第3話 巨大な城壁

 街道に降りた俺は現在、街道を移動していた。


 街道が綺麗に整備されている方に街があるだろうと考えて進んでいく。街道では、この世界の住人と出会う可能性があると考え、スキル「空中歩行」を使うのは自重している。この世界のことを全く分かっていない現時点で、無闇に力を使うのは得策では無いと判断した。


 一応、探知スキルは、発動させておくか。


「スキル・探知」


 探知を発動させ、街道を駆け足で進む。ステータスが高い俺なら、かなりの速度で進むことができる。


 平原を越え、また森に入り、平原に出る。街道を進むにつれ、段々と天候も変わっていき、現在は霧の中を進んでいる。


 進み始めて、一時間ほど経過したところで、人の気配を探知した。


 この反応だと、かなり大きな街がありそうだ。


 ちなみに、ここまでくる間にも探知に反応があったが、全て魔物の反応だったので、無視してきた。


 俺の探知は、レベルEXのため10キロ以上先まで探知することができる。


 探知の感覚で、街まで数キロの地点まで来た。そこで走るのをやめて、歩いて進んで行くことにする。それと、街に入る前に服を着替えないと。


 俺が今着ている服は、最高品質の防具だ−防具といっても鎧などではなく、軍服に近い服装−。流石にこの格好では怪しいと思い、旅人風の衣装に着替える。


 ストレージの応用技術を使えば、一々服を脱がずとも瞬時に着替えることが可能だ。この世界でも使うことができてよかった。


 地味目の服にマントを羽織った服装。これならおかしくはないだろう。地味な服装だが、下手な鎧より防御力が優れている。


 しばらく進むと巨大な壁が見えてきた。おそらく円状に街を囲んでいる城壁だと思うが、一枚の壁に見えるほど巨大だ。


 あまりの大きさの城壁に圧倒される。


 街に入るための門には、行列ができていた。街に入るための手続きが行われているのだろう。列の最後尾に並び順番を待つ。


 ここまで来て思ったことがある。それは、俺が街に入れるのかどうか、ということだ。この世界に突然、飛ばされてきた俺には身分を証明できるものがない。大丈夫だろうか?


 そんなことを考えていると、俺の前に並んでいる行商人が話しかけてきた。


「旅人さんかい?」


 そう尋ねられる。


 別の世界から来たとも言えないし、旅人ってことにしておくか。実際、旅人みたいなものだからな。


「ええ。そうです」


「この街は始めてかい?」


「はい。この大きなには驚きました」


「そうだろう、そうだろう。ここの城壁は、王都の城壁よりも立派なんだ」


 行商人は、我が事のように誇らしげにそう言った。


「へぇ。そうなんですか」


「にしても、黒髪とは珍しいな。顔立ちからしてイースウェルから来たのかい?」


 イースウェル?国の名前だろうか?ここは、話を合わせておこう。


「そんなところです」


「それはまた随分と遠くから。あんたもこの辺境都市に稼ぎにきたのか?」


 辺境都市なのかここは。


「ええ。ところで、辺境都市の景気はどうです?」


「絶好調よ。危険も多いが、ここほど景気がいい場所も少ない。おっと、順番が来たようだ。それじゃあな」


 行商人は荷馬車を動かし、門の方に向かっていった。


 行商人は門番と何か話をしてから、街の中に入っていった。

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