第36話 弟子入りとハルの記憶とロイ様の勘違い


「コバトに虐められるにはコバトをネタにしたデタラメを子供達に吹き込めば良いんだ」


「デタラメを吹き込む?」


「やっぱデタラメなんじゃねぇか」


最終的に師匠と言われて調子に乗ったハルはレベッカにどうやって私に虐められるか教えてやる事にしたようだ。


「ーーー駄目です!!」


「え?」


「イヴ姉様の嘘を子供達に教えるなんて私には出来ません!!!」


「あ~そっか………」


「根はいい子なのね……」


当たり前と言えば当たり前の返答を返すレベッカ。


「それは困ったな、それが一番手っ取り早く殴られる方法なんだが」


「それは人としてやってはいけない行為です!!」


「え?、俺、人だと思われてない感じ?、まぁいいや、それじゃあ次だ、実はコバトはかなりの漫才好きでな、こっちがボケると必ず全力でツッコミを入れてくれるんだ」


「ふむふむ」


「だからデタラメ吹き込むなって……」


レベッカにデタラメを吹き込むハル、呆れる私。


「よく見てろよ、レベッカ………おう、ベジー○、一緒にウィ○さんのとこで修行しねぇか?」


「誰が○ジータだ」


「ーーーー鼻が痛いッッッ??!!!」


いきなりわけわからん事を言ってきたハルをしばく私。


「ーーーおおお、す、すごいです師匠!!、いくら私が頼んでも首を縦に振らなかったのに、わずか数秒でッッッ??!!」


「ーーゴフッッッ、だ、だろ?、次はお前がやってみろ」


「え、えーと………べ、ベジー○、い、一緒にウィ○さんのとこで修行……しねぇか?」


「………戦闘民族サイ○人の王女たる私が貴様なんか下級戦士と一緒に修行なんてできるか」


レベッカが恥ずかしそうに途切れ途切れでハルの台詞を真似る、あんまりにも痛々しいモノマネだったので、つい乗ってしまう私。


「へ?、えーとえーと……な、なんて返せばいいでしょうか師匠??」


「おい、コバト!!!、なんで俺の時はノってくれなかったのにレベッカの時はノリノリなんだよ!!」


「ハルはうざいからノリたくない、レベッカは可愛いしいい子だからノる、それだけ」


「「そ、そんな~」」


二人は異口同音でベソをかく。


ーーーーーーーーーーーーーー




「おい!!!、おい死ぬなハトコ!!!!」


「ーーーコフッッッ、私はもうだめだ……ハル、君だけでも逃げて……」


戦場の中、腕の中で死にかける親友ハトコ。


「そんな事できるわけ無いだろ!!、大丈夫だ、本部に戻ればきっと助かる!!、だからーーー」


「ハル………もうハトコは……」


「ーーーーウルセェ!!!、お前にこいつの何が分かる!!!、コイツの図太さは俺が一番よく知ってる!!、ガキの頃からの親友なんだ!!!、コイツだったらこのくらいの怪我どうって事ねぇ!!!」


「………ハル、最後にお願いがあるんだ……」


「ーーー最後なんて言うな!!!」


「頼むよハル……お願いだから聞いてくれ………」


「……………」


隣で分かりきってる事を言う同僚、俺は現実が受け入れられず、怒鳴り散らす、ハトコは俺に最後の願いとかほざく、図体ばかりでかいガキの俺はハトコのその言葉が気に入らず大声をあげる。


「ハル、良いのか?、このままハトコの言葉を聞かず、死なせてしまって………」


「ーーーッッッ、………わかった、聞く、黙って聞くよ………ハトコ………教えてくれ、お前の最後のお願いってのはなんだ?」


「………イヴ少佐は知ってるよね?」


「あ、ああ、同期の中でもかなり優秀で上司からも気に入られてる人だろ?」


「あの人……何か自暴自棄な気が………するんだよ……一緒の任務に着いた時に……かなり危なっかしい突っ込み方をしてた………まるで一分一秒も惜しいみたいな感じで……それでそれとなく理由を聞いてみたんだけど……『故郷に婚約者が待ってるから戦争を早く終わらせたい』ってさ……休憩時間の時もずっと張り詰めてて…………同期の中だと少ない女友達だったからかな……すごく気になちゃって……あんな調子じゃ私みたいに死んじゃうかもしれないから……彼女の緊張をほぐしてあげて、隣で彼女をサポートしてあげて欲しいな………」


「き、緊張をほぐすって……どうすれば良いんだよ?」


「………昔さ、父さんが死んじゃった時、いつまでも落ち込んでる私を励まそうとした君に私が八つ当たりして、喧嘩した時あったでしょ?………それで君が友達に『ハトコって実はサイ○人なんだぜ』っていう嘘を触れ回った時……私は呆れたよ、そんなしょうもない嘘ついてなんの得があるんだって、ハルの馬鹿さ加減を見てると深く悩んでる自分がアホらしくなって、肩の力が抜けた気がして……父さんの死をなんとか受け入れる事ができたの………人間って自分より馬鹿な事をする奴を見ると、途端に冷静になれるから………そうすればきっとイヴさんの暴走気味の特攻もやめさせる事ができると……思う……だからさ、私と話してる時みたく、イヴさんと仲良くしてあげ……て……」


「……………わかったよ、ハトコ…………」


俺は親友の最後の言葉を聞く、ハトコは静かに息を引き取った。


ーーーーーーーーーーーーー


「ーーーーッッッ??!!!…………また懐かしい夢を見たな………」


俺は勢いよく飛び起きる、彼女達と適当な時間まで遊んだ後、眠りについた、レベッカとイヴと戯れて楽しかったせいか、親友との楽しい日々まで思い出してしまった………最後の言葉のところまで………戦争が終わったと行ってもまだ世の中は物騒だ、イヴが我を失わないために、俺は今日も今日とて親友の遺言に従ってイヴにアホな事をしまくる。


ーーーーーーーーーーーーーーー


イヴ視点


「イヴさん………僕今日からドMになります」


「………はい?」


いつも通り、ロイの護衛をしていると、ロイがなんか変な事を言い出した。


「ロイ様、一体どうしたんですか?」


「………噂を聞きました………イヴさんは人を虐めるのが大好きなドSだって……だから、僕はまがい形にも貴女の婚約者……こちらが合わせるべきかと思いまして………」


「いや、それデマですよ」


「え?、そ、そうなのですか?」


「はい」


「な、なんだ…」(よくしばいてるハルさんと仲が良いのはそういう事かと思ったけど違うのか………よかった……)


どうやらロイまで勘違いさせてしまったらしい………。









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