第24話 温泉を嫌がる登場人物は一人だけ♪

ウィルがポトニャーの所に居候してそろそろ一ヶ月が過ぎようとしていた。


当初、初めての世界に触れたせいもありセフィロトでの暮らしに不安と戸惑いばかりだった彼女だが、徐々にだがここの生活にも慣れ親しんだ様だ。

その証拠に今ではその愛くるしさから《隠れてファン倶楽部》迄現れた位である。

※特にご老人や屋台の店主に大人気♪


そんな彼女に一つの転機が訪れた。

なんと最近やっと冒険者登録が通り、正式にポトニャー達と《冒険者》としてのパーティーが組める様になったのだ♫


そして本日は冒険者として初仕事の日なのであった♫

「ウィル、ポトニャー、支度は終わった?」

四人パーティーによる依頼で、内容は《深緑の森の奥にある廃坑の調査》である。

最近マーズの所に、その廃坑付近での質の悪いモンスターの目撃報告が多数寄せられている為である。


ウィルがポトニャーの部屋で一緒に装備の仕度をしていると、先に仕度を済ませたらしい琴音とシルビーが二人を呼びにきた。

「私はできたよ♪ウィルはどう?」

「できたニャ♫」

そうウィルに聞きながらポトニャーはいつもの様に身軽なエルフ用の戦闘服に着替えていた。

そしてシルビーはフルオーダーの軽アーマー、琴音は対接近戦用装備服だ。


ウィルはというと、ポトニャーと似てはいたが、故郷の両親から貰った獣人専用の魔導衣に、その下には打撃戦に特化した装備を着けていた。

彼女は獣人特有の身体能力から接近戦を得意としているが、もともとの属性は《回復術士(ヒーラー)》である。


ウィルは母国である《獄界》を統率する国王ラーの末娘である。

その一族は殆どが《神官》を生業としている。

そのせいか、冒険者になった親族もほとんどが回復系の後方支援を担当している者が多い。


そんな一族の中でも、取り分けずば抜けた身体能力を持つ上に術士…

そしてある特殊な能力を持っている為、魔力も多い彼女は《次期女王》として周りから過度な期待をかけられていた。


ウィルを溺愛している現国王夫婦と兄姉…

特に長姉バステトは、実はそんな重責を背負う彼女を不憫に思い、リリス経由でポトニャーに相談し今に至るのであった。


「でも前衛もできるヒーラーがいるって助かるわよね~♪」

シルビーはそう言いながら心底喜んでいた。

「そうそう♫ウィル、改めてよろしくね♪」

「ハイニャ♪こちらこそよろしくお願いするニャ♪」

生まれて初めて人に頼られる嬉しさから、ウィルは満面の笑顔で琴音に答えた。

「それじゃ~アーシュの所で朝食食べてから調査に向かおうか♪」

するとポトニャーのその言葉をシルビーが止めた。

「あ、それなんだけど…ほら、私達アーシュからお弁当を預かって来たのよ」

「え?何で?」

事前にアーシュに食べに行く事を伝えていた筈のポトニャーは疑問に思った。

「それがさ、先に私達が店に行ったらフローラがグルグル巻きでべそかいてて…(汗)」

そう言うとシルビーは、苦笑いをしながら話を続けた。

「《私もウィルと一緒に行きた~い(涙)》って叫んでたよ……」

「ホントにもう!フローラってばマジで大人げないな~(困)」

ポトニャーのそのセリフにウィルを除く全員が、呆れた様にため息をついていた(笑)

「…まぁ…じゃ行こうか……」

気持ちを切り替えようとしたポトニャーの一言に、皆無言で従い部屋を後にしたのだった……

※ウィルは訳が解らずとりあえず皆の真似っ子をしたみたい(笑)



一方、喫茶フルートでは…

「フローラ…もういい加減あきらめなさい(困)」

今だグルグル巻きで店内に転がるフルートは、半べそをかいていた!(笑)


「だって~シクシク(ToT)」

「お店の仕事もあるんだしさ、我慢しなさい」

アーシュにそう言われても諦めきれないフローラ…


そんな彼女のブルーなテンションを見て、ちょっぴり不憫に思うアーシュ…

そのせいか、彼はつい魔が差して言ってはならない事を口走ってしまった!

「ねぇフローラ…ポトニャー達が帰ってきたらさ、一緒に温泉に行ったらどう?」

「!!」

それを聞いたフローラは一気に立ち上がり復活した(驚)!

※但し、グルグル巻きのままだが(笑)


「だったらアーシュも勿論一緒に入るわよね♪」

フローラはアーシュの方を振り向きながらニヤついて聞いてきた。

「え、え?」

彼女のそんな有無を言わせぬ迫力にアーシュは思わずたじろいでしまった!


※余談だが〜

ダンジョン内に新しくできた温泉は、イヴ王妃直轄になり、シルビーの管理のもと関係者以外入浴出来なくなっていたりする♫

(ちなみにシルビーがクエスト中はレディが管理をしている♫)


「よし!後でレディに予約入れとこ~っと♪♪」

フローラは嬉々としてすまき状態から脱出すると、いそいそと開店のプレートを表に出しに行くのだった。

そして図らずも自ら地雷を踏んでしまったアーシュはと言うと、フローラと入れ替わりにテンションを下げまくっているのであった(笑)





ちなみにシルビーが遠征に出掛けた翌日…


レディが代理で管理しているダンジョンに、作者としては余り歓迎したくない面々が現れた。

アダム王を筆頭にドゥモワー、沖田、ノア、那由多、J、マーズの野郎7人である!

※流石に作者も関わりたくないな…


「ようレディ!いるか~♪」

ドゥモワーのその声に、ダンジョンの側にある詰所からレディが現れた。

「あら皆さんお揃いで♪どないしなはりました?」

いつも流暢(りゅうちょう)な京都弁である。

只沖田だけは懐かしさを感じているらしく、遠い目をしていた。


『お豊さん元気でいるかな~。』

どうやら彼は前の世界にあった峠の茶屋のおかみさんを思い出している様だ…



「ご苦労さまレディ…今日は男性ばかりで温泉に入ろうかと思いまして伺いました」

流石アダム!王としての品が漂っている♫

どっかの淫獣(ドゥモワー)とは大違いである(笑)

※なんであのロマがこんなのと付き合っているんだろ?ツーショットは完全に美女と淫獣にしか見えないぞ!


「そうどしたか!先客がおられますがどうぞ~ごゆっくりしておくれやす♫」

その時である。

男性ばかりと聞たレディは、ふと一人足りない事に気が付いた。

「あら、アーシュはんは御一緒やおへんのですか?」

「え?アーシュさんって男だったんですか!!」

そのレディ一言に那由多が一番驚いていた!

※そりゃそうだ、アーシュって美人だもん(笑)


「那由多…お前はまだ若いから解らねぇだろうがだ、世の中にゃ~知らない事が良い事が沢山あるんだ…覚えときな…」

いきなりドゥモワーに正面から両肩を掴まれそう囁かれた那由多は、何故彼がうっすらと涙ぐむのか不思議に思った。

戸惑いながら何気にアダム達に目を向けると、他の男性陣達もドゥモワーと同様に遠くを見て涙ぐんでいた…

※作者は知っている!男性全員アレが負けている事を!


「は、はい…解りました。」

有無を言わせぬ雰囲気に、これ以上なにも聞かない方が良いと思った那由多は、兎に角頷いてこの場をおさめた。

レディも?マークを頭に浮かべていたのだが、深く考えるのを止め、そのまま皆を温泉場迄案内するのであった。



え〜〜と、

その頃アーシュはというと…

フローラに温泉に入る事を不用意に進めた事を心の底から後悔して落ち込んでいた(笑)

何故なら前回、女性陣達に無理矢理一緒に入浴を同伴された時の悪夢を思い出したからだ!

『……また生け贄にされる……』


そんな彼の嘆きの横で…

「よっと!送信完了♫」

女性メンバー全員にこの事をメールする誰かさんなのであった(笑)


※そう言えば…ウィルは一緒に温泉に入るのだろうか?作者はちょっとだけこの展開にワクワクだったりする♫













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