第10話 冒険者としての仕事
食事を食べ終えた後、俺達は解散した。
別れ際に「くれぐれも秘密に」と念を押されたこと以外は、特に何もなかった。
俺は「猫のより宿」に残り、予定通りこの宿に宿泊する。
用意された部屋は、トイレ、シャワー付きの一人部屋だった。和風の部屋かもと思ったが、普通にベット付きの洋風の部屋だった。
俺はシャワーを浴び、早めに眠りについた。今日は、流石に疲れた。
***
翌朝。
目が覚めた俺は身支度を整え、食堂に向う。
食堂は、朝食を食べに来た人で賑わっていた。
俺は、カウンター席に座り、定食を注文した。しばらく待っていると、味噌汁とご飯におかずのシンプルな定食が出てくる。
「いただきます」
まずは、味噌汁から。
美味しい。
異世界でこんなに美味しい和食が食べられるとは思わなかった。
あっという間に食べ終えた俺は、勘定を済まして食堂を出た。
そのままの足で、宿泊の延長をお願いしに受付に向かい、延長の手続きをしてもらった。
長期滞在の場合は、料金を先払いする必要があるらしい。とりあえず、十日間分の料金を先払いしておく。
その後、部屋に戻り出かける準備を済ませ宿を出た。
今日はギルドで、依頼を受ける予定だ。
朝の街中を通り、ギルドに向う。
ギルドは、まだ早い時間にも関わらず、冒険者で賑わっていた。
俺は、依頼の貼られている掲示板に真っ直ぐ向かい、依頼を探す。
鉄級の冒険者が受けられる依頼はこの辺か。
鉄級だと、雑用レベルの依頼が多いな。
うーん、どれにしようか。正直どれも、そこまで変わらない。
しばらく悩んだ後、掲示板から薬草採取の依頼が書かれた紙を剥がす。
初めて受ける依頼だし、この辺が無難だろう。
受付に依頼の紙を持っていき、依頼受注の手続きを済ませ、冒険者ギルドを出発する。
目的地は辺境都市の東方向にある森だ。俺がこの世界に転移した時に出現した森とは違う森のようだ。
辺境都市の東門に向かい、東門から街の外に出た。
東門からは、目視で確認できる位置に森が広がっている。
あれか。思ったよりも近いな。すぐに着きそうだ。
***
予想通り、森まではあっという間に着いた。
森には冒険者が多く居た。この森に居ると言うことは、同じような依頼を受けた冒険者たちだろう。
早速薬草を探し始めるが、思ったよりも見つからない。
もうすでに冒険者たちが、採取してしまっているのだろう。これだけ冒険者が、いるのだから、当然といえば当然だが。
自分で作る用にも薬草が欲しいため、多めに採取しておきたい。
この辺で探していても、そんなに量を確保できなさそうだ。もう少し奥まで行ってみるか。
そう思い、森を進んでいく。
森の奥に進むにつれて、森の浅瀬では感じなかった魔物の気配を感じる。
この辺まで来ると、魔物が出現するようになるみたいだ。魔物のレベルもそこそこあるようだし、森の浅瀬で採取していた冒険者たちのレベルでは討伐するのは厳しいだろう。だが、そのおかげか薬草の群生地が手付かずのまま残っていた。
それにしても、魔物の気配が多すぎる。溢れかけているのか?
薬草採取の邪魔をされるのも面倒だ、薬草採取を始める前に周辺の魔物を倒しておこう。それに、この状態でほおっておくと、近いうちに魔物が溢れ出しそうだ。
ちなみに、「溢れ出す」とは、魔物の持っている厄介な性質のことだ。
基本的に魔物は発生した場所から動かない。だが、一定範囲内に一定数以上の魔物が発生すると、新たな土地を求めて発生した土地を、集団で離れる性質を持っている。それが溢れ出すと言う現象だ。
ゲームの時にも魔物が溢れ出すイベントが、何度か起こったことがある。
相当数の魔物が集団で移動するため、かなり難易度の高いイベントになっていたはずだ。もっとも、溢れ出す魔物のレベルはそこまで高くなく、厄介なのは数だけだ。
まあ、あのイベント自体、中堅プレイヤーを対象にしたイベントだったから、俺は参加したことがないんだけど。
さて、始めるか。「スキル・探知」発動。
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