第42話 当主に襲名
「今日から私がペンドラゴン家の当主か………」
……結局あの後、ロイ様の婚約者を辞退させられることはなかった……元々、ロイ様を溺愛していた王妃様の暴走だったっぽい、そして、色々ゴタゴタしていたので忘れていたが、一応落ち着いてきたということで、ペンドラゴン家の継承式を開き、無事、次期当主となった私。
「まだ実感湧かないな」
妹に任せたら絶対やばいという使命感で立候補したが……実感が未だ湧かなかった……自分の指に嵌めてある、当主の証、竜が彫り込まれた指輪を夜空に透かして眺める。
「………にしても疲れた………」
固めに言えば継承式だが、緩く言ってしまえば貴族達を集めたパーティーだ、別にそれだけなら良いのだが、何せ私は勲章をもらうレベルの国の英雄な上、王子様と婚約してるという超がつくほどの有望株、権力の権化と言ってもいい存在、そんな奴が主役のパーティーなんか開いたらそりゃ貴族達はこぞって気に入ってもらおうと取り入ってくる、適当に話を合わせつつ、一人の話がひと段落ついたと思ったら、後ろから二人三人と砂糖に群がる蟻の如く、私の周りを固める………事実、将来甘い汁を吸うための行動なので言い得て妙である………それでも何とか全員と適当に話を終えた後、休みがてらバルコニーへと避難する私は独り言を呟いていた。
「………パーティーの主役がこんなところにいて良いのですか?」
「ーーー!!、ロイ……様………」
ひんやりしてて気持ち良いとか思って、手すりに顔を乗せて脱力していると、聞き覚えのある声が夜の静寂に響く、後ろを振り向くと思った通り、ロイ様が立っていた。
「…………」
「す、すいません……ロ、ロイ………\\\\」
「………まぁ良いでしょう」
私がロイ様と言うと彼は少し目を釣り上げて、私を見る、しまったと思い、少し気恥ずかしながらも慌てて言い直す私、すると少しムスッとしながらも名前を呼ばれたことで機嫌を直してくれるロイ様。
「……ペンドラゴン家当主襲名、おめでとうございます、イヴ……」
「あ、ありがとうございます………」
不意に祝いの言葉を告げるロイ様、無難な返答しかできない私………束の間の静寂が訪れる。
「………ロイさ……ロイ、その、あの、話の返事なんだけどさ………ごめん……貴方の想いには応えられない……」
「………理由を聞いてもよろしいでしょうか?」
「私、ロイ様のこと好き……前は友人としての好きが、告白されてから、貴方を男として意識してしまい、異性として好きに……なったと…思う…………単純な女だよね……」
「だ、だったらーー」
「ーーーですが駄目なんです!!!」
「??!!」
「私はみんなが言うほど強くないんです、弱い女なんです………………好きな人と結婚する……幸せだと思います……しかし、もしかしたら裏切られるかもと思うと、手が震えて、足がすくんでどうしようもないんです………いつか不幸になるというなら、私は幸せになんかなりたくないんです………」
「そ、そんな僕はそんなことは……」
「はい、頭ではわかっています………ロイ様、いやロイはそんな事はしないって……でも………」
(ーーーそ、そうか僕はなんて馬鹿なんだ………そう簡単に信じられるわけがない、なんせ彼女は愛している婚約者と血のつながった妹にひどい裏切られ方をしているんだ………心の傷はそう簡単には塞がらない)
ちょうど二人きり、いつまでも待たせても悪いので、この前の告白の返答をする、無理だと……ロイ様は悲痛な面持ちで理由を訪ねる、彼のその顔は私の心を軋ませる、私はポツポツと話す、ロイ様のことは異性として好きになってしまったことを正直に伝える、彼はだったら何故という言葉を遮って否定する私、自分の心の弱さを吐露すると、彼はハッと何かに気づいた後、俯く、おそらくだが、私のトラウマを察してくれたのだろう。
「……すみません………」
「一つだけ質問しても良いですか?」
「………何ですか?」
「要は誰か一人を愛して、裏切られるのが怖い……そういう事ですね?」
「はい………」
「……そうですか、それなら……側室というのはどうでしょうか?」
「そ、側室?」
「はい、昔はこの国にも側室という制度がありました………私が王位継承したら、王位を貴方に譲り私が貴方の側室になる……他の男はイヴが気に入った男を連れてきても良いですし、僕の婚約者を決めた時みたく側室に入りたい男を集めて大会を開いても良いと思います………平たく言えば王政から女王政に変えて、側室制度も復活させてしまおうという話ですね」
「え、えっと……ま、まぁそれならいくらか安心感が生まれるとは思いますが………そ、それって良いんですか?」
不意にロイ様はとんでもない事を言い出す、要はキープを持てばフラれても大丈夫みたいな理屈だ……確かにそれなら安心感は多少生まれるが………色々問題がありそうな解決方法だったのでつい疑問を投げかけてしまう私。
「今現在は王政ですから僕が王になれば、女王政に変えることは可能だと思います」
「い、いや、その、それもそうなんですが………私がその、他の人と、ふ、夫婦の営みをしてもその……良いの?」
「ーーー良くないですよ!!!、で、でも、そうでもしないと安心して応えられないというならば、僕は甘んじて受け入れます………」
「な、なんで私なんかにそこまでして………」
「………わからないんですか?」
「え?」
「貴女を………愛してるからです」
「へ?\\\\」
「……それに、どんな男が来たとしても僕は負けるつもりはありません……一番貴女を愛し、貴女に選ばれてみせます!!!」
「わ、わ、わかりました!!、わかりましたからもう勘弁してください!!!\\\\\\」
私のために側室になってくれるという覚悟、全くの誤魔化し無しでストレートに愛を告げてくるロイ様、ここまで男を見せられてしまったら断ることなどできはしない、顔を真っ赤に染めながら彼の勢いに飲まれて了承してしまう私。
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