第43話 行ける墓標とませた子供


「………まさか我を倒す女がいるとは……世界は広いな……」


「男女差別反対……っと」


突如乱入してきた鋼鉄の女、身体中から武器を生やした次は今度は地面からも生やし、果ては我と対等に殴り合ってきた……殴り倒された我の敗北………女は我が敗北を認めたと察すると壁に叩きつけられた我と視線を合わせるように腰を落とし、覗き込んでくる。


「それで、何か言い残すことはある?、できる範囲ならお願いも叶えてあげるよ」


「……貴様、我が憎くないのか?」


「憎いさ……この戦争で私の知人や仲間が何人も死んだ………貴方が憎くないわけがない」


「ならばなぜ我の遺言を聞く?、我を倒してきた人間は問答無用で我にとどめを刺してきたというのに………」


「………確かに憎い、けどさ、気づいたんだよ」


「何にだ?」


「戦争に善も悪もない、正義の反対はまた違う正義、どうしようもないイタチごっこの末起きることなんだって……始めた時点でどっちも悪い………でも、ここまできたら和平交渉なんてできやしない、だったらせめて遺言ぐらいは聞いておきたかったのさ………私の身勝手な自己満足でしかないけどね……」


「……なるほど、酔狂な事だ………」


「お褒めに預かり光栄です」


女は戯けるように呟く。


「………我も、酔狂なようだ……そうだな、墓を作ってほしい………」


「墓?……魔族って墓つくらないの?」


「いや、そんなことはない」


「それなら私が墓作る必要ないんじゃない?、魔族達が作ってくれるでしょ?」


「……それがな、私の墓が作られることはないのだ……」


「なんで?」


「我は不滅、我は不死身、死んでも魔素が集めて何度でも生き返る………故に作られる事は無い………我の死が弔われることはない、我の死が惜しまられることはないのだ………」


「………なるほどね………でも悪いね、それは叶えられないかな……」


「……だろうな」


魔王である自分の墓なんか作ったことがバレた場合、どうなるかなど火を見るより明らかだ。


「本当に悪いね」


「気にするな………気まぐれで言っただけのーーー」


「ーーそうだ、なら私が貴方の墓になるよ!!!」


「ーーこと?………どういう意味だ?」


女は我の呟きに言葉を割り込ませてくる。


「私が貴方を倒したでしょ?、私、イヴ・ペンドラゴンが生きてる限り、貴方が生きていたという証明になるし、偶には黙祷を捧げる、それなら出来るよ」


「………そうか、それは助かる………初めて安心して逝ける………」


我の意識はだんだんと薄れていく、しかしいつものように血と憎悪に塗れることはなく、不思議と穏やかな気持ちだ……。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「久しぶりだなイヴ・ペンドラゴン!!」


「どちら様?」


ロイ様との関係も一段落つき、優雅に家でダラダラしていると、見慣れない子供が訪ねてくる。


「ーーなッッッ??!!、わ、我を忘れたというのか??!!」


「…………記憶にございません」


脳内検索をかけるも……全然わからん、まぁ強いて言うなら金髪、緋眼の美少年なので将来が楽しみ、とかいう感想しか出てこない。


「ぐぬぬぬ……ま、まぁ良い……我はお前に用があるのだ」


「………ごめん、私スーパーコバト人3とかになれないんだ」


「何の話だ?」


「え?、公園でアホに与太話聞かされたんじゃないの?」


またハルのアホが子供に変な事を言ったのか思ったがどうやら違うらしい。


「そ、その……わ、我を倒し、さらに我の生ける墓になるという其方の生き様に……惚れてしまった……な、なので我と結婚してほしい!!!」


(………ませた子だな~)


どうやら私の事を好いてくれているらしい、あれだ、小さい時、近所のお姉さんとかお兄さんに惚れちゃうみたいな感じだと思われる。


(……どうせ暇だし、散歩がてら付き合ってあげるか)


「考えてあげなくもないかな」


「ほ、ほんとか??!!」


「ただすぐ結婚てわけにはいかないから、お互いの事知り合うためにも、今からデートしよっか、その結婚するかどうかはその結果次第ってところかな」


「の、望むところだ!!!」


玄関の鍵を閉め、彼の手を握って歩き出す私。


「……そういえば君、名前はなんていうの?」


「うん?、レクス・シファーだ」


「じゃあレクス君って呼んでいい?」


「な、なら我もイヴと呼んで構わぬか?」


「うん、良いよ」


………小さい子と話してると何でこんなに心が癒されるのか不思議だ。


「イヴ姉ちゃん!!、何してるの?!!」


「あ、こんにちは~」


公園をデートいう名目で散歩してると、いつも遊んでいる子供達が寄ってきた。


「ん?……あ~、手なんか繋いでアチチだアチチ」


「あ、いや~これはその………」


子供の一人が手を繋いでいる私達を揶揄ってくる、別に私は気にしないが、この年頃の男の子には恥ずかしいだろう、どう誤魔化したものか。


「…………」


「ヒュ~ヒュ~」


黙りこくるレクス君、やはり恥ずかしいのだろう………。


「そうだ、よくわかっているな貴様ら!!!、我とイヴはら、ラブラブなのだ\\\」


「ヒューー……え?」


「あれ?」


………なんか思ってた反応と違う……顔は赤めているが……なんかバカップルみたいな事を言い出すレクス、私と子供達はポカンと口を開ける。










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