第6話 ポーション
街を歩きながら、これから何をするか考える。ギルドで依頼を受けることも考えたが、依頼を受けるのは、今日じゃなくてもいいと思いギルドを出てきた。
まず、最優先で取り掛かることは、資金のことだ。街中で値段表示を見る限り、ゲームの通貨とは単位が違う。どうやらゲーム時の通貨は使えないようだ。
何をするにしてもお金は必要だ。よし、まずは資金調達から始めよう。
通貨を獲得する方法として、何かを売ろうと思うのだが何がいいだろうか・・・。
そういえば、冒険者がポーションを持っているのを見たな。
ポーションなら需要が高いだろうから、売れそうだ。それに、ゲームの時に作ったポーションが大量にあるからな。
そうと決まれば、ポーションの買取をしてくれる店を探すか。
幸い、この通りは店が多い。歩いていれば、そのうち見つかるだろう。
そう思い街中を散策する。
しばらく街を歩いていると、錬金術関係の商品が並ぶ店を見つけた。おそらく、錬金術師の店だろう。この店なら、ポーションの買い取りをしてくれそうだ。
期待を持って店に入った。
店に入ってすぐに、
「いらっしゃい。どんな御用ですか?」
と、カウンターの奥に座っていた老婆に声をかけられた。
「あの、ポーションの買い取りってしていますか?」
俺は、単刀直入に要件を伝える。
「しているよ」
どうやら、買い取り可能らしい。
「ただし、鑑定して売り物になるレベルの品質だったらだけどね」
「今から鑑定してもらうことって可能ですか?」
「いいよ」
問題ないようだ。俺は、肩からぶら下げている鞄に手を入れ、鞄からポーションを出す。傍目には鞄から出したようにしか見えないだろうが、実際には鞄の中でストレージを発動させ、ポーションを出している。
なぜ、そんな面倒臭いことをしているのかと言えば、この世界でストレージやそれに似た能力をまだ見ていないからだ。
冒険者たちも、大剣など大きな武器や荷物をわざわざ身に付けていた。ストレージやそれに類する能力が使えるならストレージなどに仕舞っていただろう。
警戒しすぎな気もするが何せ未知の世界、警戒するに越したことはない。
「こんな感じのポーションなんですけど、どうですか?」
俺が取り出したのは中級に分類されるポーションだ。取り敢えず一本だけ取り出し、老婆に渡した。
「ふむ」
老婆はポーションの入った瓶を手に取り、数秒ほど唸りながら鑑定していた。
「中級ポーションだね。それにしても、中級とは思えないほど純度が高い。あんた、相当腕がいいね」
「それほどでもないんですけど。それで、一本いくら位になりますか?」
「本来、中級の買取価格は五千ルクなんだけど、この純度なら一本、一万ルクでどうだい?」
一万ルクか・・・。ここにくるまでに街で市場を見てきた感覚でいくと、一ルクは一円と同じ価値だと考えていいだろう。
そこで、店の中をさりげなく見ると、ポーションの置かれている棚に中級ポーションが六千ルクで販売せれているのが確認できた。ぼったくられている訳ではなさそうだ。むしろ適正価格よりも大幅に高い買取価格だ。
「わかりました。値段は大丈夫です。何本くらい買い取ってもらえます?」
「何本でも構わないよ。あんたのポーションは純度が高いから、すぐに売れるだろうからね」
鞄から取り出している風に装っているから、あまり多く出すのも問題か。十本くらいが丁度いいかな。
「では、中級ポーションを十本、買い取りお願いします」
「わかったよ」
ポーションを十本取り出してカウンターに置いた。老婆はカウンターに置かれたポーションを、一本一本丁寧に鑑定していく。
「問題なしだね。全部、純度の高い中級ポーションだ。十万ルクで買い取るよ」
老婆はそう言って十万ルクを俺に渡してくる。渡されたのは金貨が十枚。金貨一枚が一万ルクってことか。
金貨を鞄の中に仕舞う。
「また持ってくることがあれば、買い取りお願いします」
「いいよ。またのお越しを」
「では」
そんなやり取りをしてから、俺は店を出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます