第15話 剣の稽古

 ここ、なのか・・・。


 俺は目的地に到着して早々、依頼を受けたことを後悔し始めていた。


 何だこの豪華な屋敷は・・・。


 依頼書に記されていた場所が、辺境都市中心部付近だった時から、もしかしたらとは思っていたが、まさかここまでとは思っていなかった。


 と言うか、こんな屋敷に住めるような富豪なら、鉄級冒険者に依頼を出すのではなく、騎士に依頼を出したほうがいいだろうに。何か理由があるんだろうが・・・。


 まあ俺が気にすることではないか。


 さて、行くか。


 俺は、門番をしている男性に話しかけた。


「すいません」


「何だ?」


「冒険者ギルドで依頼を受けたものですけど」


「ああ・・・。話は聞いている。中に入って良いぞ」


 そう言って、門番は門を開く。


 門の内側には、手入れの行き届いた庭園が広がっていた。


 大きい庭だな・・・。


 そう思いながら、庭園を通り屋敷の前まで向かう。


 屋敷の前には、執事と思われる人物が立っていた。


「お待ちしておりました。こちらへお越しください」


 そう声をかけられた俺は執事に連れて行かれる。



 ***



 執事に案内された先は、庭園の裏側に当たる場所だった。


 ここは、裏庭か?


 先程の庭園とは違って、特に装飾などされていない芝生の庭だ。


「少々お待ちください」


 そう言って、執事は離れていった。


 しばらく待っていると、執事は侍女と思しき女性二人と戻ってきた。


「お待たせしました」


「いえ。それよりもしかして剣の稽古相手って、もしかして・・・」


「はい。私たちがそうです」


 なるほど・・・。だから冒険者ギルドに依頼してきたのか。


「それにしても、なぜ剣の稽古など・・・。こう言っては何ですが必要なさそうに見えますが?」


「実は・・・」


 執事は事情を説明し始めた。


 何でも、近いうちに辺境伯主催の遠征に、この屋敷の御曹司が参加する事になったらしく、ここにいる三人は、その際の付き人に命じられたらしいのだ。


 護衛のため別に騎士も派遣するようだが、自分の身を守れるぐらいにはなっておけとの事らしく、今回の依頼を出すことになったらしい。


「ちなみに、遠征を行うのはいつ頃ですか?」


「一月後です」


「依頼は今回だけですか?依頼書には期限が書かれていませんでしたけど」


「いえ、できれば遠征までの間に何回かお願いしたいのですが・・・」


「わかりました。詳しくは後で決めましょう」


「はい。では、早速お願いします」



 ***



 あれから数時間ほど稽古をした後、俺は屋敷を出た。


 疲れた。まさかスキル習得から教えることになるとは・・・。


 最低限の武術系スキルくらいは持っているものと思っていたが、執事たちは武術系のスキルに関しては一つも持っていなかった。


 次回以降の依頼も受注してきた為、遠征の日までは、数日に一回のペースであの屋敷に通うことになるだろう。


 俺はそんなことを考えながら、宿に向かった。

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