第8話 猫のより宿へ

 私は「英雄の剣」のリーダーだ。今回、私たちは国王様から依頼を受けた。今まで受けた依頼とはレベルの違う依頼だったが、なんとか成し遂げることができた。


 現在、私たち「英雄の剣」は、辺境都市の人々の歓声を受けながら、街を歩いていた。


「今回の依頼、大変なことも多かったけど、この歓声を聞くと、達成できてよかったって改めて思うよね」


 そう言ったのは、魔法使いのリルナだった。


「ああ、そうだな」


「もっと喜べよ。ジェス」


「私はこれでも喜んでいる。ガドラ」


 パーティーメンバーと談笑しながら進んでいると、突如、見られている気配を感じた。


「っ!」


 すぐに周囲を見渡したが、それらしき人物は見当たらない。


 どこから見られていたのか分からなかった。今のは解析されていたのか?それすらも定かではない。


 あの感覚は、解析されている感覚だが、私を解析できるレベルの人物は少ないはず。


 何者だ?


「どうしたんだ?ジェス」


「いや・・・。なんでもない」


 私は意識を切り替えてそう答えた。今は、国王様に依頼達成の報告をするのが優先だ。



 ***



 屋根の上から降りた俺は、街をぶらぶらと歩いていた。


 さて、本格的にやることがなくなってしまった。


 まあ、無理にやることを探す必要もないか。観光でもするか。


 あっという間に時間が過ぎていく。


 もうこんな時間帯になったのか。


 そろそろ、「猫のより宿」に向かわなければ。場所は調べてあるため、すぐに向かうことができる。


 それにしても、この辺境都市は驚くほどに大きい街だ。人口にして、百万人以上いるのではないだろうか。


 中世を思わせる街並みをしているが、文明レベルは高いということだろう。


 上下水道も完備されているし、高層建築も多い。


 それらを、作ることができるのは、魔術や魔術を使うことができる道具、魔道具の恩恵が大きいのだろう。


 魔術のある世界と魔術のない世界では、発展の仕方が違うのは当然か。


 日が沈み始め、周りの街灯に明かりが灯り始める。


 夕刻と呼べる時間帯になる頃、猫が描かれた看板が掛けてある宿が見えた。


 あそこか。


 まっすぐ宿の中に入り、受付に声をかけた。すると、予想外の返答が返ってくる。


「お待ちしておりました」


「はい?」


「黒髪のお客様がいらっしゃいましたら、案内するよう言付かっております」


 そうか受付嬢か。


「もう来てるんですか?」


「はい。案内致します」


「あ、その前に。今日泊まりたいんですけど、大丈夫ですか?」


「大丈夫です。一人部屋でよろしいですか?」


「はい」


「素泊まり五千ルクとなります。別料金になりますが、食事は奥の食堂で食べれます」


「わかりました」


「では、こちらへどうぞ」


 案内された先は、食堂の奥にある個室だった。和室か。この世界にもあるのか。


「こちらになります。私は、これで失礼いたします」


 そう言って女性は戻っていく。


 俺は和室の扉を開ける。

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