第23話 ドゥモワーのけじめ&ウィル登場

ここはセフィロトがある地球より約8億8600万km離れた惑星 《木星(ジュピター)》…


地球の約12倍あるこのガス状惑星には、本来大地は存在しない。

表面温度-140℃、中心温度3万℃、重力は地球の約3倍もあるこの星には、鍛練場の為に作られた人口の巨大な大地が作られているだけだった。

※誰がこんな所で鍛練するんだろ?(汗)


4月半ば…

時は花祭りの当日の事である。

何の前振りもなくこの惑星付近の空間が突然歪曲に歪んだと思うと、周辺を含めてガラスの様にその風景が砕けてしまった。


そしてその空間の奥から…

這い上がって来るかの如く禍々しい程の《闇》が溢れ出てきたのだ!

しかも歓喜の産声を上げながらである!

《絶望》・《混沌》・《狂気》・《破壊》

そして《死》を纏ったその漆黒の闇は、瞬く間に広がると、飲み込む様にこの惑星を覆い尽くそうとしていた。


すると…

「探し当てたぞ!我らの《依り代》となる《魂の器》!その在処であるこの世界への浸食!」

闇の奥から聞こえる歓喜を含むその言霊は、何故か禍々しさを含みつつも何処か神の神託の様に聖なるものにも聞こえる…


だが、その言霊に対して…

「ハイハイ長旅ご苦労〜♪いい加減待ちくたびれてたぜ、み・な・さ・ん♪」

嘲笑うかの様に聞き慣れた傲慢な声が…場違いな賛辞の声がこの場に響き渡った!


魔導衣のポケットの中に、両手を入れたままその闇を見下ろす様に仁王立ちするふてぶてしさ100%のその男!


左口角をあげ、現れたその男の名はご存知 《ドゥモワー》である♫

※本人はカッコつけてるみたいなので、顔の至る所が何故かぼこぼこなのは、この際突っ込まないでおいてやろうかな(笑)


「ん、誰が発言を許した?そこの塵よ…」

「ウルセ〜な餓鬼共(笑)そっちこそ勝手にさえずるんじゃね~よ♪折角俺様が直々に相手してやるんだ♪感謝しろよな《ルシファー》!」

冷静さを秘めたその闇の中の声を無視するように、彼はお構いなしに挑発してきた。


「塵よ…我を知るのか…そなた何者だ?」

その声に呼応すると同時…

他の無数の闇が各々人の形を型どりドゥモワーの前に現れた。

よく見るとその姿は正にポトニャーの友人達である《ルシファー》や《リリス》、《アスタロト》達等であった!

しかしそれは姿だけ…

纏う《魔素》は禍々しく、いつもの彼らののものではない!


「やっぱりな♪テメ~ら…こっちの奴等と同化するつもりだったか(笑)」

ルシファーの姿をした闇は、驚いた顔でドゥモワーに問いかけた。

「よく察したな塵よ…その通り…我のいた世界が消滅したのでな…だから我らと寸分違わぬ依り代が存在するかの地に来てやったのだ…」

「ふん!逃げ込んだの間違いじぁねぇのか?カス共よ(笑)」

「なんだと?!」

「ま~どうでもいいや♪テメ~らさっさと片付けて帰らせてもらうぜ♪」

「何だと…貴様…塵のぶ…」

「さっきから勝手にさえずるなって言ってるだろうが!」

ドゥモワーは左手をポケットから出すと高々と頭上に掲げた!

するとそこには小さく球状に揺らぐ蜃気楼の様な《何か》が現れた。


「一つ!この星全体に《血界》を張った!俺を殺さない限り星外はおろか他の次元・時間軸に逃げ込む事はゼッテー不可能!」

「二つ!誰がテメ~らが支配していたあの世界を滅亡させたか覚えときなクソッタレが!」

「三つ!俺と《俺の女》の大切な女性の総てをめちゃくちゃにした!解ったか!只の消滅位じゃ済まさねぇ!」


その口上に呆気にとられる別世界のルシファー達!

そう言い終わったドゥモワーは、掲げた左手を闇に向けた。

「餌に釣られてよ〜ノコノコと汚ねぇー面を出すのを待ってたぜ♪じゃあな……」


おそらくドゥモワーは、わざとこちらの世界にいる《ルシファー》達の臭いを漂わせて、闇に潜む彼らを誘きだしたのだろう…


「これで許してくれよ…ターニャ、ロマ…」

その詫言の刹那、静寂と虚無の門が開き、深淵の闇が一瞬で彼らを包み込んだ。

「!!」

「闇に抱かれて消え失せな…」

…それは一瞬の出来事…


一言も言葉を発する事もなく彼らは総て霧散したのだった。


再び虚空に戻った宇宙…

それを見届けたドゥモワーはふと回想した…

遥か過去の出来事を…


ロマは元いた世界で迫害を受けていた…

何故なら彼女は正真正銘の《魔女》だから…


彼女の母ターニャは、若かりし頃悪魔に生け贄としてその身を捧げられた…

孤児だからという理由で…

そして彼女は悪魔に犯された…

その後産まれたのがロマなのだ…


母であるターニャは生け贄として殺されなかった事を隠し、また悪魔とのハーフであり魔力を持つ娘への迫害を恐れ、人知れず故郷を離れ辺境の深森の廃墟で暮らし始めた。

ロマが12歳の時、ターニャは惨殺され亡くなった。 

母同様孤児となったロマは、そのまま廃墟で暮らしていたのだが、ある日森の奥で赤ん坊を拾った。


それがドゥモワーなのである。

そしてそのドゥモワーこそがロマの母親を犯した悪魔の《転生体》なのだった。


赤ん坊である彼の…

ドゥモワーの本当の名は《サタン》…

堕天使ルシファーの対となる半翼である。


実はドゥモワーはあろうことか、生け贄で差し出されたターニャを愛してしまった。

それ故に彼女が他の魔族の犠牲にならない様に見守っていたのだが、それを知ったルシファーが退屈しのぎにドゥモワーが不在の時、部下に命じてターニャをもて遊び、惨殺したのだった。

それを知ったドゥモワーがすぐさま駆けつけたのだが…


…間に合わなかった…


そしてドゥモワーは魔族を裏切った。

その足で残ったロマが生きるこの世界を守る為、たった一人でルシファーに戦いを挑んだ。


…そして敗北した…


それでも彼は復讐の為…

再びルシファーと再戦する為転生したのだった。


その後、完全に悪魔に支配されたその世界をルシファーと道連れに滅ぼそうとしたものの、ルシファー達を別次元に取り逃がしまった。

だが彼は、後にマ・ザーと出会いこの世界に別人格のルシファーが居る事を知ると、適当な理由を作りロマを説得して二人でこの世界に移り住んだ。

そして餌をまき、彼らを誘き出して決着をつけるチャンスを伺っていたのだった。



この事実を知る者は極一部の者だけである。

ドゥモワーは必要以上に誰にも話す気はない。

勿論ロマには尚更である。


彼は溜息を一つ付き目を伏せると、天を仰ぎ一言呟いた…

「…ターニャ…」

万感の想いを抱いたまま、彼は血界を解くと消えていった。

セフィロトで待つロマと一緒に祭りに行く為…


その夜…

夢でターニャに会う為に…




話は変わって、

《花祭り》が終わった次の日の朝♫


「おはよーア―シュ♪彼女に注文聞いてくれる?」

珍しくポトニャーが誰かと同伴で喫茶フルートにやって来た。

「?」

アーシュとフローラが振り向くとポトニャーの後ろに誰かがサッと隠れた。


「ほら心配しない(笑)二人共私の友達なんだから♪」

それを聞いて安心したのか、そっと顔を出すその姿に、フローラは瞬時に目をハートマークにして歓声あげた!

「キャ~♪なにこの娘、かっわい~~♪」

ポトニャーと背格好があまり変わらない女性なのだが…

《猫耳♪》

《ふさふさの尻尾♪》

《自分より巨乳(確実に!)♪》

フローラが大好物の三大要素てんこ盛りの獣人娘がポトニャーの後ろから現れたのだった!


「誰、その娘?」

モジモジしながらうつむく獣人娘に今にも飛びかかろうとするフローラを制してアーシュがポトニャーに尋ねた。

「あ〜この娘ね♫《ラー》の末娘で《バステト》の末妹になる《ウィル》って言うの♪」

「は、はじめまして!ウ、《ウィル・ステラ》だニャ…よろしくお願いするニャ!」


…もう駄目だ…


フローラがウィルをロック・オンした(笑)!

「ニャ…ニャだって…♪聞いたアーシュ!ニャだって(喜)♪♪♪」

まあ〜こうなったフローラは止められない(汗)

アーシュは手に負えなくなる前に、とりあえずディメンション・バッグにフローラを無理矢理閉じ込めた!

※オイオイ……


「はじめましてウィル♫自分はアーシュ…さっきの女性はフローラ…私の奥さんだよ」

そう紹介しながらカウンターの椅子に二人を促すアーシュ。

「とりあえず私はコーヒー、それと…ウィルは何が食べたい?」

「!おかかおにぎりとホットミルク♪」

『『え?…なぜにおかかおにぎりと牛乳?』』

それを聞いたアーシュとポトニャーは?マークを盛大に頭の上に浮かべていた。

※このチョイスは作者と同じだったりする(笑)


「了解…じゃ~焼き魚定食のご飯をおかかおにぎりにするね♪」

「じゃ私も同じの頂戴♪」

頷くウィルと追加オーダーをするポトニャー。

アーシュは早速食事の用意を始めた。


「そういえばウィルは花祭りを見た?」

「見たニャ♪ギリギリ最終日に間に合ったニャ♪すご~~く綺麗で~見れてよかったニャ~♪」

うっとりしながら思い出しているウィルを見て二人はなんだか微笑ましく感じた。


『ちょっとアーシュ~…もう騒がないからそろそろ出してよ~(涙)!』

すると半べそを浮かべながら訴えるフローラ(笑)

流石に可愛そうになったアーシュは、仕方なくフローラをディメンション・バッグから解放した。


「さてと…ウィルちゃん♪暫くこっちの世界にいるのかしら?」

何事も無かったかの様に出てきたフローラは、笑顔でウィルに質問してきた。

先程までのフローラの行動を見ていたウィルは、そんな笑顔の質問に怖々と怯えながら答えた。

「そ…そうだニャ~…こっちで冒険者になるつもりニャ…」


「ちなみにフローラ、断っとくけど~彼女貴女より年上だからね♪」

ポトニャーの一言に、アーシュとフローラは思わす目が点(・・;)になり言葉を失った!

「「は~?!」」

※流石夫婦!綺麗なハモり♪


「だからね、年上♪この間千歳の誕生日を迎えたばかり♪そこんところよろしく♪」

無意識に二人に飲み物を差し出すアーシュ…

(流石商売人♪)


ポトニャーはコーヒーを飲みながら話を続けた。

「ひとまず歳の話は置いといて…彼女の一族はさ、千歳…つまり成人を迎えたら家を出て独立しなきゃならないのよ♪」

※日本で言う二十歳=千歳らしい(驚)!


「でもまぁ~ほとんどが親の目の届く所で暮らしてんだけどね♪」

混乱しながらも出来立ての焼き魚定食(おかかおにぎり付き)と牛乳を出すアーシュ(笑)


「それでね、バステト経由で相談されたのよ」

それを食べながら話すポトニャーに、まだ動揺を隠しきれないフローラは気持ちを切り直そうと話題を変えた。

「こっちの世界での生活?」

「違う違う!冒険者になりたいっていう本人の希望を叶えてやりたいって♪」

ポトニャーは横目で食事をしているウィルを見ながら話を続けた。

「バステトにとっては一番可愛がってる末妹だからね…それに父親のラーも溺愛してるから【本人の希望は叶えてやりたい!でもやっぱり心配だ〜】ってさ♪」

上機嫌で食事をするウィルを見てアーシュとフローラは《ウンウン》と納得して頷いた(笑)

確かに本人は自覚が無いだろうが、色んな意味で不安を隠しきれない…


※ちなみにこの間 《セクシー・ランジェリー》の件で恥ずかしがっていたシルビーとはまた違った可愛さだと思う作者である♫



「じゃ~ポトニャーと同居するの?」

「そういう事♪二人もこれからよろしくね♪」

それを確認したアーシュとフローラは、直ぐにある事を思案した!


『『どうやってあのマ・ザーの魔の手から彼女を守ろうか…』』

と……


が!しかし!

既に飛んでもない事を見落としているぞ!

お腹一杯になったウィルが《ごちそうさま》をした後、忽然と姿を消している事を!


「「「ヤバい…いなくなってる…」」」



さ~三人よ!

冷や汗をかきながら探すのだ(笑)


因みに彼女は今、もみの木の木陰で食後のお昼寝中だぞ♫


































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