪えようとすると、顔が真っ赤に染めて、鬼の形相を浮かべるルフが途中で暗に黙れと言ってきたので、異口同音でこの話題を速攻流す私とルーガス。
「で、二人とも何処を目指してるの?」
「いや、観光にきただけだから……そ、その、目的地とかは特にないんだけど………\\\」
「ん?、そうなん?、でも観光ならわざわざここじゃなくて、少し遠いけど声も見た目も綺麗な歌姫がいる国とか水路が入り巡ってる国とかいけばよかったのに、そういう観光名所と比べるとあんまり見るところないぜ?」
「べ、別に適当に選んだところがこの国だっただけだ、特別深い意味はない\\\\\」
「ふーーーん………あ、もしかして私ーーー」
「ーーーーッッッッッち、違うッッッ!!!、本当の本当に適当に選んだだけだッッッッッ!!!べ、別にお前に会えるかもとかそんなことは微塵も思ってないッッッッッッ!!!!」
「………『私』としか言ってないんだけど♪」
「ーーーッッッ\\\\\\、あ、いや、その……\\\\\\」
とりあえず二人の目的地がわからなければどうしようもないという事で聞くも、目的地がないと言うルーガス、そこで新たに生まれた疑問を投げかけると、そっぽを向きながらそっけなく返答するルーガス……しかし私は見えていた、彼が顔を赤くしてるのを………試しにカマをかけてみると簡単に誘導尋問に引っかかるルーガス。
「ーーーープッッッ、やっぱ可愛いねルー君は」
「だ、だからルー君はーーーー」
「ーーーじゃあ英雄の像が立ってる広場に案内してくれるかしらッッッッッッ!!!」
「ーーーッッッ??!!……あ、は、はいルフ様……」
赤面してる彼が可愛く、面白かったので思わず吹きしてしまう私、ルーガスが抗議を言い切る前にルフが声を割り込ませた、同時に体を私とルーガスの間に入れ、私は少しのけぞってしまう。
(………よりによって私の前でルーガスとイチャイチャしやがって……)
ーーーーーーーーー
「中々に壮観ね」
「だな」
ルーガスとルフを連れて像が立っている広場へと移動、今はベンチに座って像を三人で眺めている。
(………ルフ様に嫌われてるかと思ったけど、実は気に入られてるのかな、さっきから私の横に自分からくる………)
そう、移動の時もベンチに座る時も、常に私の隣を陣取っているのだ……。
(……なるほど、戦闘民族なルフ様は自分より強いと気にいるのかもしれない)
不良同士が喧嘩し合って、大の字になり、やるなぁお前、お前こそ、みたいな感じなのかもしれない……。
「……お手洗い行ってくるからちょっと待ってなさい」
「わかった」
「わかりました」
ボケっ~とのんびりしてるとルフ様が立つ、どうやらトイレに行きたいらしい、適当に返事をする私とルーガス。
「……別にタメ口でいいわよ」
「え?」
「だから、タメ口で良いって言ってんの、アンタは私より強いんだから敬語使うんじゃないわよ!!」
「あ、は、はいーーーじゃない、うん、わかった」
「フン」
いきなりの言葉に理解が追いつかなかったが、どうやらルフ様に対して敬語を使ってるのが気に食わなかったらしい、驚きつつも本人が良いと言ってるならと、タメ口で返答する私、彼女は顔を赤くしながら広場にある公衆トイレへと歩いていく。
「………そういえば、ルーガスは王女様にタメ口だよね?大丈夫なの?」
「俺とアイツは幼馴染ってヤツでな、アイツが敬語の俺が気持ち悪いっていうからタメ口で話してる」
「へぇ~、ふ~ん」
「何だよその面白いおもちゃ見つけたみたいな目は」
「君、意外と隅に置けないね」
「………だから俺とアイツはそんな関係じゃないって言ってるだろ……」
「そうなんだ~♪」
「全く信じてないな……大体俺が好きなのはーーーー」
「好きなのは?」
「ーーーッッッ、い、イヴって本当に誘導尋問うまいよな……\\\\」
「いや、今のはマジでそんなつもりなかったんだけど………」
ルフとルーガスの関係が気になったので聞いてみると、聞くだけで胸が熱くなる幼馴染だという、途中、否定に夢中になるルーガスは自分の好きな人について口を滑らしそうになる彼、寸前のところで踏み留まり、私に濡れ衣を着せてくる。
「……うん?、なんか落ちたよ」
「あッ、そ、それは………」
ルーガスの首から何か落ちる、金属音がしたので何か硬質なものだろう。
「ネックレス?……いや、これは……認識票?」
「み、みちゃダメだっっ!!\\\\」
「おわッッッ??!!!」
一瞬ネックレスかと思ったが、違う、よくみると戦争時に兵士の生存確認のための認識票だった、かなりボロボロでほとんど擦り切れてる、チェーンが切れてルーガスの首から落ちてしまったのだろう、頭文字と思わしき『I』の文字だけはわかった、ただ横から線が伸びてるような気がしたところで、ルーガスが私から認識票をひったくられてしまった。
「あ、わ、悪い、拾ってもらったのに………\\\」
「いや、こっちこそごめん………貴方の認識票なの?」
「違う、俺の恩人のだ………」
「その人は……いや、やっぱり良いや」
「……勘違いしてるみたいだから言っておくけど、別にこの認識票の持ち主は生きてるからな」
「へ?、そうなの?」
「やっぱり勘違いしてたか………」
私は思わず認識票の持ち主について質問してしまいそうになるが、わざわざ常に首にかけてる認識票、形見の可能性が高いことに気づき、質問する寸前で口を閉ざす私………自分の思考を見透かしたルーガスは持ち主は生きていると忠告してくれる。
「ふーーーん、じゃああれだ、慌てて取り返したり、そんな大切に持ち歩いてる人の認識票ってことは………ズバリ、さっき言ってたルーガスの好きな人のなんでしょ?」
「ーーーッッッ……ま、まぁな………\\\」
さっきの慌てようと、持ち歩くほどの恩人……明らかにルーガスの中で特別な感情を抱いてる人物だろう、そう確信した私は彼に質問する、ルーガスもここまで来たら否定してもバレバレだと観念したのか、肯定する。
「それじゃあ、さっき勝手に見ちゃったおわびとして悩み相談室開いてあげようか?」
「え?」
「ほらほら、イヴお姉さんに何でも相談してごらん、例えばさっきの好きな人の事とか」
「……結局それが目的か……」
まだまだお姫様は帰ってこないので、自然な流れで彼の好きな人について恋バナしようとする私、そんな自分に呆れながら呟くルーガス。
「……まぁ、折角だし相談に乗ってもらうか………人間の女にとって獣人って恋愛対象になるか?」
「うーーん、人によるとしか言えないかな、嫌いな人は嫌いだし、好きな人は好きだと思うよ」
「さ、参考までに聞くが、い、イヴはどうなんだよ?」
「私?、私の場合は全然なるかな、大体が精悍な顔と体しててカッコイイし、それか可愛いし、モフモフしてるし、最高じゃん?」
「そ、そうか……\\\」
「でも私もどっちかっていうと亜人側の人間だからな~、普通の人間の感性からは離れててあんまり参考にならないかも」
「い、いやありがとう、助かったよ」
「そう?、ならいいんだけど……」
そのままルフが帰ってくるまで適当に雑談する私達。
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