第30話 ロイ争奪戦
「レディースエンガールズ!!、さぁ、今宵優勝に輝き、王子との婚約を決めるのは誰でしょうか!!」
「私よ!!」
「いや私が!!」
「私がロイ王子と結婚するの!!」
熱気渦巻くコロシアム、白熱する参加者同士の睨み合い、湧き上がる観客席、一番凄い所はこの場に女だけしかいない事だろう、いや、正確に言えばただ一人だけいる、ロイ王子が複雑そうな顔を浮かべて。
「………絶対勝つ」
不退転の覚悟を決めて一人呟く私。
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数週間前
「頼むイヴ!!、兄さんを助けてくれ!!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてアレン様、一体どうしたんですか?」
いきなり自宅へと押しかけてくるアレン様、護衛のハルは少し複雑そうな顔をしている。
「ーーなるほど、要約するといつまでも婚約相手を決めないロイ王子に痺れを切らして婚約相手を決める武闘大会を開いたってわけね」
「そ、そうだ!!」
アレンの興奮まじりに喋る話を要約するのには結構骨が折れた。
「それで、私にどうして欲しいのですか?」
「い、イヴに優勝してほしい!!」
「つまり私にロイ様と結婚しろと?、それはちょっと嫌ですね、結婚相手ぐらいは自分で決めたいです」
ロイの事は好きだが、恋愛対象ではないので、流石にそれは気が引ける。
「ち、違う!!、兄さんの恋が実るまでの間、婚約者で居てほしいってだけだ!!」
「ん?どういう事です?」
「………実は兄さんには好きな人がいるんだ………前、偶然遊びに行った時、部屋に入ろうとしたら独り言を言ってたんだ………『やっぱり嫌だ、好きな人がいるのに、他の人と結婚するなんて』って泣きながら、呟いてたんだ……だから……」
「ーーー引き受けた」
「い、良いのか??!!」
「うん、ロイ様には幸せになってほしいからね、他の人が優勝したらしたで、ロイ様はアルフレッドと違って浮気なんかしないだろうけど、それでも好きな人のことが気になって結局破局しちゃいそうだし」
「い、イヴ……」
どうやらロイ様には想い人がいるらしい、それなら力になりたい、無理矢理婚約させたところで悲しい結末しか待ってない気がする、なんせお互いの合意の上で婚約した私ですら婚約破棄をされてしまっているのだ、ロイ様も相手も傷つく結果だけは避けなければ。
「……それで?、ハルは良いの?、こんなおおっぴらに王族相手に偽装婚約をしようって話をしちゃってるわけだけど
、王様とか軍上層部にチクる?」
「……あ?、悪い悪い、うたた寝してて全部聞いてなかった、で、なんの話だっけ?」
「わざとらしい……けどま、嫌いじゃないよアンタのそういう所」
軍人のハルにとってはあまり穏やかな話じゃないだろう、万が一バレた時、知っていたとなれば厳罰は免れない、しかし、ハルはわざとらしく欠伸をして寝てたアピールをしてくる、苦笑する私。
ーーーーーーーーーーーーーー
「さぁ~勝負内容は至って簡単!!、参加者全員によるバトルロイヤル!!、最後まで立っていたものが優勝です!!たとえ死んだとしても特殊な結界が張ってありますので気絶程度で済みます!!みなさん気兼ねなく全力で戦ってください!」
「大雑把だな」
司会の人が今大会のルールを説明する、まぁルールというほどのものでもないが。
(とりあえず、数が減るまで適当に流して体力温存しーーー)
「「「「くたばれッッッ!!!」」」」
「ーーーッッッ??!!」
全員が私の方へと殺到してくる、砂糖に群がる蟻の如く、隙間なく私の周りを固められる。
「「「「「一時共闘して強豪は早めに潰す、これぞバトルロイヤルの鉄則」」」」」
異口同音で喋りながら女達は剣、槍、斧、薙刀、槌、ありとあらゆる武器を彼女に叩きつける。
「イ、イヴさん!!!」
思わず名前を呼んでしまうロイ。
『ーーー
「な、なに」
「馬鹿な」
しかし、体から様々な武器を展開して防ぐイヴ、まるで針の代わりに武器を生やした針鼠のようだ。
『
「「「「「ーーーーッッッ??!!」」」」」
体に生やした武器達を一斉に発射する、蜘蛛の子を散らすように纏わりついていた女達を吹っ飛ばす。
「やっぱりそうくるよね」
眼前に広がるのは敵の群れ、全員で組んで私を潰す気らしい。
「おおおっと!!開始早々盛り上がっている!!、なるほど、イヴ・ペンドラゴンを最初に潰す作戦のようだ!!!確かに彼女は優勝候補筆頭ですからね!!!」
司会が面白がって解説を加える。
『
武器と弾を装填し直して、発射、突撃してくる女達を返り討ちにしていく。
「隙あり!!」
「ーーーーッッッ??!!」
「ふふ、流石にこの数はカバーしきれないみたいね」
「……………」
(数が多すぎる)
流石に数が多すぎる、発射後の隙を狙われて攻撃された。
「ふふふ、このまま攻撃すればいつか倒せる」
「しょうがない、カノン、ギア上げるよ」
『了解です、マスター』
『
彼女は左のグローブについているリコイルスラスターを引っ張り、グローブ内部の魔核に溜めてある莫大な魔力を解放、そして呟く、紡ぐ、眼前の敵を掃討するための魔法の詠唱を、体に魔力が漲り、パチパチと音が鳴る、強大すぎる魔力に黒かった彼女の髪が銀色へと変化する。
「
彼女が電解質を纏った手を地面につける、魔力が地面に浸透していく、詠唱を完了すると地面から無数の砲台が出現する、砲台だけでなく、装甲板なども出現する、それはさながらイヴを中心とする要塞が現れたかのようだった、いや事実そうなのだ、なぜなら、この砲台達は見掛け倒しではないのだから。
「
「「「「ッッッッッッ??!」」」」
目の前から突っ込んでくる女達を捕捉、机上の空論の硬度の砲弾をこの世界ではまだ妄想の域を出ない兵器達へと装填、発射の為の準備をすべて整えた後、思う存分弾をぶちまける、大砲、ガトリング砲、榴弾砲、攻城砲、対空砲、戦車砲、ありとあらゆる火砲が火を噴いた、ガトリング砲の連射で身体中を蜂の巣にされたり、榴弾砲や戦車砲を喰らって体のほとんどが消し飛んだり、等しく同じ死を撒き散らしていく、飛んでくるのは砲弾だけではない、剣、斧、槍、鎌、さまざまな刃物が飛んできて穴だらけの死体を細かく刻んでいく、悲鳴をあげようとするも、口を撃ち抜かれて悲鳴すらあげられず死んでいく女もいる、なんとかしようと手持ち武器を投げてきたり、遠距離系の魔法を放ってくる女もいるが、装甲板によって弾かれる、なんとか近寄ろうとするも近づけば近づくほど濃くなる弾幕を抜けられるわけもなく、鮮血がコロシアムに広がっていく、いくら
死んでも、外へ出されるだけで済む結界が張ってあるとはいえ、その容赦のなさに観客は唖然とする。
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