第12話 緊急依頼

 薬草を採取した俺は、東の森から辺境都市に戻り真っ直ぐギルドに向かった。


 ギルドに着いた俺は、受付で依頼達成の報告を済ませ、採取した薬草を納品する。


 依頼達成の報告を終えギルドを出ようとした時、ギルドの二階に続く階段から巨漢と表現するにふさわしい男が降りてきた。その後に続いて、システィナが降りてくるのも見えた。


 巨漢の男は、「注目!」と、よく通る大きな声で言う。


「たった今、東の森にて異常事態が発生していると、辺境騎士団から連絡が入った」


 唐突に告げられたその内容に、冒険者がざわめき立つ。


 さっきまで俺がいた場所か。特に異変はなかったと思うが。


 まあ、魔物が溢れ出しかけてはいたが、それは討伐したしな。


 そんなことを考えながら話を聞く。


「近いうちに東の森に討伐隊を派遣する予定だった事は、皆知っていると思う。だが先程、討伐隊を派遣する事になった原因である、大量発生した魔物の反応が消滅したとの報告が入った」


 再び大きなざわめきが立つ。


 俺が倒したから反応が消滅したのか。なんだか厄介な事になった。


 ざわめきが落ち着いたところで、巨漢の男は再び話し始める。


「そこで、冒険者ギルドに東の森中心部の調査依頼が入った。この依頼は、緊急依頼として扱う。依頼を受ける者は、一時間後に東門前に集合してくれ。以上だ」


 どうしよう。助けを求めるように、システィナの方に視線を向けた。


 目が合う。こちらに気付いたようだ。しばらくして、ハッとしたような顔をしたシスティナは、手招きをした。


 来いってことか。


 周りの冒険者を避けながら、ギルド二階に続く階段に向かう。


 近くまで行くと、システィナはこちらに一瞬視線を向け二階へと上がって行ってしまう。


 ついて来いって事かな。


 俺も後に続き階段を上がっていく。その時、先ほどまで喋っていた巨漢の男とすれ違った。


 この人強いな。と俺は直感的に思った。


 気配の感覚で言えばシスティナと同じか、少し下なくらいだろう。


 意外といるんだな強い人ってのは。


 階段を登り二階に着く。


 二階はオフィスの様な空間で、職員が大勢いた。その奥の一角に、会議室のような場所が用意されており、そこにシスティナがいた。


 俺もその場所に向かい、中に入った。


 中に入るとすぐにシスティナに声をかけられる。


「何かありましたか?」


「いや、ちょっと・・・」


「歯切れが悪いですね」


「いや。報告があるというか何というか・・・」


「まさかとは思いますが、東の森の件ではないですよね?」


 俺は、こくりと頷く。


「目があった時から嫌な予感はしていましたが、やはりその件ですか」


「その・・・東の森に発生していた魔物は全部倒しといたから」


「から、なんですか?」


 鋭い目つきで先を尋ねられるが、これ以上何も話す事はない。だが、何も発言しない訳にはいかない雰囲気だ。


「倒しておいたから、調査に行く必要はないと思って」


「・・・はぁ。倒しておいたですか・・・。そんな簡単に倒せるほど魔物は、少なくなかったはずですけど」


 呆れたような口調でシスティナはそう言った。


「数は多かったけど、強い個体は少なかったからな」


「そうですか。話はここまでにして、早く支部長に報告にいきましょう」


「支部長?」


「一階で話していた人ですよ」


 ああ。あの巨漢の人か。


「俺も報告に行くのか?」


「私だけに任せるつもりですか?」


「なんでもないです」


 大人しく従う事にした。


「ここで待っていてください。支部長を呼んできます」


 そう言って、システィナは支部長を呼びにいった。

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