第44話 言質を取られ始まる魔王vsロイ


「ふふ、この国の未来は明るいな、子供の癖に観察力に長けておる……」


「そうだね~」


上機嫌で歩くレクス、適当に同意しながら後をついていく私。


「ああ~癒される~」


見かけたペットを撫でる私……昔なら恥ずかしくて触る事ができなかった、今なら連れの子供がペットに夢中になったついでに触るという大義名分があるため、思う存分撫でれる。


「……イヴ、もうそろそろやめないか?」


「もうちょいだけ~」


「ほら、飼い主さんも困っておるし……」


「むぅ……仕方ないな………」


夢中で撫でる私を諌めるレクス、仕方ないので手を離す……あれ?、想定してた立場逆転してね?。


「それでは親に挨拶に行くとするか、や、やはり親に気に入ってもらわなければな……」


「ーーープクク、わ、私の実家はそっちだよ」


またマセた事を言い出すレクス、ここまでくると何だか面白く、含み笑いをしながら実家への道を指し示す。


「何を笑っている?」


「べ、別に、き、気にしないで、ブフッッ」


「……まぁ良いだろう、王たる者は寛大でなければな」


私がなおも含み笑いをしていると少し不満げな顔をするレクス、あ、ちょっと可愛い気がする。


「名をレクス・シファー、イヴさんとの結婚を前提にしたお付き合いをしたく、挨拶に来ました」


「お、おい、どういう事だイヴ!!、ロイ様との婚約がある上にこんな小さい子と結婚なんて………そんな子に育てた覚えはないぞ!!!」


「私もさすがにこれは犯罪だと思うの、児童ポルノ法なの、考え直してくれない?」


「えーーと、父さん母さん、ちょっと耳貸して」


さっきまでの偉そうな喋り方ではなく、存外礼儀正しく喋っているレクスに感心していると、両親は速攻で真に受け、私をショタコンの変態女だと信じ込む、流石にレクスの前で子供のママごとだからみたいな事を言うわけにはいかず、小声で事情を説明する私。


「それじゃあ何か?、子供の遊びに付き合ってあげてるだけか?」


「まぁ、そんな感じ」


「ウフフフ、全くモテモテなんだから~」


要点だけ説明する私、両親は娘がショタコン変態女じゃないという事実に安堵する。


ーーーーーーーー


「それで……我はイヴにふさわしい男だろうか?」


「うーーーん」


あの後、適当に雑談した私達は外に出て適当なベンチへ座る、不意に質問してくるレクス………そろそろ日も暮れるころだし、そろそろハッキリさせようか。


「そうだね、レクス君は良い子だし結婚してあげても良いよ」


「ホ、ホントか??!!!」


「ただし……」


「ただし?」


「君が大きくなって、それでも私の事が好きだったら良いよ」


「え?」


お姉ちゃんの伝家の宝刀、リーサル・ウェポンたる、「大きくなったらいいよ」、子供の頃の記憶なんて曖昧で、成長したら忘れる事を逆手に取るという策士すぎる一手、我ながら惚れ惚れする。


「大きいってどのくらいどのくらいなのだ?」


「最低で私と同じくらいか大きいくらいの身長は欲しいかな~」


「それならば何とかなるぞ!!」


「へ?ーーーウワッッップ」


突如、レクスが煙に包まれた、その後、視界が悪い中、彼が抱きついてくる……煙と突如抱きついてこられた私は驚き、珍妙な声を上げてしまう。


「これならどうだイヴ、お前よりデカくなったぞ」


「………子供の成長速度エグすぎな?」


煙が晴れる、私の腰に抱きついていたのは少年ではなく、青年だった、口ぶりから察するにレクスだと思われる、一瞬で青年に変身した彼に、唖然としながら、混乱しながら、呟いた。


「子供って成長が早いんだからもう~ーーーってな訳あるか!!!、え、え、一体どういう事なの君は何者なの??!!!」


目の前で起こる珍事に思考停止で流しそうになるが、数舜後に自分のボケに自分でノリツッコミをかます私。


「……我はお前が倒した魔王だ……確かに名乗る前に力尽きてしまったが……忘れるなんてひどいぞ……」


「へ?、魔王?、ええええええ??!!!、いやいやいや、だ、だってもうちょい年取ってたじゃん!!、なんかイケオジみたいな感じだったじゃん!!、何でそんなちっこくなってんの??!!」


「実はまだ完全には復活しておらんのだ、だから戦闘時以外はこの姿で魔力を節約しておる」


「そ、それにしたって、復活早すぎない?、まだ数年も経ってないよ?」


「何で復活できたかは我も何から何まで理解しているわけではない………が」


「が?」


「いつもと違う死に方をして、いつもと違う事が起こったのだ……となれば大方予想はつく」


「い、いつもと違う死に方?」


「そう、其方が我の死を背負って生きてくれると誓ってくれた時、安らかに死ねた、いつもは血と憎悪に塗れながら、人間を憎みながら死ぬ我の魂は、初めて救われたような気がした………そ、それで其方に惚れてしまったのだ\\\\\」


「えええええ??!!!、い、いやいや自分を殺した人間に惚れるとか頭おかしいんですか??!!!」


「と、ときめいたものは仕方あるまい、さぁ、責任をとって我と結婚してもらうぞ、言質はとったしな……」


「げ、言質?」


「さっき其方は『自分と同じぐらい大きくなったら結婚してくれる』と、言っていたではないか!!!」


「……あ~、いや、それは~その~」


「………まさか、嘘をつくつもりではないだろうな?」


「………よろしくお願いしますレクスさん」


「うむ、これから宜しくだイヴ」


………側室案をロイ様が許してくれて結果オーライだったのかもしれない。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「………」


「え、えーと、ロイ様……」


「様付け禁止」


「す、すいません、ロイ」


「………そりゃ、僕が良いって言いましたけど………流石に早すぎるっていうか………しかもこんな小さい子を……」


むくれるロイに冷や汗がとまらない私………例のレクスとの結婚について、ロイ様に話を通しておかなければならないので、レクスを連れて報告すると、彼はすぐさま不機嫌そうにむくれる……それも当然といえば当然だ、譲歩したら、すぐさま好きな相手がいきなり他の男を側室第一号として連れてきたのだ、理屈の上では承認したのだからいつ、何人連れてきても良いはずだが、心では納得できないだろう………。


「ふん、王子のくせに器量が小さい」


「な、何だと???!!」


「我ならイヴの全てを愛せる、清濁合わせてな、それに控え貴様は小さい小さい……流石に後から来た我は側室かと思ったが、その程度の器の小さい男が相手なら我が本夫になる日も近いかな……」


「な、そ、そんなわけないでしょう!!!、イヴさんを一番ーー……\\\\」


横で話を聞いていたレクスは鼻で笑いながらロイ様を挑発……おそらく小さいと言われたのが、気に食わなかったのだろう………ロイ様はすぐさま反論しようとするが、顔を赤くして口籠もってしまう。


「うん?、一番……なんだ?、まさかとは思うが、好きを叫ぶのが恥ずかしいとか箱入り娘のような事を言うつもりか?……ハハ、これは失敬、王子といえどまだ子供、ムキになった我が大人げなかったようだな……愛は口に出して好きな相手に伝えるから意味があるのだ……やはり、我が世界で一番ーーー」


「ーーーなっッッ、せ、世界で一番愛せるのは僕です!!!\\\\\」


「……そうだ、それでいい……」


嘲るように笑うレクス、煽り慣れているのか、ロイ様はすぐさま乗せられて、愛を叫ぶ、それをみて満足そうに呟くレクス。


「その、もう、恥ずかしいからやめて欲しいんだけど\\\\\」


愛してる愛してる連呼する二人に顔を赤くする私は呟くも、彼ら二人の話は小一時間続いた。



















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