第7話 英雄の帰還
これでお金は大丈夫だろう。次は宿を探すか。
いや、そういえば夕刻の待ち合わせ場所が宿だったな。宿はそこにすればいいから、探す必要はないか。
次に何をするか考えながら歩いていると、周りが騒がしくなり、全ての人がというわけではないが、駆け足で走って行く人がチラホラと見える。
何かあったのだろうかと、思い露天で食べ物を販売している中年の男性に話しかけた。
「聞きたいことがあるんですけど、今いいですか?」
「なんだい?」
「いえ、街が騒がしくなってきたなと思いまして。何かあったんですか?」
「ああ、それは多分、英雄の剣が帰還したからだろうな」
「英雄の剣?」
「結構有名な冒険者パーティーだぜ?知らないのかい?」
「田舎から出てきたばかりで。良ければ教えてください」
「いいぜ。まず、英雄の剣は五人組のパーティーで、メンバー全員が金級冒険者なんだ」
「へぇ」
「それで今回英雄の剣は、ある依頼を受けて冒険に出てたんだが、数日前に依頼を達成したとの報告があった。今日は英雄の剣の帰還日ってことだ」
「有名な冒険者が帰還してくる時は毎回こうなんですか?」
「いつもはこんなに騒ぎにならない。今回は特別だ」
「特別?何がです?」
「英雄の剣が今回受けた依頼は国王からの依頼だったのさ」
ふーん、なるほど。国王からの依頼を達成したことで、今回はこんな騒ぎになってるってことか。
「パーティー名通り英雄ってことですか」
「そうだな。見てきたらどうだ?」
「そうします。何か軽く食べられるものを売ってください」
話を聞かせて貰ったお礼として、何か買って行くことにした。
「お、買ってくれるのか。なら、ロロの実なんてどうだ?」
「それでお願いします」
ロロの実が何かはわからないが、勧めてくるってことは、不味い食べ物ではないだろう。
俺は、中年の露天売りに金貨を払い、ロロの実を買った。お釣りを受け取り俺は店を後にする。
店を後にした俺は、ロロの実を食べながら「英雄の剣」が、居るであろう賑わいの中心を目指す。
それにしてもこの果実、美味しいな。
味が一番近いのは、葡萄だろうか。個人的には、葡萄よりもロロの実の方が好みだ。また買いに行こう。
ロロの実を食べながら、街中を進み大通りにでた。大通りには、道の両側に人集りができている。すごい人気だな。「英雄の剣」の面々はどこにいるのか。
そう思い辺りを見渡す。
いた。あれが「英雄の剣」か。
まず、先頭を歩いて来たのは、白銀の鎧に、一目で業物とわかる剣を携えた男性だ。年齢は俺と同じくらいだろう。
その後ろには大剣を持った大柄な中年男性と、杖を持った魔法使いの女性が続き、さらにその後ろに、回復役と思われる女性と剣を二本携えた男性が続く。
今までに見た冒険者とは格が違うな。装備類も特質級以上だろう。解析してみるか。
そう思い解析のスキルを発動させる。まずは、一番強そうな先頭の人から。
名前:ジェス・ハストルト
種族:人族
レベル:89
生命力:820
魔力 :617
闘気 :725
スキル:武術8 魔術3 闘気法6 etc
称号 :『聖騎士』
思ったより弱いな。ゲーム時の基準で行くと、かろうじて強い部類に入るかどうか、って感じの強さだ。
まあ、ゲームの基準で話すのも間違っている気もするが、まだこの世界での強さの基準を知らない俺は、ゲーム時の基準で判断するしかない。
おっと、解析されているのに気がついたか。流石に金級冒険者、感覚が鋭い。解析を発動している俺には気付いてないだろうが、一旦この場を離れるか。
俺は、「初伝・瞬脚」を使いこの場を離れた。
屋根の上まで移動した俺は「英雄の剣」にもう一度視線を向ける。あれが金級冒険者。思っていたほどの力は持っていなかったが、金級冒険者だと考えれば不思議でもないか。
冒険者ランクは白金級がトップなのだから。
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